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第24話 王室御用達の冊子とこちら側の孤児院

 王室御用達? そんなはずは……。

 だって私も使っていた。

「わたくしも子どもの頃、これと同じ冊子を使っていましたわ。だから、王室御用達だなんて」

「マリーが使い始めたのはリンド殿が来てからだろう?」

 私の幼少期の話なんてエドにしていないのに言い当てられた。

「え……ええ。そうですわ。リンド夫人が来るまでは、適当に本を読んで文字を覚えていましたもの」

 貴族の子どもとしては完全に放置され、執事長に連れまわされて色々覚えさせられたことは、エドには言わないけど。


「もう分かってしまっているから言うが、リンド殿は王妃殿下がマリーが置かれている状態を見かねて、家庭教師として送り込まれたんだ。だから、リンド殿が持ち込んだ教材は全て王室御用達の物のはずだ」

 へ? うそ。うそよね。

 私は呆然としてしまった。部屋の隅に控えていたケイシーの顔色も心なしか悪い。

「マリー?」

 エドが私たちの様子に何事かと訊いてくる。


「わ……わたくし、知らなかったのですわ。そんな、貴重な物だなんて。知らなかったから、こんなのやってらんないなんて、冊子を投げたり、落書きしたり」

 きゃ~~~。どうしましょう。

 私はあまりの事に頭を抱えてしまう。

「…………なるほど。まぁ、良いんじゃないか? 子ども時代の事だし」

 エドの口調は笑いを含んでいる。

 いや、良くない。良くないわよ。


「マリーの子ども時代はともかく、この冊子の出所は少し調べねばならんな」

 ああ。そうだった。

 一般に出回っている物では無いものね。

 しかも下位貴族が、下賜されるようなものでも無いし。


 多分、総元締め(トム・エフィンジャー)が関わっていなければ、いかな王室御用達の冊子だと言ってもこんなに大仰に考える事でも無いのに。


 港側のお屋敷の管理をしている使用人たちに休暇を出し、領地に帰る場所がない人達はこちらのお屋敷で引き取った。

 そして今は誰も入れない状態だ。


 エドは、私からの話を聞いてすぐに王都に報告書を早馬で出して、今は王都からの捜査官を待っている状態なのよね。

 そして王都まで駆け抜けた使者役の部下が捜査官を連れて帰ってくるまでは、私たちは通常の生活をしていた。



 その一環で、サマンサが管理する方の孤児院に顔を出すことにした。

 確かにね。片方にばかり顔を出しているから、変な噂も広がるのだわ。


 私はケイシーに籠いっぱいのお菓子を持たせて、孤児院の戸を叩いた。

「あら、奥方様。ようこそお越しくださいました。今、子ども達は学校に行っておりますが」

「そうね。知っているわ」

 私は中に入りながら、にこやかに答えている。

 ここの孤児院はの子ども達は、午前中は全員上の学校に通っているもの。

「ああ。ここで良いわ。大した用事では無いし。ケイシー、その籠はテーブルの上に置いてちょうだい」

 サマンサが応接室に案内しようとしたのをさえぎった。


 この前はすぐに応接室に入ったので、見ていなかったけれど、普段から掃除が行き届いている。

 こちらは港側と違って、手伝い人は入っていないというのに。

 好き嫌いはともかく、仕事はきっちりするタイプなんだわ。

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