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見習い魔女の受難  作者: あろん*
小さな魔女の誕生
7/12

白紙の先

アクセス数とブクマ増加感謝!

「うぅ・・・ふぐぅ・・・うぅぅぅ・・・・。」


 もう嫌だ、理不尽すぎて溢れた涙が止まらない。だって何も書いて無いんだよ?

 そんなのってないよ、文字が違って読めないとかそんなの生温い予想だったよ。そもそも読む所が無かったよ。


 ある程度は覚悟していた、どうせなにかあるはずだとは思っていた。けれどまさかあげると言われて白紙のページを貰うとは思わなかった。フィルはきっと悪くない、今も本を抱えて座り込んでしまっている私に心配そうにずっと声をかけてくれているけれど、私の耳にはその言葉は届かない。私はまるでその現状から逃げるように意識を手放した。





「・・・ィア。ティア。起きて、ティア。」


 心配そうに私を呼ぶ声がする、涙で瞼が腫れぼったくて眼が開かないけれどこの声は間違いなく母の声だ。


「母さん?ごめんね、眼が開かないの。」


「無事だったのね!よかったわ・・。あなたの叫び声や泣き声が何度も響いていたのにそれがいきなりプッツリ途切れて、暫く心配して様子を窺っていたのだけれど何の物音もしなくなってしまって、本当に身が凍る思いだったわ、偶然扉が開いてあなたが倒れているのが見えたらもう堪え切れなくなってしまったの。ごめんなさいティア、もしこれで効果が失われていたら私のせいだわ。」


「大丈夫よ、かあさんほらこれ見て。調薬師なんだって。ちょっと喜び過ぎて倒れちゃった。」



 そう言って無理して笑って手首を見せる、倒れた理由にかなり無理があるけれど、まさか正体不明の動物にまともじゃない職を授かってしまって気を失っただなんて言ったら、今度は母が気絶してしまう可能性がある、とてもじゃないけれど伝えられない。



「調薬師?おめでとうティア、生産職の中でも冒険者に重宝される職ね。ポーションが作れるようになれば、冒険者ギルドに住み込みで雇ってもらえるって聞くわ!あぁごめんなさい、いま布と冷たいお水を持って来るわ、まぁまぁこんなに眼が腫れて・・・」


そういうと桶を持って母は家から出て行った、わざわざ井戸まで汲みに行ってくれるのだろう、母も動転していたのか倒れた理由にあまり深く突っ込まれないでホッとした。


「フィル?どこかにいる?ごめんなさい、心配かけてしまって・・・。」


手首に浮かんだ紋章があの出来事を夢じゃないとはっきりさせてくれる、それを付けてくれたフィルを呼んでみる。彼もきっと心配しているはずだ、気を失う前にずっと声を掛けてくれていた、はっきりとしない錯乱状態の中でもそれはきちんと覚えている。



「いるよ、一体どうしたって言うんだいティア。最初のページを開くなりいきなり泣き出してしまって、僕が何を言っても聴きとってくれないし。あれじゃ見た目通りの幼子だよ。」



眼が腫れて瞼が良く上がらないので姿を確認する事は出来ないがどうやらすぐそばにいるらしい。

それにしたって酷い言い草だ、あんなに尻尾をタシタシと机にうちつけて確認してみて!なんて白紙の本を渡したのはフィルだって言うのに。



「そんな言い方は酷い、フィルがあんなに自信たっぷりに確認して何て言って白紙の本を渡すから!」


「白紙?ティアは一体何を言っているんだい?きちんと見たのかい?」


フィルの声にはあまり抑揚が無い表情もほとんど変わらない、その分感情がその尻尾にでていたり耳がピコピコ動いていたり動作に出ているので何となくわかるのだが今のカティアは目が塞がっているのでその声が凄くバカにした冷たいものに感じた。


「気絶するほど見たわ!それとも何!?どこかのおとぎ話みたいにバカには見えない文字だとでも言うの!バカにしないでよ!!」


「ティア、そんなに興奮しないでさっき目を覚ましたばかりなんだ、また倒れちゃうよ。ごめんって僕もまさかそんなにティアの適性技量が高いだなんて思わなかったんだよ。ハズレじゃないんだむしろ大当たりなんだ。」


「大当たり?そうね、何も書いて無いだなんて大当たりよね、そう考えると魔女も大当たりなのかしら?だって私にとってはなにも良い事じゃないものきっと大当たりなのね。」


「だから、ちーがーうーーーって!説明しなかった僕が悪かったよ全面的に謝るから聴いてよ。ページなんだよ、下位の物を飛ばしちゃうと見づらくなるから出た物以下の等級があると自動でそのページ分余白が出来るようになってるんだ。」



「ページ・・・・?」


そういえばカティアは最初のページを捲ったところで白紙に絶望してその先を確認してはいない、普通本はそうと知ってはいない限りは1枚目から見るし書く時は何か意図が無ければ1枚目から書き始める、そう思い込んでしまっていたのだ。


「そう、多分等級が少し高い物を引いたんだそれでその分がずれて何も書いて無いページがティアの目に入ってしまったんだよ。僕は何が出たのかまではわからない、けれどきちんと本に記憶が宿ったのはわかるんだ。眼が開いたらもう一度よく確認してみてごらん。」


「そう・・だったの。ごめんねフィル怒鳴ったりなんてして。うぅ、恥ずかしい。勘違いして当たり散らして・・・。でも大丈夫?これで読めない文字で書いてあるとか言わないでよ?」


「それは大丈夫、安心してちゃんと人族の言葉で書いてあるよ、それにさっき言ったでしょう、この件に関しては全面的に謝るって。きちんと説明しなかった僕が悪かったよティア。さ、水が来た見たいだよ。僕の姿は見えなくなっているからきちんと眼の腫れを取って今日はしっかり休むんだ。ティアの考えている以上に君の体は疲弊しているよ、なにが取れたかは明日ゆっくり話そう。」



そうフィルが言うと玄関から桶をもった母が戻ってきた。

冷たい水が入っている桶に布を浸して固く絞ってからカティアに手渡してくれた、冷たくて気持ちの良いそれを眼に当てて息を吐く。今日一日だけで慌てて泣いて怒って、明日は声が枯れていそうである。


「暫く顔に当てて横になっていなさい、全くもう倒れるくらい興奮して。この村に調薬師はいないから教われる事は無いけれどどうするの?」


「うーん、まだはっきり分からないけれど。いろいろ模索してみるつもり、大丈夫だよ3カ月もあるんだもの何とでもなるって!でもきっとお仕事に行く余裕は暫くなくなっちゃうけれど大丈夫かな?」



「ええ、それは平気よ。ロイドさんもチビの分の仕事くらい任せろって言ってたわ。」



くそー、人より少し小さいのもロイドさんが私の分の仕事くらい軽くこなしてしまうのも事実だから何も言えない、ここは素直に感謝して任せてフィルからいろいろ聞いて来る日に備えよう・・・。


魔女がどんなものなのかはまだ正直よくわかって無い、けれど少ない時間しか触れ合っていないフィルは少なくとも嘘を付けるようには見えない。というかあの耳と尻尾はどう見ても無意識に動いている。

ちょっと小憎らしいけれどあんなに可愛い生き物がくっついてくるのなら魔女も悪くないのかもしれない。


こうしてカティアの思考は順調にマヒしていくのだった。

ハイハイ予想通り予想通りなテンプレでした。

カティアちゃんがヒスり過ぎてて怖い。

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