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第1話 ただいま。マクファーレン領

 無造作な森を抜けると、整えられた草原や林、畑が有り水路が引かれている。

 道は石畳で舗装され、川があって橋が架かり、その向こうに村が見えてきた。

 なんだか、色とりどりで可愛い造りになっている。

 マクファーレン領に入ると最初に目にする光景。


 やっと帰って来れたわ。

 ここを出たのがすごく昔に感じる。

 

 だって、ここを出た時は私の名前はマリー・ウィンゲートだったのよ。

 なのに今は、マクファーレン。

 マリー・マクファーレンなのだわ。

 気を引き締めて無いと、すぐに顔がにやけてしまう。


「だから、馬車から身を乗り出さないでください。奥様」

 ケイシーが、慌てて私の体を引きずり込もうとしているわ。

 うふふ。

 奥様だって。

 なんて良い響き。


 相変わらず、エド様は馬に乗っているのよね。

 時々、馬車に来て下さるけど。

 なんだか窮屈で、長く乗る気がしなんだって。


 帰ったら一週間後には、領地での婚礼の儀をするの。

 王都でした仰々しいものではなく。

 お屋敷の人達や、私が仲良くしている村の人を招待して。

 後の宴会は、領地の人ならだれでも参加できるように、広場にテーブルを出して料理もそこで振舞うようにするのよ。

 町の人達が、お祝いの時に呼んでいる楽団の人達の曲に合わせて、踊るのだわ。



「ただいま」

 私は、エド様のエスコートで馬車を降り、玄関先に勢ぞろいで迎えてくれている、お屋敷の使用人たちに言う。

「お帰りなさいませ。旦那様。奥様」

 執事のジュードがみんなの代表の様に挨拶を返してくれた。

 

 エド様は、ジュードに留守の間の領地の事を訊く為に、執務室へ向かっている。

 長旅で疲れているのに大変だわ、エド様も。

 私とケイシーは、自分のお部屋へ向かう事にした。


 あれ? このお部屋こんな感じだったかしら。

 広くなっているし、お部屋数も増えているような……。

 ケイシーも驚いているから、間違いないよね。

 私たちが入り口で呆然としていると、ベッキーが教えてくれる。

「旦那様がお部屋の改装を業者に依頼してから、王都に向かわれたのですよ。今日からここは、旦那様と奥様のお部屋です」

「え?」

 ええ~! 一緒のお部屋? って……。

「もちろん、奥様の個室もあるんですよ。旦那様の隣の部屋に。でも、ほとんど使わないと思いますよ」

「そ……そうなの?」

 私はかろうじて、声を出せた。

 今まで通りだと思ってた。

 だって、夫婦同じ寝室という事はあるけど……。貴族の普通が、分からないわ。

 お父様とお母様は、別居しているし。

 王族の方々のありようは参考にならないだろうから。


 とりあえず、私の個室にも案内してもらったけど、ベッドも一緒になった一部屋だけの……と言っても、広いのだけど。

「こちらは、具合が悪い時とか……まぁ、夫婦喧嘩した時、とかですね。使うとすれば」

 ベッキーが、あっけらかんと言っていた。

 だけど、ケンカ……エド様とケンカなんて想像もつかない。


 やっぱり、夫婦になると色々変わるのねぇ。

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