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火星のヨーロッパファストストーリー

作者: 二窓コフ

「火星のヨーロッパズ」(なんのことかは検索してください)のいわゆる過去物語です。


2017.1.5にぷらいべったーに投稿したものを転載。[http://privatter.net/p/2080881]

時は未来、めちゃくちゃハイテクとか色々進んだテクニカルですごい時代です。

人間は既に地球だけで無く月に移住をはじめ、満月の日にはビル群の夜景が空の上に綺麗に見えるのです。

そんな時代で、今は火星にも移住をはじめるためのプロジェクトチームがありました。老若男女すごい人たちが集まったすごいチームです。

そして今は、ついにはじめて火星に住むために作った酸素装置やら仮説住宅やらをチェックする大事な日、火星に向かうのはふたりの女性です!


結論から言うとそのチェックは失敗しました。酸素装置はA地区(プロジェクト本部)、B地区(ビジネス街予定地)が大丈夫だったのですがC地区(住宅予定地)が………しかもそこで装置が切れてることに気づき、対処をしようとしてるうちに大気が膨れ上がってなんとかして建物の中しか酸素が無くなってしまいました………念のため持ってきた酸素ボンベは壊れました…通信機器は使えますが、脱出の手段は無く。絶望的な状態を地球からは眺めることしかできないのです。



一方こちらは時はめちゃくちゃ昔です!!!!いわゆる中世ってやつなのかな?!

あるところに普通の青年少女のカップルがいました〜〜!!ヒュ〜〜!!(これを打っている私のテンションが病気)普通の普通のまあひとつ言うと純粋な感じのカップルです。

普通のカップルなので秋の収穫祭とかよくわかんないけどそんな感じの夜のお祭りにも出ます!普通に踊りを見たりちょっと参加してみたり、おしゃべりなおばさんには冷やかされて豪快なおじさんには肩を強くバンバンゲラゲラ笑われながら叩かれる微笑ましいやつですね。楽しいお祭りだけど最近は実は「ジェイソン」とかそういう類いの怖いのが街にいるとかでそこだけ夜は心配………!

ふたりの帰り道のことです…。女の子の方が「人目を忍んで路地裏で幸せなハグを………」とかそんな感じのことを考えてわざとひとけのない裏道で帰ることを提案します!!!ヒュー!!!!男の子の方も恋と若さのヘロヘロで頭がやられてるだけなワケではありませんでしたから、ちょっと良くないなとかはわかってたんですが、お祭り帰りの夜ですからね!そりゃあ何かイベントはあったほうがロマンチック!!

しかしまぁもうこの文の進め方でも察しが付くとは思いますが、起こったのはロマンチックなイベントではなく悲劇…………。


裏道の細い階段の踊り場のところ、狭いところですがふたり立ってるには充分なぐらいのところ……女の子がスッと回り込んで男の子を腕で抱きしめようとしたと…………


女の子は背中にすごく熱いものを感じました。最初は、彼がとっても強く抱きしめてくれたのかと思い、幸せな気持ちになっていたのです。しかし、熱いかんじが背中から腰までつらつらと垂れて、脚まで流れた所でわかったのです。後ろから誰かに斬られたんだなー…と。

犯人?言うまでも無いですよね、さっきも線引きしましたでしょう、ジェイソン的なソレです。

男の子はさっきまで顔をとても赤くしていたのに、今は真っ青にして大急ぎで切り口に持っていた布を巻いてくれました。どくどくと痛いです。そこだけ血管が爆発してしまったみたいなのです。

歩くのは無理です。でもお互いにひとりになりたくない状況でした。


そこそこ時間が経っていたかもしれないとき、男の子が女の子を抱きしめました。

こんな時に、そっちから積極的になられたって…………とか、守ってくれるのかな……とか女の子はふわふわ痛みと共に考えていました。

しかしそんなモノじゃありませんでした。(この辺で文を打っている私は悟りを開きだした)

