プロローグ(前半)
ここは日本の北西側に目立つ鳥取という文化。
彼はそのまた北西側にある鳥取県の、昭和町という場所に住んでいる。
ーーー
ーーーーーー
しかし今はチェーンスーパーとファストフード店の奥の方に聳え建つ、ある学校の目の前に居た。
ーーーーーーー
「・・・。」
顔に眼鏡を掛け、襟が立った黒い長ランを身に纏いながら下には布が少し薄いズボンと茶色い皮靴を履いて校門の前に立っている。
「遂に僕は・・・高校生!」
大きく鼻息を吸って小さく吐いて、春の匂いを体の奥に染み渡らせた。
ーーーーーーー
目の前にあるのは、獅子神 歩が世話になる
鳥取県立東高等学校。
全校生徒209名
教師 30名
それらを全て合わせても、男女比が10:0と計算されている屈指の男子校だ。
ーーーーーーー
獅子神とはこの少年の名前であり、ひょんなことから女に耐性がある彼にとっては男子しかいない場所は好待遇。
因みに昭和町に住んでいると言ったが、つい数日前までは島根に住んでいた。
ーーーーーーー
「良し、行くか!」
覚悟を決めて校門を通ろうとすると、突然『キキ―ッ!』と自転車のブレーキ音が右の方から鳴り響く。
「?」
そこでは入学式と書かれた看板の辺で黄色い帽子を小学生とさっき通りかかった自転車に乗った黒い制服の高校生が鉢合わせをしていた。
ーーーーーーー
ブレーキ音の次に高校生達の先頭に居るリーダーらしい男子の怒鳴り声が鳴り響いた。
「何をそんなところで突っ立っとんねんやわれい!?」と
それに小学生達が少し怯えながら謝る。
「ひっ!ごめんなさい!」
しかしそう謝っても高校生の怒りは収まらないらしい。
「御免じゃすまされんがなバロゥめ畜生!」
高校生リーダーは右を指して顔もそこに移しながら小学生を叱る。
「いいか?さっきそこの横断歩道を渡って来たおめぇらが、もし俺らが操縦する自転車とぶつかったらどうなってたと思う?」
「・・・解かりません。」
小学生の一人が顔を上げて答えると、高校生リーダーはそちらに顔と首を戻しながらまるで言い返すように答えた
「それは交通事故と言ってな、お前はんらは大ケガして病院に搬送されていたかもしれねえんじゃあっ!!」
「はっはい~!」
「・・・・。」
何処か言葉が古い高校生の説明に、何処か親切さを感じる歩。
話を聞くに小学生は、右奥にある小学校に行こうとして横断歩道を渡ったら、自転車のスピードを出し過ぎて、急ブレーキをかけた高校生らと偶然にも接触。
そして今の状況になったらしい。
ーーーーーーー
すると学校側、左の方からパンチパーマをきかせた中年の女性が黄色い旗を片手に持ってやって来る
高校生達を怒鳴りはじめた。
「ちょっとあんた達!」
「なんやくそばばあ!?」
「『なんやくそビッチ!?』とは失礼だね?それよりも、さっきの会話は全部きかせてもらったよ!」
「いや、くそびっちとは言って無いねん。」
「話を聞きなさい・・・・あんたね春一番の季節に春一番が如く怒鳴り声を上げて迷惑と思わないのかい?」
・・・女性の発言にはごもっともだ。
この勝掘町二つの学校と寺の他に、多くの住宅地が建ち並んでいる。
ーーーーーーー
人が住んでいるか解からないとはいえ、そんなところで大声を出すのはとても失礼で迷惑極まりないだろう
しかし高校生リーダーは折れずにハンドルを握ったまま自転車を降りて、女性のほぼ耳元で訴えかけた。
「何を勘違いしてんねんやおばはん?わいらはな、このちびっ子らがまた同じ過ちを犯さへんように努力しているだけだ!」
「『何を良い子ちゃんぶってる!』って、良い子ちゃんぶってるのはそっちだろ!」
「ばばあ耳鼻科行けっ!」
色が大きく変わる程に頭に血を上らせる自転車に乗る高校生リーダーと黄色い旗を持った中年女性。
すると高校生リーダーの後ろに居た学生達は自転車から下りてハンドルは両手で支える
そしてその一人肩をつついて耳打ちした。
「兄貴、『わいら』と言うと俺たちも加わってんすか?」
「ああん?何がワイワイ楽しいんや?病院行け!」
「あんたが病院行けよ!?」
学生は今度は自分に怒鳴るリーダーに怒鳴り返した。
『「・・・・・。」』
因みに少し重たいランドセルを背負いながら立っていた小学生は、ゴミを見るような眼差しで二人を見上げていた。
ーーーーーーー
「(まずいぞ、どんどん収集が付かなくなってきた!)」
そう頭の中で思うのは、勿論の如く歩。
小学生の心がこれ以上に腐らない為にもカバン右手に二人を止めに入った。
「あのすいませーん。」
「ん、なんやボウズ?」
「いや、ボウズじゃありませんけど・・・あの~小学生が通れないみたいなので少し間をあけてもらいたくてですね。」
歩はそう説得するが、途中で女性は言い返した。
「余所者は引っ込んでな?これは私とコイツのもんだいなんだよ!」
女性は少し右側から顔を出して、高校生達を指した。
「そう、大きく怒鳴っている時点で・・・皆の問題と思うのですが?」
「「・・・・。」」
歩が左手メガホンすると、二人は細くなった両目で一度お互いを見てから互いに反対の方を向いた。
「なんだその微妙な反応?」
すると謎の人物が、歩の後ろから横を通る。
「どいて、貴方じゃ相手にならないわ。」
「「「?」」」
ーーーーーーー
それは自分が着ている学ランより色が少し薄いブレザーを着こなし、チェックのスカートと黒い革靴を履いているのがよくわかる。
「!」
歩は何とも無いが、高校生の一人と旗を持っている女性は違って目を大きく開かせて言った。
「黒咲家の・・・」
「黒咲 若菜お嬢様!」
その一言に反応したのか、校門で写真撮影などでにぎわっていた親子達らが、驚きの表情でこちら側に視線を送った。
ーーーーーーー
場の空気が一気に冷えはじめる。
「・・・?」
歩はその理由が解からず冷や汗をかくだけだった。