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<R15>15歳未満の方は移動してください。

という訳で。

作者: 汐琉

特に何も考えず、本当にタイトル通りな感じで思い付きました。

他の連載がシリアスだと、ついこういう何にも考えてない溺愛系を書きたくなります。


キス表現ありなのでご注意を。

アダルトな発言も少々あるので、これはR15じゃ不味いだろと思われたら、削除するので教えていただければ幸いです。

 という訳で、私は異世界へ転生しました。




 うん、意味がわからない?

 大丈夫、私もわからないから。

 全く大丈夫じゃないけど、基本的に流され体質な私は気にするのを諦めた。

 よく小説とかでは、事故や事件で死んだら神様と出会って、みたいなのがテンプラ……違ったテンプレらしいけど、私にそういうのは無かった。

 ある日、普通に洗濯物干してたら、あれ私って死んだの? と唐突に前世を思い出した。

 別に転んで頭を打ったとか、死にかけた訳でもなく、旦那様達の洗濯物を干してたら思い出した。

 死の瞬間は思い出せないけど、酷い風邪をひいたのは覚えてるから、風邪をこじらせたのかもしれない。

 まぁ、死んじゃったみたいだから、もうどうでもいいんだけど。生き返る訳じゃないし、転生しちゃってるぽいし。

 こういう流され体質なとこ、親や友達にはよく注意されてたなぁ、と少ししんみりしてしまった。

 結婚はしてなかったけど、親や友達ぐらいは悲しませちゃったかなぁ、と柄にもなくしんみりと。

 そう言えば、思い切り一番の問題を流しそうになったけど、



「どうした? 誰かにいじめられたのか?」



 心配そうな声と同時に、私は背後から伸びて来た逞しい腕に包まれる。

 振り返るまでもなく腕の持ち主がわかり、私はクスクスと笑う。

「大丈夫、ちょっと日差しが目に染みただけ」

 何でもないの、と答えたけど、納得してないのか、腕の中でぐるりと反転させられ、見つめ合う体勢になる。

「もしかして、俺が昨日無理させたからか?」

 見上げると、黒い毛で覆われたふさふさの耳と尻尾を、しゅんとしてへたらせた美丈夫が、可愛らしく私を見下ろしている。

 コスプレじゃないよ? 自前の本物の耳と尻尾。

 耳と尻尾は、前世で言えば、シェパードとかに近いイメージかな。

 尖った三角の大きい耳に、ふさふさの毛並みの尻尾。

 いつもは、感情に合わせてピクピクしたり、ブンブン振られてるんだけど、今は完全にヘタってなってる。

「慣れはしないけど、今は本当に日差しが目に染みただけなの。心配させてごめんなさい」

 背伸びをして、しゅんとしている旦那様の頭を撫で、へたっている耳を指で擽る。

「っ……」

 息を呑んだ旦那様は、喉奥でぐる、と小さく唸ると、そのままぎゅうぎゅう私を抱き締める。

 本気を出せば私の背骨ぐらいポッキリいくらしいけど、力加減はいつもバッチリだ。

 ちょっと息苦しいけど。

 旦那様が私を傷つける訳はないから、旦那様の気が済むまで抱き締められておく。

 抱き締められるのは、私も好きだから問題ない。

 わんこ系な旦那様の愛情表現はわかりやす過ぎるぐらい、わかりやすいから、扱いも楽でいい。

 そんな事を考える頭の隅で、異世界だなぁ、と今さらながらな驚きを訴えている自分がいたけど、それこそ今さら過ぎるので放置しておく。

 この世界に暮らして二十年近いのだから、もうこの世界が私の生きる世界で十分だ。

 『異』なる『世界』なんて呼び方、違和感だらけだよね。

「シたい……」

 おっと、不穏な発言が聞こえたから、そろそろ旦那様を止めないと。

 まだ洗濯物も残ってるしね。

「駄目。いい子だから、我慢してね?」

 なだめるように背中を撫でながら告げると、不満そうな唸り声が返ってくる。

「今日は、あなたの大好きなシチューの予定だったんだけど?」

 ピクリと耳が立ち上がり、パタパタと尻尾が揺れる。

 もう一押しだな、と背伸びをした私は、鼻先をぶつけ合うようにして甘えてから、児戯のようなキスをして笑いかける。

「いってらっしゃい」

「……いってくる」

 物足りなかったのか、ガッツリ腰砕けになるぐらいの濃厚なキスを返してくれてから、旦那様は仕事へ行ってくれた。


 ──これが転生した私の、前世を思い出したある日の朝の話だ。

 という訳で、妨害はあったものの洗濯物は干し終えたから、次は寝起きの悪い旦那様を起こしに行こうと思う。

 昼食の準備は済んでるから、最悪少し手間取っても大丈夫な計算だ。

 私だって学習するのだよ、と誰にともなく偉ぶって口元を緩めながら、旦那様の寝ている寝室のドアを開ける。

 カーテンが閉められた室内は、日が高くなった時間帯なのに薄暗い。

 ベッドの上には、布団にくるまって塊と化している姿が見える。

 よく見ると、布団の隙間から長くしなやかな尻尾がはみ出ていて、呼吸に合わせてゆらゆらと揺れている。色は白と黒の縞模様だ。

「そろそろ起きる時間だよ? 起きて?」

 ゆさゆさと布団越しに揺さぶるが、うう、という不機嫌そうな声が聞こえるだけで起きる気配はない。

「一緒にご飯食べよう?」

 ふふ、起きる気配はないので、妻の特権を行使しちゃいますよ、と。

 遠慮なくベッドへ腰を下ろすと、布団からはみ出してゆらゆらと揺れている尻尾を捕まえ、毛並みに沿ってゆっくりと撫でていく。

 毎日私が手入れしている尻尾は、触り心地抜群だ。

 私しか触らないなんて勿体ない……とかは言わないよ? と言うか逆に、触って欲しくないなぁなんて、ちょっと心が狭いかな?

