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第26話 指導騎士 ボブ

 ドムとヘンリーが、騎士団の訓練場で剣の練習をする初日。

 私とケイシーは、エドに連れられて騎士団の駐屯地に来ていた。


 国境沿いの辺境警備を任されているとはいえ、隣国であるリクドル王国は何代か前の王弟陛下が治めるようになった時から我が国の同盟国。

 何か問題が起こるハズも無く、のんびりとしていた。


 私は、訓練場の端に駐屯地の騎士たちが用意した椅子に座っていた。

 ケイシーは私の後ろに立っているけど。

 テーブルにはティーセット。なんだかなぁって感じだわ。


 目の前で、子ども達が指導騎士であるボブから、素振りの練習を見てもらっている。

 今日から参加するドムとヘンリーは、剣の持ち方から教えて貰っていた。

 のんびりした光景を目にしながら、先日、サマンサが管理している孤児院から帰って、ケイシーと話し合った事を思い出している。




「ねぇ、ケイシー。サマンサはボブの事が好きなんじゃないかしら?」

 あの日、私は屋敷の自分の部屋に戻り、着替えを済ませ、椅子に座ってからケイシーにそう言った。

 ケイシーは、私が脱いだ服をクローゼットにしまうかどうか悩んだ末に部屋にあるドレス掛けにかけた。ここに掛けてあるドレスは、雑用召使が洗濯場に持って行ってくれるからだ。

「え? 旦那様の側室狙いじゃなくて、ですか?」

 ケイシーは、すっかりそう思い込んでいるようだけど……。


「だったら、ボブの話になった時、あんなに感情をあらわにしないでしょう? 武勲がどうのと言っていたし、あの後も様子が変だったし」

「そういえば、もう武勲も立てられないと言ってましたわね。戦えないのに騎士爵にしがみ付いているのも、おかしな話ですわね」

 ケイシーはすでに私のお茶の用意をしている。私は目の前に出された、クッキーをつまんだ。


「お行儀が悪いです。マリー様。お茶が入るまで」

「良いじゃない。ケイシーしかいないんだし。何か理由があるのかな? サマンサって、まだ貴族令嬢だとか」

「可能性はありますわ。平民だと辺境伯閣下の側室に……、いえ、妾にすらなれませんもの」

 そうなんだよね。身分が子爵、男爵だって、平民はお相手になれない。

 良くて別邸暮らしのお妾さん。悪ければ、遊び相手として打ち捨てられる。

 伯爵以上となると、本当に気まぐれで手を付けてみただけ、という扱いになるものねぇ。


「だからね。もし、サマンサの身分がまだ貴族令嬢で、相思相愛だったら、ボブが騎士爵にしがみ付くのも分かるのよ」

「そうですわね。騎士でしたら一代限りですが貴族扱いですもの。平民から騎士になるのは並大抵の努力では無かったでしょうに」

 ケイシーは、私の目の前にお茶を差し出しながら同意してくれた。


 そうなんだよね。

 貴族は先に騎士団に入って、片手間……と言っては悪いけど、あの学園の騎士コースを卒業するけど、ボブのような平民はまず騎士コースへの選抜に受かる事すら難しい。

 そして合格出来ても……、ねぇ。差別との戦いになりそう。


「ボブは何か他に野心があったのかしら? それとも、王都時代からサマンサと知り合っていたとか……」

 その辺は、よく分からないわよね。

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