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你好異世界  作者: 曽我二十六
帝国内乱編
11/12

11. 革命前夜

~前回までのあらすじ~

中華風異世界で間違えて告白した相手(皇帝)と、

ついでに転移してきてしまった告白を予定してた幼馴染と結婚し、

帝都の財政改革・都市改造を完了させた主人公たち。

そこに忍び寄る影が……。

 衡山郡にて。

 「郡代さんよぉ、借金はちゃんと返してくれなきゃ困るんですわ」

 「家族がどうなっても良いんですかぁ?」


 彼は今でいう所のヤミ金にカネを借りていた。


 「アテが外れて……月末には必ず返しますから」

 アテが外れた、というのは租税の帝都直接輸送の事だ。

 不正蓄財が出来なくなったのである。


 「月の返済額を7割にまで下げてるんですから」

 「しっかり返して貰わないとこっちとしても困るんですよ」


 「は、はい、分かってますよ」

 声が裏返りながらも彼は約束した。



 翌日。

 「返さねぇなら娘を売るぞ」


 「待って下さい、それだけは……」


 「じゃあどうするってんだよ」


 「……」


 「早く答えろよ、オラァ!!!!!」


 「政府に納める分を横領して返済します」


 「どんな手段だろうと、返して貰えりゃそれで良いんですわ」

 「待ってますからね」



 そうして1ヶ月。

 「衡山郡の税が上がっておらんぞ」


 「催促の使者を送りましたが、郡代は病との事」


 「うむ……代わりの者を充てよ」



 「本日を以て衡山郡代の任を別の者に充てる故、養生せよ」


 この使者が来た瞬間、郡代に未来は無かった。


 替えの者が来れば未納が発覚する。

 致し方ない。政府に反旗を翻すしかない。


 郡代は闇商人らを下っ端まで全て集めてこう言った。

 「諸君らの日頃よりの懇願、我はしかと受け止めたが、朝廷がお許しにならなかった」

 「よって、長安の朝廷を打ち倒す!!!」


 闇商人の多くは乗り気でなかったが、チンピラなどはこれに呼応して掛け声を作る始末。


 「こうなれば仕方ないか……」

 闇商人の多くは不本意ながら、この反乱に加わった。



 長安城にて。

 「急報、衡山郡代が反乱を起こしました!!!」


 「何じゃと!?」


 「軍勢は?」

 参上していた官僚の1人が訊いた。


 「およそ10万にございます」


 「一介の郡代に10万の軍勢か……」


 「とにかく鎮圧軍を向かわせよ」


 華帝国の軍制は、禁軍(親衛隊)30万を除いては農民からの徴発。そのため現下の戦力は30万といった所。


 禁軍の将軍・韓世凱が奏上する。

 「この軍勢ならば容易に叩き潰せまする」


 反乱軍とは名ばかりで、所詮は烏合の衆。

 正規軍が来れば木っ端微塵になるだろう、という見立てであった。


 反乱軍と政府軍は、長江を挟んで対峙した。

 といっても、長江の川幅は軽く地平線の見える距離をも上回っているので、互いに見える訳もないのだが。


 反乱軍は長江の中洲に陣を敷いた。

 大量の小船で各々が上陸していく。


 対して政府軍は船から弓矢を射掛けて対処。


 「退け、退け〜」

 中洲の反乱軍はあっという間に総崩れになった。


 しかし南岸の反乱軍主力は未だ健在。

 「火矢を放て〜!!」


 政府軍の船に火矢が放たれる。

 それと同時に反乱軍の小船がそこに詰め寄る。


 「一時撤退!!!」

 政府軍は難を逃れたものの、上陸を阻まれてしまった。


 「木船に水を吸わせよ」

 将軍・韓世凱の指示により、今度は湿った船で攻撃が試みられた。


 「将軍、船が重すぎて動きません!!!」


 この時茂みから声がした。

 「かかれ~!!!」


 「敵襲、敵襲!!!」


 政府軍と反乱軍は大混戦に至り、奇襲を受けた政府軍が敗退した。



 この敗戦を受け、政府軍は長江北岸から撤退を余儀なくされた。

 また韓世凱に代わって柏三桂が新たに将軍として派遣された。


 「韓将軍、そなたには別働隊の指揮に移ってもらう」

 柏三桂はそう告げて全軍の指揮を引き継いだ。


 反乱軍の根拠地である衡山郡は長江以北にあり、ここは既に制圧済である。

 柏将軍はこれを活かした作戦を採る事とした。

 「貴様らの先祖代々の墓を荒らしても良いのか」


 これにおののいた叛徒の一部は降伏したが、大して戦局は覆らなかった。


 長江を軍事境界線として1ヶ月ほど対峙した後、戦局が動いた。

 「今こそ長安を攻め落とす時、総攻撃を開始する!!!」


 この報はすぐに長安の朝廷にも届いた。


 「総攻撃に備え、必要最低限の兵力以外は鎮圧に投入するのじゃ」

 皇帝陛下の一声により、洛陽経由でほぼ全軍が動員され始めた。


 一方、柏将軍率いる現地軍は、反乱軍の総攻撃に備えた。

 「総員、敵の上陸に備えよ!!!」

 深夜の奇襲上陸を恐れて、政府軍本軍は小船を駆使して岸辺に密度の濃い哨戒網を張った。


 このような対処の何もかにも、それどころか反乱軍の総攻撃の事すら、別動隊には伝えられなかった。

 別動隊に編成されたのは韓将軍直属の部隊。

 いわば「半私兵化」した兵員のみである。

 彼らは柏将軍に「捨てられた」存在であった。


 捨てられた別動隊は味方にさえ知られず、長江を渡り切った。

 「韓将軍、敵陣を発見しました」


 「我が軍は寡兵である。奇襲によってのみ勝利を掴む事が叶うのだ」

 「いざ、突撃!!!」

 韓将軍の命令と共に奇襲攻撃が展開される。


 急襲を受けた反乱軍本陣は大混乱に陥り、首領の衡山郡代は討ち取られた。

 「大将首を討ち取ったぞ!!!」


 日本の戦国武士の如き高らかな宣言が為されると、反乱軍は瓦解した。


 ここで降伏した者は元の農村へ、抵抗し続けた者は処刑場へと連れていかれた。

 韓世凱は一度反乱軍への敗退で名誉を失ったが、この成功により全て不問に付された。


 「此度の戦果、大儀であったぞ」


 「韓世凱よ、そなたに褒美として……」


 彼は一度国に裏切られ、その後に大戦果を挙げて返り咲いた。

 その事について、彼はずっと考えていた。


 まだ少数であった反乱軍への敗退で処刑寸前に追い込まれたこの国。

 果たして、朝廷に仕え続ける事に必要はあるのだろうか。

 それで、自分の身は安泰なのだろうか。


 その心持ちは、帰宅する度に首の繋がっている事を喜ぶ、明王朝の官僚のようだった。

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