腕の力は、やけに強くて、苦しくてなんだか怖い感じがしました。

女の子ふっと、なんだか今の自分の状況より怖いものを感じました。

男の子は嗚咽でもするのか、何か詰まらせたような声を出してから深呼吸するみたいにゆっくり息を吐き出してしました。首元にかかってぞくぞくしました。

次に気づいた時には、さっき巻いてくれたはずの布は解かれて血が溢れ出していました。


そこでやっと、「そういえば前に私が転んで膝に傷を作った時にも、やけに怖い顔をして変な息を漏らしていたなぁ…………」と女の子は思い出して、首元で鋭い痛みを感じたのでした。落ちるような意識の底の前に、「ごめん」と涙が混ざった声が聞こえたような気がしました。




外に出れば死ぬ、仮設の建物の中には何も無い…………。いや、ひとつあるとすれば、大きい荷物を送る時に使う量子組み換えのワープ装置だけです。これは入れたものを量子単位まで瞬時に分解して、光速に乗せて崩れないうちに目的の場所まで送ってくれるのです。

「これを使えば脱出できる」

いやいや、無理があるでしょう。だってこれ、人間が使うことは想定されてません。しかも送る場所も危ない機械がたくさんある工事とかです。うまく送ることができたって機械でミンチにされたら終わりです。

ふたりの女性は、まぁ、もう生きる術は無い感じです。通信機器の向こうはもう家族を呼ぶだとか友達を呼ぶだとか、完全に「死を迎える人に思い残すことがないようにする」モードです。

ひとりの女性が、言いました。「このワープ装置で、もう運に任せてどこかに行く。光速を更に上げれば過去にでも行けるかもしれない。そしたら、どこかで未来人として生きるのも面白い!」

もうひとりは止めました。「そんなの危なすぎる!」と。

しかし、もう彼女の好奇心は止められないようでした。どっちにしろ生きられることは多分ないでしょう。それなら、まぁ好きにやらせたほうがいいです。

彼女は、最後に気取ったような敬礼をわざとらしくして、そして装置の「特に大型の荷物」を置くところにジャンプしていなくなりました。光速の上げ方はわからないけれど、何か支援になればと残されたもうひとりは通信機器を壊して、火花が出た瞬間それを装置に投げ込んでみました。

残された彼女は部屋の酸素が切れた15分後に亡くなりました。



朝になっていました。

男の子は、自分がどこまで来たのかよくわかりませんでした。でも、多分今頃紅くなった階段の踊り場で倒れている彼女が見つかって、ジェイソン騒ぎで町は大変なことになってるだろう、自分はどう思われてるか?ジェイソンの正体だったか、良ければ彼女を庇って死んだとかそんなところだろうところだろうと思いました。

それより、もうずっと目がしょぼつくというか、痛いというか、腫れていてまばたきが収まりません。ずっと泣きながら夜の中町から遠いところに行こうとしていました。

途中で、自分もジェイソンに斬られればいいのに、と思いました。

遠いところに行くのは逃げることです。最低です。

それでも、悲しくて?自分が情けなくて?泣いているはずなのに、胸の高まりを感じたのも事実で、ふっと噛んだ瞬間が脳裏をよぎるととてつもない快感に襲われそうになって、必死で振り払おうとするのです。

そんなことを繰り返して、逃げるうちに朝になってしまった、というわけです。

これからどうしよう。

何をすればいいんだろう。


あぁ、別にジェイソンに殺されることを期待しなくても、自分で殺せばいいと思いました。

何で思いつかなかったんだろう……。刃物でガッとやるのが一番ですが、あいにくそんなものは持っていませんでした。(…いや、口の中にあるんですが、どんなに自分を殺すことに強い意志があっても使いたくありませんでした。)

雑草が伸びた地面の中に、見つけてくれとでも言っていたかのようにナイフを見つけました。

やっぱり自分は今ここで死ぬのが一番いいと、神様が言っているのかなと思いました。

普通だったらすごくドキドキする場面ですが、夜からずっと心臓がバクバクなので全く何も感じてないように錯覚してました。ナイフを、そうだな、いっそ腫れてぼやけて鬱陶しい目にでも……。


