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第32話 つかの間の?

 エドと話し合ってから、しばらくは大人しく家の事に専念していた。

 社交シーズンでもエドはあまり社交をせず、領地で仕事に専念している。

 だから、これが私の普通の生活だものね。


 孤児院の方も落ち着いたようだし、本当に貴族の奥方としては普通の生活。


「普通の奥方は、木の上に登ったり、こんなところでお茶と雑貨屋のビスケットを食べたりしないと思いますが」

 そう言いながら、ケイシーがお茶を入れてくれる。

 私の横に並んで座り、いつも通り自分もちゃっかりビスケットを食べているわ。


「平和ねぇ。こんな日がずっと続けば良いのに」

 いい天気。空も高く。風も心地いい。

 賢者様は、こんな気候を用意してくれる。

 いつでもという訳でもないのは、もう知っている事だけど……。

「不吉な呪いの言葉を言わないでくださいませ。マリー様」

「不吉って……、あなたねぇ」

 ケイシーは、他人がいる時は奥様呼びをするのだけれど、2人きりの時はマリー様と呼んでくれるのだわ。


「えっと、何でしたっけ……。そう、フラグ。そう言うのをフラグっていうのですわ」

「フラグ? 旗?」

「領民の若い子たちが使っているのを聞いただけなので、詳しくはないのですが。そういう事を言うと真逆の事が起きやすくなる……というか、悪い事が起きやすくなるというか」

 つまり、ケイシーもよく分かって無いのね。


「大丈夫よ。フラグ? であっても、無くても。多分、平和なのは今だけだから」

 私はヘラッと笑って見せた。

 こんな笑い方をしていると、リンド夫人から怒られちゃうわね。

「マリー様」

 咎めるようにケイシーが私の名を呼ぶけど。

「仕方が無いじゃない。平和だったことなんて、生れた時から無かったんだもの」

「……それは」

 ケイシーが絶句している。

 ごめんね。そんな人生にあなたを付き合わせてしまって。以前、こんな風に謝ったら、メチャクチャ怒られたので言わないけど。


「いいじゃない。波乱万丈の人生も。きっと、退屈している暇なんて無いわ」

「そう。そうですわね。それにマリー様の傍にはいつでもわたくしがいますからね」

 私が気を引きたてるように言うと、ケイシーも気持ちを切り変えるようにそう言ってきた。


 でもね。本当は、ケイシーにも幸せになって欲しいんだけど。

 言えば怒るから言わないのだけどね。

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