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第21話 ケイシーのお説教

「マリー様。何を言っているんですか。出来ませんよ、そんな事」

 ケイシーが、半ば呆れたように言う。私の呼び方が、奥様じゃなくなっているわ。

 普段はそう呼んでいるから、良いのだけれど。

「ケイシーまでそんなこと言うのね。算術だって、歴史だって、わたくし」

「誰が能力の話をしているのですか。立場の問題です。まさか、ご自分の立場をお忘れですか?」

 立場? 立場って……。

「わたくしの立場って? エドの奥方で、この孤児院を任されているのだけど……」

 イヤだわ。ケイシーが、ため息をついている。何でよ。

「あちらの孤児院も、任されていますよね。あちらにもドムと同じくらいの子どもがいたと思うのですが。考えてみて下さい。あちらの子どもは上の学校へ、こちらの子どもはマリー様が直々に指導する。周りからはどう取られますか?」

 久しぶりにケイシーが、説教モードに入ってしまっているわ。

 リンド夫人が来る前みたいに。


「だって、あちらの子どもはちゃんと教育を受けれているわよね、わたくしが介入するまでもなく……。こちらで教えると言っても、長い時間じゃないし、他の仕事もちゃんと」

「仕事の話では無いです。子どもに勉強を教えるのを口実にして、ビリーに会いに行っているのではないかという噂が立つと言っているのです」

 分かっているのですか? とばかりにケイシーが言ってきた。


「へ? ビリー?」

 何で、ビリー?

「もしくは、ドムとです。マリー様は、ドムとだって2歳しか違わないのですよ」

 私の浮気を疑われるって事?

「無いわよ、そんな事。わたくしは、そんな……」

「領地が広くなったとはいえ、辺境の田舎町ですからね。娯楽も少ない分、面白おかしく噂されるでしょうね。全く、貴族社会だけでは無いのですよ、噂で立場が悪くなるのは」

 ぶちぶち、言っているわ。だけど、確かにそんな風に警戒なんかしなかった。


「分かったわ」

 私は、ケイシーにそう言って、ドムの方に向き直った。

「ごめんなさいね、ドム。ヘンリーと一緒に、来週から学校へ行ってちょうだいね。手続きは、しておくから」

「ああ。なんか、貴族の奥方も大変だな」

 ドムが、気の毒そうに言ってくれた。

 ……情けない。ドムからも気を遣われてしまったわ。


 その内に、子ども達がお昼寝から起きて来て、おやつの時間になる。

 メリーおばさんが、慌ただしく子ども達の世話を焼くのを私たちも手伝った。


「おう。邪魔をする……っと、タイミングが悪かったか?」

 子ども達が、おやつを口にほおばり出した頃、エドが1人の騎士を連れて孤児院のドアをあけたのだった。

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