15.
扉の奥から、鉄を打つ音が鳴り響く中、僕は壁側の椅子に座って本を読んでいた。
救えなかった物語。
とある所に旅人がいた。
旅人は4つの力を持ち、黒く細長い片刃剣を持っていた。
旅人は世界旅をして、様々な物を見ていた。
旅人が適当に旅をしていて、途中の村を通った時、預言者は言った。
『私の言葉を無理に信じなくていい、もう少しで世界に闇が立ち込める。汝にのみそれを晴らす事が出来る、しかしまだそなたには足りていない闇が来るまでに…はやく…』
そこまで言った所で突然、倒れた。
すぐさま近寄って肌を触った時には既に冷えていて、その預言者は死んだらしい。
旅人は村の人に預言者の事を聞いて回ると、村人は口を揃えて言った。『あの預言者様の予言は絶対当たる、いいことも、悪い事も全て。でもあの人の予言のお陰でここまで生きてこれた』と。
旅人はまた旅を続けた。
次に着いたのは国。
その国は聖剣国と呼ばれ、聖剣が街の中心に刺さっている事で有名になった国。その国ではない毎日の様に聖剣を抜こうとする者が居た、しかし、その剣を抜く手段は引き抜く、唯それだけだと思われて居た。
刺した者の名前すら伝わる事のなかった剣。
旅人はその剣を見た途端その剣に魅力の様なものを感じて居たらしい。旅人も同じ様に引き抜くのだが、何に気を狂ったのか刃を握り、手から血を垂らしながら引き抜いた。
聖剣が抜けた事に喜ぶ者と、驚く者、そして、軽蔑する者が居た。
それから剣を抜いた旅人の噂は広がり、国王まで届いた。
次の日、旅人は王に呼び出され、剣を差し出すように命じた。
旅人は再度その剣を床に刺し、王の元を後にしようとした。
王はすぐさま剣を抜こうとするが、いつまでも硬く、重い剣はビクともしなかった。王は旅人を捉えさせようとするが、兵が近付いた途端、ばたりと糸が切れたように全員倒れてしまった。
残るのは旅人の周囲に広がっている稲妻。
王はその旅人が去るのを見ているしか無かったそうだ。
それでも、鞘の中に眠る剣を抜いたところを王ですら見た事が無かった。
その後、旅人が聖剣を持ってない事を知った人々は、段々と王への信頼を失って行った。
そんな中、旅人はまた、別の国へ旅を続けました、その先は南端にある国。
その頃南端の国では灼熱の中、鉄を打ち、その出来栄えを競う大会が行われ、其処に完全と言った程の出来栄えの剣が1本存在していた。
その剣は、薄く、両刃の魔剣。後に神鉄剣と呼ばれる物として王の持つ剣になる。
旅人は、その国で、歩き回り、その剣を作った人を探した。
色々な場所に行き、色々な人に場所を聞いたりする事によってようやくたどり着いたのは一軒の小さな家。
その家を訪ねると、『お前にあの剣は売らん』と言い追い返されたが、新しく剣を打って欲しいと告げ続けたそうです。
何回も告げるうちに、相手は折れ、遂に剣を打ってくれる事になり、単純に壊れにくいだけの剣を打ったそうです。
旅人は壊れにくい剣に喜び、試し斬りと称して、その剣に雷を帯びさせ、強く木を斬り付けました。
斬り付けられた木粉々に切り崩れ、剣は過剰な威力に割れ、割れた破片ですら溶けていた。
その事に剣を作った人はもっと壊れない剣を作り上げたそうです。
新たな剣を手に入れた旅人は、お礼として、黒い石のような物を作った人へ渡し、その国から去ったそうです。
その黒い石のような物は、硬すぎて使い物にならないと判断した金属でした。
それから、旅人が向かった先は色々な村や町でした。
立ち寄っては、救って行きました。
最後に寄ったのはどの国からも離れている国でした。
その国は最も恐ろしいと呼ばれ、色々な闇の総称…闇王によって作られ、闇に埋もれた様々な人種がいました。
闇王は人の持つ闇を培養し、この国に住み着かせていました。
それによって伝えられていた言葉は、全ての闇を司る者と言う名前だったそうです。
しかし、その国は既に無くなっていました。
いえ、その言葉の通り何も無かったかのように消えていました。
旅人はため息を驚き、周りを見渡すと、段々、空が薄暗くなり、闇に覆い隠されました。
しかし、聖剣と呼ばれた物のある場所では、光が闇の侵入を防いでいたそうです。