 まぁ、仕方がないよね、旦那様達は全員素敵だし。

 モテる旦那様を持った妻の、幸せな気苦労かな。

 とりとめなくそんな事を考えながら、うふふ、と思わず笑い声を洩らしつつ、パタパタし始めた尻尾を愛でる。

「なに、わらってるの?」

 おっと、さすがに寝起きの悪い旦那様も目が覚めたみたいで、ちょっと不機嫌そうな掠れ声が布団の山から聞こえてくる。

「幸せだなぁと思って」

 誤魔化すような事でもないので私は素直に告げて、布団の山を掻き分ける。

 旦那様のキラキラしてる顔が見えた、と思った瞬間、伸びて来た腕に捕まり、私はベッドへ引き込まれた。

「おはようございます」

 一瞬見えた顔は赤くなっていたような気がするけど、気づかないふりをして、旦那様の上に乗ったまま朝の挨拶をする。

 そろそろお昼だなんて、気にしたら負けなんで。

「……はよ」

 旦那様からは、ため息混じりの不貞腐れたような挨拶が返ってくるけど、素直な尻尾はぐるりと私の下半身に巻きついている。

 私は不埒な尻尾を軽くあしらいつつ、寝癖のついた旦那様の髪を撫で、丸みのある白黒の耳を指先で擽る。

「あー、たべたい」

 尻尾に続いて不埒な発言が聞こえ、私の首筋に顔を埋めた旦那様は、じゃれるように鼻先を擦り付けてくる。

 これは匂い付けしてるだけ。

 擽ったいけど、我慢我慢。

「もうすぐお昼だよ?」

 首筋へ埋まった頭を撫で撫でしてると、不意に濡れた感触がして、私はビクッと身を竦める。

「君が、食べたいんだけど」

 首筋を舐められたらしい。

「……駄目。起きて、ご飯にしよ?」

 不満そうにたしたしと尻尾でシーツを叩いているのが視界の端に映るけど、心を鬼にして首を横に振る。

 むぎゅ、と寝転んだまま抱き締められ、ゴロゴロと甘える声というか音が聞こえるが、やっぱり心を鬼にして……以下略。

「じゃあ、おはようのキスして。そしたら、起きてあげる」

 可愛らしい提案に、私はクスクス笑うと、んーと目を閉じて待っている体勢の旦那様に、触れるだけのキスをする。

 さぁ起きて、と旦那様の体に手を突いて起き上がろうとした私は、伸びて来た腕に捕まえられ、また唇を塞がれる。

「ごちそうさま?」

 離れていく旦那様の顔には、悪戯っぽい満面の笑顔。

 本日二度目のお代わりキス、しかも濃厚なのをいただき、腰砕けな私を軽々と抱き上げ、旦那様は寝起きの悪さどこ行ったの? ぐらいな動きで立ち上がる。

「っふ、ぁ……」

 文句を言いたかったけど、思いがけず変な声が出てしまい、私は恥ずかしさから口元を手で覆う。

 たぶん、絶対顔も赤くなってると思う。

 あわあわしてると、旦那様のキラキラした顔が近づいてきて、すりすりと甘えるように鼻先を擦り付けて離れていく。

「あんまり可愛い顔してると、悪いケモノに食べられちゃうよ?」

 八重歯を覗かせて笑う旦那様に、私はおかしくなってクスクスと笑い、旦那様の首に腕を回してギュッとしがみつく。

「愛しいケモノに食われるなら構わないですよー」

 冗談めかせて告げると、キラキラした旦那様の顔から常の飄々とした笑顔が消えて、きょとんとした無防備な表情を見せてくれる。

「……本当に食べられたいの?」

 どうすればいいのかわからないといった表情で尻尾を揺らす旦那様が可愛くて、私は腕を伸ばしてその頭を撫で撫でと撫で回す。

「ふふ。夜になら、いいよ?」

 普段とのギャップにやられ、私はついそんな事を言ってしまった。

