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第10話 帰りの道のり

 ベアトリス様とのお茶会で話題に出ていた、我が国の王立学園。

 実は、三つあるの。

 一つは、騎士団や兵士、衛兵になれる学校で、貴族も庶民も入れる学校。

 エドも、子どもの頃王宮に召集された後、騎士団に所属しながら、この学園を卒業しているわ。

 指揮官をしていたから、学園の上の士官学校にも編入しているだろうけど……。

 後の二つは、文官になる為にある学園で、庶民が通う下級文官になる為のものと、主に貴族が通う上級文官になる為の学園がある。

 ちなみに女官になるのにも、この学園を出る必要があるの。

 

 どちらもとても難しくて、狭き門なのよね。

 ちなみにうちのエイベルお兄様も、卒業しているわ。

 ここを卒業して上級文官にならないと、王族の執務室勤務は出来ない……。

 私は特例(妹扱い)で勤務していたけど。


 

「どうした、マリー。浮かない顔をして」

 帰りの馬車の中で、私を抱き寄せエドが心配そうに顔を覗き込んでいる。

 ああ、いけないわ。

 私ったら、エドに心配をかけてしまっている。

「昨日のお茶会で、この国の学園の話が話題になったので、思い返していたのですわ。ベアトリス様のご子息は優秀なのですねぇ。お二人とも学園に通われているなんて」

「ああ。まぁ、そうだな」

 エドは、興味なさげに相打ちを打っていたけど、

「マリーも通いたかったのか?」

 そんな事を訊いてきた。

「あ、いえ。考えた事もありませんでしたわ」

 だって、私が通うとしたら上級の……王宮勤めの女官ですもの。

 マナーとかマナーとかマナーとか……って、マナーしか言ってないわ。

 絶対無理ですもの。


 そんな考えがエドにも伝わったのかしら。

 私の横で、笑いだした。

「すまない。今、学園に行きたいと言われても、行かせてやるわけにはいかないのだけれどな」

 エドは笑いながら言っているが、当然だわ。誰かの奥方が学園に通ったなんて話、聞いたことも無いもの。

「良いんですのよ。わたくしはこれから、エドの奥方として領地の事とか色々学ぶことが多いのですから」

 私がそう言うと、エドはそうか? という顔をした。いえ、まだ笑っているのだけれど。


「それより、お義兄様の領地の方はどうでしたか?」

 私の方の話ばかりというのも何なので、エドの方に話を振ってみた。

「ああ。俺たちが釣りをした川があって助かっているという感じだ。あの水源が無かったら近隣の領地から水を買わなければ足りないからな」

 足りないって、田畑に引き入れる水が? そっか、平地だものね。

「でも、あの川のおかげで潤っているのですわね」

「そういう事だ。領主がずっと領地に張り付いてなくても何とかなるさ」

 あ~。さっさと、王都に入って問題を解決してこいって思っているわ。

 口調がのんびりなのに、本当にエドって……。

 私が少しジト目で、エドを見ていると

「どうした? 疲れたのなら、俺の膝を枕にして寝ると良い」

 そんな事を言い出した。

 いえね。私を何だと……。


 返事をし損ねていたら、強引に寝かされてしまった。

 座っていたから、足はそのままなのだけど……。

「エ……エド様?」

「ほら、また様付けになってるぞ」

 あわわ……。エドから言われて慌てて口を手で覆う。

 エドは、私に膝枕をして大きな手で頭を撫でてくれている。


「どうせ、馬車のカーテンも閉めているんだ。少しくらい、こうしてても良いさ」

 エドは穏やかに言っている。少し顔をずらしてエドの方を向いたら、笑ってくれた。

 良いのかな? こんな風にしていても……。

「屋敷に戻ったら、俺は仕事があるし。マリーにも、奥方の仕事があるだろう? 今のうちだ。のんびりできるのは……」

「そ……か。そうですわね」

 じゃあ、今のうちにエドを堪能しておこう。

 私は、エドに頭を撫でられながら、そう考える事にした。


 もうすぐ、エドと私の領地が見えてくる。

 さぁ、これからのエド様との新生活。


 どんな楽しい事が待っているのかしら。 

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