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第62話 マリーの妄想とトム・エフィンジャー

 でも、素敵よねぇ。

 ピーター・ブラッドロー様とチェルシー・ムーアクロフト様。

 公爵家のご子息とその侍女の恋物語なんて、小説の中でしかないと思っていたもの。


 男爵家から、幼い頃から侍女見習いとして働いて……もしかしたら、ピーター様付きの侍女として見習いをさせられてたのかもしれないわ。

 幼い頃から、健気に自分に尽くしてくれるチェルシー様をピーター様は可愛く想い始めるの。

 まだ、ピーター様も自分の淡い恋心にお気付きにならず、でも、チェルシー様の一挙一同が気になるのだわ。

 

「おい」


 ああ、そうね。そうだわ、使用人の中にライバルがいたりして。

 庭師かしら? それとも厨房のコック? それとも従僕? もしかしたら執事見習いだったりして。

 

「おい」

 

 自分とは身分の壁があるけど、使用人同士の恋愛は禁止されてない。

 他の男に取られる前に騎士として功績を挙げようと、必死に頑張ったのだわ。


「おい。暗がりに行くな。危ないだろ、マリー・ウィンゲート」


 へ? この声は……。

 やだ、身体が震えてしまう。どうしよう。


「こっちは、見るなよ。俺としてもめでたい場に水を差したくない」

「なんで……こんな、王宮内に入れるの?」

「さぁな。何でだろうな」

 ククッと、笑い交じりに言っている。本当に、何でこんなところに入れるのよ。

 トム・エフィンジャーが……。


 しかも、暗がりとはいえ人の目は皆無じゃない。

 この場にいても、おかしくない人間?

「まぁ、第二王子は空っぽだからな」

 え? 空っぽ? なんで、ここで第二王子が出てくるの?


「まぁ、でも流石の俺も、王宮からお前をさらう事は出来ないな。ったく、自分のエリアに部屋まで与えて、余程大切なんだな、お前が」

 何だか、背後でブチブチ文句を言っているけど、トム・エフィンジャーの言っていることがよくわからない。

 後ろで、う~んと考える気配がしている。


「そうだな。国王ですら知らないこの国の秘密を王妃が教えたら、お前を諦めてもいいや」

「秘密って……」

「さぁ? ただ、知ってしまったら、殺されちまうかもしれないぜ。賢者様に」

 そりゃ国に国王ですら知らない秘密があるのが本当なら、知ってしまったら口封じされそうだけど。賢者様に秘密があるの?


「じゃあな。早く大人になりな。マリー・ウィンゲート」


 そのセリフを最後に、トム・エフィンジャーの気配が消えた。

 私が後ろを振り向いても、夜会に出ている貴族の方々がチラホラいるだけだ。


 というか、いつの間に私はホールのバルコニーから、お庭に出て休憩用のテーブルが点在しているところに来てしまったのだろう。

 恋人同士の語らいには、良いけれど。確かに女性一人でいては危ない場所だわ。


「マリー。どうしたの? こんなところで、エドマンドが探しているよ」

 私はビクッとなってしまった。気配が、今別れたばかりのトム・エフィンジャーに似ていたから。

 不敬だわ、私ったら。

「ルイ王子殿下」

「も~、ルイ兄さまだろ?」

「いえ、公の場ですから……さすがに」

 私はルイ王子殿下に曖昧に笑う。


「それもそうか。おいで、エドマンドのところに連れて行ってあげる」

 そう言って、ルイ王子殿下は私の方に手を差し伸べる。

「ありがとうございます」

 私は、素直にその手を取り、ルイ王子殿下と2人でダンスホールに戻って行く。

 そして、私はルイ王子殿下を見ながら王妃様の言ったセリフ、を思い出していた。


第二王子(うちのこ)のルイに気を付けて』

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