すごく痛かったです。(当たり前ですね)

致命傷にならないのは知ってましたが、すごい量の血が出ればそのうち死ぬと思いました。

ずっと痛くてじわじわと苦しむのが、今の自分には相応しいだろう。

意識が霞む中でも、誰の声も聞こえずただ挙げるとすれば秋の朝に鳥が歌っていました。





目が覚めるとは思ってませんでした。絶対死ぬと思ってました。

ワープがなななんと成功してしまったのです。

どうやらここは森の中みたいです。……空がとっても広い気がするなぁ…もしや時代も越えちゃった?…なんだか自分の体も少し幼くなってる?

…成功する時のことなんて考えてなかった。

とりあえず、成功したからにはここで生きるしかないのです。(未来人として?)

しかし、真面目なハナシで本当に昔に来てしまってたら、ところによるけど殺されるかもしれない…?!今の服装だって絶対変に思われる!!!

せっかく生きれたんだ、殺されてたまるか!!!とりあえず、周りを警戒してこの森を探ろう……。



目が覚めるとは思ってませんでした。絶対死ぬと思ってました。

片方の目はダメになってるみたいですが、普通に動けてしまうのです。

悪魔とかの類いは不死身……ということを思い出しました。自分が普通でなくなってしまったことを実感しました。神様はここで死ね!ではなく罪を背負って苦しんで生きろ!って言ってるみたいです。

とにかく、もう今からどうすれはいいんだろう……意識が無かった時間は長くて次の日になっているのか、短くてまだ同じ日なのか、昼になっているようです。

かぼちゃを運んでいたり、祭りの準備をしていた光景を思い出したら、また泣きそうになりました。しかし片方の目はいっそう痛むだけで涙は出ませんでした……。

ごめんなさい……

懺悔をかれこれの言葉を、呪文のように頭の中に充満させて、いや、いろいろな重みを噛み締めながら行く場所を見つけるために歩き出しました。彼女にはどう思われてるだろう、今。半分しか出なくなった涙を流すのは、いいことなのか悪いことなのかわからなくなっていました。

途中見かけた川に映った自分が、やけに美形になっていても全く嬉しくありませんでした。

悪魔とかの類いは……




森の中を警戒しながら歩いていると、何やら古い家らしきものを見つけました。

(時代が時代ですから、どんなものも古く見えるんですが「年季が入った」という意味です。)雑草の海を掻き分けておそるおそるドアに触れてみると、少しだけ錆びてるようでしたが簡単に開きました。中は、埃を被って軋んだ感じでしたが危ないというほどではありません。

中から、今がどのくらいの時代なのかわかるものが見つけられるかも。家具にマークが彫られてたりしてないか、戸棚から何か出てこないか。少し調べればわかりました。そこそこ昔、ってところです。(いわゆる中世ですね)

ここは森のなかにぽつんとある家ですから、なにか曰く付きかもしれませんね。

変な役人とかが来たら怖いので、家の周りにはバリアを張っておきました。

(唐突すぎるって?え?こんなのテクニカルな未来じゃ当たり前のことだよ……)

(ちなみに生活必需ぐらいのものなら誰でもマイクロ化して持ち歩いてるよ)

しばらくは、ここでひとりで静かに過ごしてみよう………。




ずっと歩いていても仕方がない気がしてきたので、一旦足を止めました。どのくらい遠くまで来たんだろう。何回頭の中で謝ったのだろう………彼女はなんて言うか、何パターン考えただろう……本当に。お腹は空いているし、体の痛いところは痛いし、死なないって大変だな…と思いました。

立ち止まって辺りを見ていると、意外と景色は広がっていました。

そして、廃墟になった農家のような場所も見つけました。廃墟とはいえ、家に入るのはすごく悪いことをするような気がしたので、建物の半分が壊れていて侵入してる感が薄い小屋のところで休みました。気づいたら、随分深く眠っていたみたいです。