 それぐらい可愛らしくて。

 しかし、いくら猫っぽく可愛らしくても、旦那様は猫科猛獣──。



「覚悟しておきなよ?」



 がぶりと首筋を甘噛みした後、くるりと巻きついた尻尾にやんわりと締め付けられ、色気溢れる艶っぽい笑顔をいただきました。



 これが何となく前世を思い出した日の、昼食前の出来事だ。

 という訳で、お寝坊な旦那様との早めの昼御飯を終わらせた私は、引きこもっている旦那様の所へ昼食の配達だ。

 夜の予定が少々怖いけど、夜までは今引きこもっている旦那様と二人きりだから、特に心配はない。

 旦那様達は心配性だから、滅多に私を一人きりにしてくれない。

 屋敷で留守番なんて、一人でも大丈夫なんだけど。

 私はなかなか強いし。うん、びば異世界だよね、魔法とか。

 昨日まで普通に使ってたから今さらだけど、魔法使えるんだよね、私。

 どれだけ普通かと言うと、日常生活にも活用するぐらい普通に。

 今も、

「開けー、ごま。なんちゃって」

と、前世での扉が開く定番呪文を口にして、旦那様の待つ部屋の扉を開ける。イメージは念力的な魔法だ。

 もちろん他人を攻撃するような魔法も使えるよ。

 旦那様達のおかげで、もうずいぶん使ってない。

「お昼の時間ですよ?」

 声をかけながら部屋へと入る。

 何となく、この部屋の主である旦那様には、敬語を使ってしまう。

 別に旦那様に嫌われてる訳でもないし、もちろん嫌いな訳ではない。

 本当に、つい、だ。

 旦那様が一番年上で落ち着いているせいかもしれない。

「あぁ、すみません。そこに置いておいてもらえますか?」

 あと、旦那様自身もクールで敬語だから?

 旦那様が、そこ、と示したテーブルの上に、昼食の乗ったトレイを置いた私は、旦那様の様子を窺う。

 ソファに腰かけた旦那様は、長い足を優雅に組んで、読書に勤しんでいる。

 いかにも文系ですらりとした知的美人系な旦那様だけど、実は脱ぐと凄いんです、な体型だ。

 思わず色々思い出してしまい、頬が赤くなる。

 頬の熱を冷まそうとパタパタと手で扇ぎながら、私は旦那様の様子を再び窺う。

 旦那様に動きはない。

「ご飯食べて欲しいです」

 しゅんとした声を出すと、旦那様の茶色く丸い耳がピクリと動く。

 尻尾と内心が外からわかりにくい旦那様だけど、耳はなかなか雄弁で良かった。

「お腹空きませんか?」

 またピクリと耳が動き、本のページを捲る旦那様の手が止まる。

 分厚い本には栞が挟まれ、ため息を吐いた旦那様は仕方がないとばかりに立ち上がり、静かに昼食の席へ着く。

 いただきます、ごちそうさま、美味しかったです。

 余計な事を話さない旦那様の代わりに、いつも私が色々話しかけている。

 クールな旦那様はたまに目線ぐらいしかくれないけど、丸いお耳がピクピクしてるから、聞いてくれてるのはわかる。

 可愛いなんて言ったら、絶対零度な視線をもらって、あの、その……おしおきとかされちゃうから、言わないよう気を付けてるけど、ピクピクする耳は可愛らしい。

 あと旦那様は自分の尻尾が恥ずかしいらしく、外では長い上着でお尻を隠してしまっている。

 私は好きなんだけどな、旦那様の丸くて短い尻尾。

 私だけしか触れない……私だけって響き、擽ったい。

 えぇと、普段は私もあんまり迂闊には触らないんだけど。

 スイッチだから、旦那様の。

 まぁ、色々と本能的な?

