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第42話 エド様の戦友 おもてなしの話

「お客様のおもてなし……ですか?」

 エド様のお部屋で、紅茶をいただきながら私は聞き返していた。


「ああ。多分、1ヶ月後くらいになるとは思うのだが……戦友のジョール・フォーブズが婚約者を連れて遊びに来たいと言っている。かまわないだろうか?」

 かまわないだろうか? も何も……本当なら『来るからおもてなしの用意をしておいてくれ』と言うところなのでは?

「それはかまいませんが……なぜ、お伺いなのでしょう? わたくしが信用に足らないからですか?」

 エド様は、私の疑問にすごく驚いていた。


 いや、だって、奥方様の中には、自分はお茶会を開いて自分の友人は招く癖に、旦那様の友人には良い顔をしない……なんて方も居るから……。高位貴族の奥方としては珍しいけど、皆無じゃない。


「いや、そうじゃない。ただ、婚礼前の忙しい時だから……滞在も二週間くらいになるらしい」

 二週間……。え? 王都から往復二週間かかるのに、滞在が二週間? 

「それは……わたくしたちが落ち着いてから、ゆっくりいらした方が……」

「それがなぁ、ご婚約者のメアリー・フィルムス公爵令嬢が気鬱(きうつ)になっているらしくてな。同じ婚約者の立場のうちに、マリーと会わせたいとジョールから頼まれて……」

 ああ、なるほどね。立場的には、メアリー様も私も報奨品の身。

 同じ立場同士わかり合えるものがあるかも知れないというわけね。


「わたくしも、是非メアリー様にお会いしたいですわ。メアリー様は、おいくつでいらっしゃいますの?」

「ああ。たしか14歳だと……。婚約もまだ正式な物じゃなくて、今シーズンにピーター・ブラッドローのところと同時期に婚約披露をしようと言う事で、話がまとまっているはずだが」

 その頃には、また王都に行かなければな……と、エド様は言った。

「まぁ、14歳ですの。歳も近いし話も合うと思いますわ。喜んでおもてなしさせて頂きますわ」

 私は胸を叩く勢いで、エド様からの頼みを請け負った。



 フィルムス公爵家といえば、確かメアリー様は遅くに出来たご令嬢(こども)だと聞いている。こう言っては、なんだけど公爵家とは名ばかりで質素な暮らしぶりなのだとか。

 ご当主様は、本当は結婚をせず、自分の代で公爵家を閉じるおつもりだったらしいのだが、何を思ったのか、誰かの策略なのか40代に入って若い正妻を迎えていた。

 その正妻との子が、メアリー様。子どもが、男の子じゃなくてホッとしたとかしないとか。

 メアリー様の嫁ぎ先が決まったら、もう田舎の領地から出るおつもりはないらしい。


 その家々で事情があるものよね。

 とりあえず、客間の用意とエド様に好みを聞いてもらって、おもてなしの準備をしなくっちゃね。



 そして、慌ただしく一か月が過ぎ、先触れの手紙が届いた直後、エド様の戦友ジョール・フォーブズ侯爵閣下とフィルムス公爵家ご令嬢メアリー様が到着したのであった。

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