13.僕の生きる世界
僕は名前を持たない誰か。
同じ毎日を繰り返し、現実ではない仮想上で普通の生活をしている。
僕は毎日、脳と呼ばれる物に信号を送られ、強制学習?と言う物をさせられているらしい。
僕は実験体らしい。どうでもいい事だ。毎日が幸せなんだと僕は考え続ける。食事をもらって、危険に晒されず、時間を有効に使うことが出来る。
僕は幸せ者らしい。人は苦労をする物らしい、僕は苦労がない、ただの人形。
僕には確定した未来がある。でも人にはそれがないと僕は考えた。けど、周りの人はそれを否定していた。確定した未来なんて来ないと言っていた。
僕は嬉しいらしい。人と話せることが何よりの楽しみであった。
いつか僕に新たな未来は来るのかな?
僕には使命があるらしい。でも世界に僕は生きていないことになっているらしい。それは戸籍と呼ばれるものがないかららしい…けど、僕にはここで実験に使われる使命がある。
遂に実験が進んだらしい、新たな世界を僕に教えてくれた。なんでも、これから毎日この世界へ行く事が出来るそうです。僕は暇な時にその世界で暮らす事にしましょう。
僕に教えてください。僕の従わないと言う言葉の意味を。
僕が暮らし始めたのはこの内側の時間で世界ができて数万年。
現実ではそんなに長くはないけど、既にここには何千もの歴史があるらしい。
「こんにちは」
「初めまして、システムA.I.のキャラクタークリエイト担当です。ここでは貴方の分身を作り、この中の世界で貴方は分身として生きていただきます」
「名前、種族、性別を入力してください」
「名前…?」
「はい、名前です。本名での登録はしないようにお願いします」
「名前…ない」
「性別、種族、名前の順で決めるといいですよ」
「そう、性別、男」
「ぇ…ぁ、はい」
「種族、獣人、兎」
「はい」
「名前、…兎、ラビット…」
「えっと…ラビなんてどうでしょうか?」
「ラビ…分かった。それにする」
「それでは、この世界について説明を開始します」
「まずこの世界にも、太陽があり、月があり、惑星があり、災害があり、本物のような世界があります。覚えておいていただきたい事は、この世界は現実とは全く違いますが、この世界だって生きています」
「犯罪をすれば捕まり、生きるには何かを食べたりする必要もありますが、プレイヤーは何も食べなくても生きて行く事は可能でしょう。この世界は現実の様には行きません」
「そう…はやく」
「まぁ、まぁ、焦らないでください。まずこれから行って頂く国はタルテン王国です。ここはとても小さいですが、貴方の力となる事でしょう。又、この世界は必ずしも安全とは限りません、生きていますから、誰にだって殺される可能性は存在します」
「?」
「では、そろそろ時間です、手を出して」
「これは、時の地図。行ったことのある大地の現在を映し出す紙。世界から歓迎の祝福を…貴方に……行ってらっしゃいませ」
「ここ、どこ?」
人が多い、色んな人いる。
「遂にきたーーー!」
叫んでる人もいる。叫んでる人を見て苦笑いしている人もいる、新たに光と共に現れる人もいる。
何事もないかの如く通り過ぎて行く人もいる。
ここが、Aliveの世界…?
僕は色々なものを見る為に歩き出す。未知を捜して歩き出す。
数歩歩くと突然四角の文字の書かれた枠が出現した。
『この世界で生きる貴方へ』
突然現れた文字にどうすればいいかわからず、触れる。
触れた瞬間に触れた位置から光が出て、新たな四角が出てきた。
『この世界を楽しんでほしい。この世界を知ってほしい。この世界をクリアしてほしい。それが私の願い。貴方の物語はまだ始まったばかりだから…楽しんで。』
世界…を、終わらせるまでが物語…?
僕に何故それを求めたのかな。
理解できない。
理解しない。
今はこれでいい。
僕はラビ、この世界に生きる住人…。