 他の旦那様からの話によると、尻尾を触った相手は、血祭りにあげられちゃうらしい。

 私は触らせてもらえるけど、もれなく……R指定な感じが待ってるよね。うん、仕方ない。

 基本的にどの旦那様も、私以外に尻尾とか耳を触られたくはないらしい。

 これは獣人な旦那様方特有というより、普通の感性の人なら嫌だろう。

 私も旦那様方以外には触られたくはない。

 あ、でも、ウサギ系な獣人のお姉さんの耳とか尻尾は、手放しで可愛いと思う。

 前世の記憶を思い出した私には、バニーガールっぽく見えるし。

 バニーなお姉さんの耳は、頼んで触らせてもらったことがあるけど、旦那様方が拗ねて大変だった。

 あれは仕方ないよね? 美人で巨乳なうさ耳のお姉さんなんて、二次元の世界だよ?

 前世の記憶が戻った今は、余計にそう思うんだけど、やぶ蛇だから思い出させるような事はしない。

 そんな他愛もない事を考えながら、私は読書へ戻った旦那様に腰かけている。

 表現がおかしい?

 でも、文字通りなんだよね。

 私は今、ソファに腰かけた旦那様の膝上だったりする、気付いたら。

 幼児のように私を横向きで膝へ乗せ、旦那様は気にした様子もなく読書を再開してしまった。

 身動きが取れなくなった私は、着痩せして見える旦那様のたくましい胸元へ、ピタリと体を寄せる。

 筋肉ってあったかい。

 旦那様のドクドクという心臓の音が良い子守唄だ。

「あったかいです」

 うふふ、と笑って旦那様の胸元へ額をすり寄せていると、一定だった旦那様の鼓動が乱れた気がする。

「……悪い子ですね」

 ふ、と旦那様が笑った気配がし、反射的に旦那様を見上げると、キスされた。

 二度あることは三度ある、で本日三回目の濃厚なキスをいただきました。

 鋭い犬歯で軽く唇を噛まれるのが、キス終了の合図だ。

 私はもう色々とHPなのかMPなのかわからないけど、ゼロだと思う。

「しばらくしたら起こしてあげますから」

 旦那様の有難いお言葉に甘え、私は素直に目を閉じる。

 甘やかすように髪を撫でられるのを感じながら、私は眠りへ落ちていく。



「あいしてます」



 そんな言葉を聞いて眠りへ落ちる、前世を思い出したある日の昼下がり。

 とても幸せな、何気無い日常の話だ。

 という訳で、お昼寝をさせてもらって、体調はバッチリだ。

 朝約束した夕食のシチューも、我ながら美味しく出来たと思う。

 もうすぐ出かけていた旦那様方も帰ってくるだろう。

 私は玄関まで走っていって、おかえり、と迎えるのが日課だ。

 とても幸せな日課。

 前世を思い出し、さらにその幸せを噛み締める。

 ついでに、一番の突っ込みどころかなぁ、と今さら気付いた点を噛み締めてみる。



「これって、一妻多夫だよね」



 あまりにも日常でナチュラルだったから、旦那様方が獣人とか、魔法が使えるとか並みに突っ込みどころだと、やっと思い至る。

 ま、だから、どうしたって話だけれど。

 今世では普通……でもないけど、認められてるんだし、誰かに迷惑かけてる訳じゃない。

 何より、私は旦那様方を愛してる。

 それは胸を張って言えるから。

 前世と比べると突っ込みどこも満載な世界だけど、とても幸せで優しい世界だ。



「ただいま」



 旦那様が帰って来た声がする。

 お出迎えに行かないと、と私は玄関へ小走りで向かう。



「おかえりなさい!」



 これが前世を思い出した私の、何でもない愛しき日常の話だ。


一人目 わんこ?系

二人目 猫科猛獣(虎)

三人目 クマさん


こんな感じです。

ネタ被り、タイトル被りございましたら、そっと教えてください。

R指定についても、不味いだろと思ったらご一報いただければ幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] R指定、まったく問題ないと思います!! 控えめなのに、色っぽいのが凄いです! というか、続きをムーンで読みたいですぅ~~ いつも楽しいお話、ありがとうごさいます。
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