14.
ゲームが始まってまだ1日目の出来事…。
全ての人が同じ国で始まった事によって、この国周辺のモンスターが粗方狩られてしまった。
この世界では魔物と呼ばれる物が大気中の魔力によって出来る。
その怪物から身を守るには力を手に入れる…もしくは集まり、他人に守られる、他人を犠牲にするしかない。
僕は力を手に入れることができなかった…いや、力を持たない事を選んだ。
人が多い…周りがうるさくて聞き取れないけど、このまま進めばいいらしい。広場に着いた所で周りの人の足が止まった。段々と声が小さくなる中、演説の様な声が響き渡る。
「使徒様、ようこそいらっしゃいました。我はこの国、タルテンの王、アーテス・タルターティル。|管理神(製作者)アストラネス様の信託により、この場を設けさせていただいた。我々はそなた等を縛る事はしない。この世界は生きている。そなた等をこの世界で生きる手助けをさせていただきたい」
「その為にそなた等の町を準備した。その町でそなた等の自由に暮らしてほしい。この国に残るのもよしとする」
「最後に、そなた等へ支援をしよう。兵から受け取っておくがいい」
突然枠が出現し、文字が表示される。
『銀貨3枚、銅貨20枚が所持金に追加されました』
『重要アイテム 使徒の身分証が追加されました』
文字に意識が行ったうちに国王を名乗る人は去って行った様だ。
さて、徐々に広場から散らばって行くけど、僕は如何しようかな。
「ねぇ、そこの君、僕とパーティを組まないかい?」
生きている世界と言ってましたし、第2の現実的な物なのでしょう、であれば、現実同様のことが出来そうですね。
「ねぇ?聞いてる?」
地図にはこの国の南東側にマーカーが付いてる。多分これが言っていた町だろう。
「おーい?」
幸いある程度のお金はある、働くか、戦うか、売るかですね。
まず、商売の知識を持っていない私に商売という選択肢はない。
次に労働。した事のない事は避けた方が良さそうでもありそうです。
最後に戦闘。これが1番危ないけど、最も効率の良い方法です。
「えぇ、なんで無視するのさ…」
今から行っても邪魔になりそうだし、適当に歩き回ってましょうか。
後ろを振り向いたら落ち込んで床に座り、のの字を書いていた。
なんだったんだろう?
歩き初めて暫く経った所で、金属を打つ様な音が聞こえてきた。
音の聞こえる店に寄ってみる。
「すみません」
…。
相変わらず金属を打つ音が聞こえるだけだ。
カウンターと、その奥に扉があるだけの殺風景な部屋そこへ響く金槌の音。なんだか不気味な気がした。
仕方なく、声は届きそうに無いので暫く待った所で、打つ音が止まる。
「なんだ…?」
出てきたのは筋肉質な肉体を持った黒人の様な人だった。
切る武器と言えば刀かな…。
「刀を打って欲しいです」
「刀?なんだそりゃ」
「切るための武器です」
「剣があるじゃないか」
「剣は刺す武器、切ると耐久性落ちる」
「それで、武器を持って如何するんだ?」
「生き延びます」
「そうか…誰だか知らねえが、俺は刀と言う物を知らねぇ」
「刀…片刃剣…ならわかる?」
「片方にしか刃がない剣だろ?扱いが難し過ぎて使い物にならんよ」
「そう、でも上手く作れば剣よりも切りやすい」
「如何してだ?」
「軽い、丈夫、長い」
「そうか、わかった…刀とやらの打ち方を教えてくれ。俺だって職人の端くれだ、お前の望むものを作ってやろう」
「ありがとう」
「あと、金はいらん」
「まず簡単に説明しましょう、刀は軸となる鉄と、刃となる鉄を作り、頑丈にします。これは剣でもたまにあるでしょう。刀は、切る時の耐久性を高める為に、緩やかに曲げる。此れだけ」
「それだけなのか?」
「はい」
「刃を曲げたら収められ無いんじゃ?」
「いえ、鞘も曲げ、どっちの曲がりも均等にしたらきっちり収めれる」
「そうか…分かった暫く待っててくれ」
脳に入力されたデータを言葉に出していただけの作業は僕には容易い。