古い家(オールドハウスと名付けた)に住み着いてから1週間ぐらいの経ちました。

ひとりってしんどい。

静かに過ごす、ってたって何にも無いのです。まぁ、最初は家の中を探検とかできましたけど長くは続きません。ひとりじゃろくに遊ぶこともできないし、話し相手もいないし…………。

この時代の人を見るのはちょっと怖いけど、楽しみな感じもある!全身にバリアを張って(これも未来じゃ当たり前だって!!!)その辺をうろつくことにしました。ドラえもんとか江藤モーリ氏が「過去で遊びまわってはいけない!!」って言っていた気がしますが、そんなの知らんね!自分の行動で何か変わるのも、それも必然だ!!自分がこうして過去にいることだってお天道様は知っているのよ〜〜!!!


野菜が並んだマーケットとか、職人さんの工場とか見るのはすごく楽しかったです。

ついでにお城にも入ろうかと思いましたが、いくらバリアがあってもギロチンを言い渡されるのは怖いのでやめておきました。

空がオレンジになってきたので帰ろうと思った時、少し遠くの方に寂しい壊れた家のようなものを見つけました。夕方の肌寒さを感じながらも、なかなか見晴らしが良さそうなところだったのでそこまで歩いてみました。

見晴らしが良いところでした。それに、自分が知っている空より何倍も星が見えて綺麗でした。未来人環境破壊してたんだな〜〜…(まだ暗くない紫がかった空に見える星っていいよね)


それなりに景色も楽しんだので、帰ろうと思いました。

が、見つけたのも偶然?壊れた小屋ところで死んでるひとを見つけました。


近づいて確認したら死んでませんでした。寝てるみたいです。

いや、でも今確認するために肩を叩いたので起きました。


「ヒイゥッ?!」(情けない声)

死んでるひと(死んでない)はすごくびっくりしたんだか変な声を出して顔を上げました。

「うわ死んでなかった!!!」

「だ、誰ですか」

少年ってほど幼くないけど、男の人っていうには随分華奢な感じのひとでした。

それよりかなり痛そうな左目がインパクトがありましたが、こういうのには触れないのがマナーだ…………。

壊れた小屋で死んだように眠っていた…………こいつはワケありの香りがするぜ…………。

童話ならここは優しく温かいスープでも飲ませるのが定番ですが、あいにく持ってませんでした。それに、めちゃくちゃ警戒されてるんだかかなり肩に力を入れてて顔も張り詰めたろうな表情をしてます。


「誰ですか…………」

「誰だと思う?(そういえばなんて名乗ればいいんだろう?)

ていうかそっちこそ誰?」

「えぇ…………(なんて名乗ればいいんだろう…)」


「キミはすごいワケありと見た」

「そ、そうですか」

「そうだよ」


「……………」

「…………」



突然変な人に声をかけられてどうしよう。

少女ってほど幼くないけど、女の人っていうにはまだまだ……ていうか、同じぐらいの歳かもしれない。

役人?だとしたらきっと貧乏な人だと思われて、スラムとかに住むことにされる?

それにしては馴れ馴れしい人だな…………。

「何しにここに来たんですか?」

「暇潰し」

「暇潰し…………」


「さ、さてはあなたもワケありだったり」

「あなたも?キミはワケありなんだな?」

「(しまった)」

「そう、とにかく今話し相手が欲しかったのだよ!キミがヤバいひとだったらすぐ野に帰してあげるから、とにかく我が家に来てよ〜〜!!」

「わ、我が家。」



この人が普通じゃないのは少しわかった…………。

自分だって普通じゃないんだ。普通じゃない同士仲良くするってことなのか…………。

とりあえず付いて行ってもいいかもしれない…………。


…………付いて行ってみることを伝える前に、既に手を引かれて走らさせていた。




最後まで読んでくれてありがとう。感想送ってもらえたら泣いて喜んじゃうよ。

[https://odaibako.net

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