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第41話 マリーの婚礼衣装選び

 エド様の言うとおり一週間後に王都を出て、また一週間かけてマクファーレン辺境伯領に戻って来ていた。

 港の方の領地も安定し、私たちが戻って来た頃には領地の境目も無くなり、お互いが少しずつではあるけれど、交流を始めていた。本当にうちの執事ジュード・ウォリナーとその見習いのアンガス・ベリーは優秀だと思う。


 そんな思いを抱きながら、私は自分のお部屋でボーッとしていた。

 正確にいうと、婚礼衣装のカタログと見本だという大量の布が散乱している自室で呆然としていた。


 目の前では、ケイシーとベッキー、ナディアという私付きの侍女を始め、普段3階には来ない厨房や雑用をしている女性の使用人達までが私の部屋で、この布が素敵だのこれはダメだのと言っている。どうしてこうなった……。


 先日、王都での私のデビュタントが終り。ジョゼのお茶会に参加した頃、王室から婚礼の儀を執り行う許可が下りた。

 半年後の良き日に、日時も決まり。王都の大聖堂の予約も無事取れて領地に戻ってきた。

 本当は、領地の挙式だけで良いと思っていたのだけど、準王家の公爵令嬢と国家の英雄である辺境伯の挙式がそれで良いわけもなく。慣例通りの式になる予定だ。

 そちらの衣装や小物の方は、デザイナーと宝石商の方々と決めてしまったので、後は出来上がるのを待つばかりなのだけど、問題はこちら……。

 領地での挙式である。


『やっぱり地元の娘さん達と同じような式が良いわよね』と、うっかり雑貨屋で呟いてしまったものだから、うちの領地の婚礼衣装を扱う布地屋さんからお針子さん……果ては、庶民も手軽に買えるお値段の宝石を扱っている商人の方までお屋敷にやって来て、一時期騒然としていた。

 領主様の奥方様が『うちの店を利用して挙式を行なった』という売りが、どの店も欲しいようだった。


 結局、エド様が出て来てどのお店も均等に使うと約束をして、その場を収めてくれた。

「マリー、俺の分も見立ててくれよ。地元の男性と同じというなら、王都での婚礼の儀のように軍部の礼服を着るわけにいかないからな」

 こんな騒ぎを起こした私を叱るでもなく、エド様はそう言った。

 そういえば、エド様は私が何かしでかしても叱ったことも、怒った事も無い。


「俺はこれが良いと思うぜ。お嬢」

 いつの間にか、女性陣の中にビリーが混じっている。

「なんで、ビリーがここにいるのよ。ジュードは?」

 思わず私は聞いてしまっていた。

「休憩中。だって、最新流行の型がこれだから……、この光沢のある布地に下から上にグラデになるように刺繍入れてさぁ」

 わたしは、ウエディングドレスのカタログとその布を見比べた。

「……確かに、良いかも。あなたセンス良いのね」

「だろう? 布地屋は2軒だったよな。お色直しは、もう一軒から選ぶんだろう?

 どんな感じが良いんだ?」

「そうねぇ」

 私は、ビリーに自分の希望を伝えようと考えを巡らせてた。


「もう、ビリー。私たちの楽しみ、とらないでよ」

 ベッキーが言ってくる。いや、女性陣が怖い。

 これには、さすがのビリーも一瞬ビクッとなった。

「さ……さぁ、仕事に戻らなきゃ……な」

 ビリーは、半笑いして部屋から出て行った。き……貴重な戦力が……。


 やっと1つ決まったばかりで、この状態が後どれくらい続くのだろう、とやっぱり呆然と部屋に佇むのであった。


 女性陣が騒然といる中で、ドアのノック音がする。

 ケイシーがドアを開けるとエド様が立っていた。

「マリー、ちょっと話が……。おわっ、こりゃすごいな。何の騒ぎだ?」

 散乱した布とカタログ、集まった女性陣を見て、エド様が驚いている。

「領地での婚礼の衣装の布を選んでるんですのですわ。今やっと、ウエディングドレスが決まりましたの」

 私はエド様に説明をした。ちなみに、エド様の衣装はもう発注済である。

 男性の婚礼用のスーツは流行廃(はやりすた)りが無い上に、地元の男性にあわせてある。

 あまり凝った物にしないでくれと、行く先々で独身男性から懇願されたので、シンプルなものとなった。

「そ……そうか、大変だな。ここじゃ何だから、ちょっと来てくれ」

 そう、私の方に言って、部屋の女性陣に向かってこう言った。

「マリーの衣装選びは良いが、ちゃんと仕事もしてくれよ」

 そうして、ベッキーとケイシー以外の女性陣は持ち場に戻って行ったのだった。

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