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見習い魔女の受難  作者: あろん*
小さな魔女の誕生
4/12

神託紙の使用

「ただいま!かあさん、まずいよ!野垂れ死にする可能性がまた上がったよ!!」


「おかえりなさい、ロイドさんにはちゃんとお礼を言ってきたの?」


 勢い良くドアを開けたカティアの言うことなどまるで気にしていないかのように、ステラはお茶を飲みながらそう返した。そそっかしい娘の主語をすっ飛ばして言いたいことだけど伝えようとする癖をいちいち全うに相手にしていると、まったく話が進まなくなってしまうのでとりあえず言いたいことを言っておくのだ。


「あ、うん。落ち着くまで仕事は気にしなくていいって。それと村の皆も反対しないだろうって言ってくれた。それでねかあさん、帰リ道にニークにあってね、いろいろな事を聞いたらもうすぐにでも私も頑張らないとまずいなって思ってね―――。」


「そう、たしかニークは狩人だったわね・・・。ティアの選ぶ先がわからなかったから具体的には教えなかったけれど、大方は聞いたとおりのスタートになるわ。職によって最低限必要な事柄はかわるし、それよりも優先して取らなければいけないものもある、無駄に使ってしまうので取ってはいけないものなんていうのもあるわ。そういったことをギフトを得たらまず先達の方に教わるの。無駄な情報を教えると悪影響があるから詳しくはきちんとギフトが決まるまでは教えてはいけないの。」


 ニークもサボるものが出るなど、そんな様な事をいっていたが基本的にきちんとギフトを得るまでは情報は秘匿されているようだ、母が詳しく説明せずにいるのはそういった決まりを守らなければいけない何かがあるのだろう。


「さぁティア、あなたまずは着替えてらっしゃい。そんな恰好じゃ落ち着かないでしょう、それからお腹減ったわよね?食事の用意はしてしまっていい?」


 そういえば朝から慌てて家を出たので何も食べていない、色々あり過ぎてお腹が減っている事にすら気づいていなかったけれど、気づいてしまえばもうだめだ。お腹がキューキュー食事を求めて来る。それにお鍋からしているであろうシチューの良い匂いが私を呼んでいる。

 ギフトの事は早く解決すべきなのだろうけど、今はまずご飯である。古来から腹が減っては何とやらというありがたい言葉があるのだ。


「うん、食べる!それじゃぁまず着替えて来るよ。あ!シチューのソーセージは多めでお願いします!」


 部屋に戻って乱れた布団を綺麗に直してから、ツナギのようなオーバーオールのような作業着を脱ぎ簡素なシャツと7分丈でダボっとしたズボンをはいてサッシュを巻きつける。

 スカートは捲れたりで動きにくくて苦手なカティアは大体いつも部屋ではこの格好である。外に行く時はここに熊の毛皮の腰巻と厚手の生地で織ったベストを羽織っていて髪を纏めて結い上げていると遠目にはまるで少年のような格好にうつる。


「いいにおーい、母さん私何かする事ある?」


「大丈夫よ、座ってなさいもうできるから。」


 はーいと椅子に腰かけてテーブルに置かれた丸パンをナイフで切っていくつかお皿に盛っておく、そうこうしているうちに母が湯気を立てたシチューを持って来てくれた。

 牛の乳を使った白いシチューは私の我儘な要望に応えてソーセージが多めに盛られていた、いただきまーす。

 パンが固い、私は噛む力があまり強くないのに沢山頬張るのでよく頬が膨らんでいるらしい。パンが固くて飲みこめないのでシチューで柔らかくしようとして更に頬が膨らむ。自分で自分の顔は見えないのでよくわからないのだがしょっちゅう母からもう少しゆっくり食べろと怒られる。



「またあなたは、いつもゆっくり食べなさいって言っているでしょう!まぁいいわ、食べながらでいいから聞いてちょうだい。さっきの様子だとすぐにギフトを取得する方を選んだって事でいいのかしら?」


「そうしようかと思う。慌てて取って少しでも職に馴染んでおかないと凄くマズイ感じがするんだ。というか結局リスクとかそういうの考えなくても私に残されている道筋はもうこれしかないんだと思う。後はどこまでリスクを乗り越えて行けるかって事。それ以外は玩具だったり、奴隷だったり、野垂れ死にだったり、最低な結末ばかりだから。」


 明るくもぐもぐしながら結構暗い未来の話をしていると思う。でも本当に道はこれしかないと思う、選択肢はあるようで実際は無い。リスクを甘んじて受けて乗り越えないと私の未来はお先真っ暗なのである。


「わかったわ、なら神託紙を渡すわね。ギフトの取得は部屋で一人で行う事、決まるまでは他人との接触は絶つ事、第三者の強制力の排斥を少しでも可能にするために、そうしなければ効果が無くなると言われているわ。それと使い方ね。この紙を束ねている紐に針が付いているわ、まずはそこにあなたの血を付けなさい。そうして出た紙から望む職を見つけて決まったらそこに針を刺すの。―――それと、万が一針に血を付けても何も起こらなかった場合はまだあなたが成人していないということになるわ。そのときは―――。」



「大丈夫、私はどんな結果になっても後悔はしないよ。かあさんに無理をさせたり心配かけちゃってるど私は大丈夫。いろいろありがとう、かあさん。私頑張って来る!」


 母から紐で束ねられた神託紙を受け取って部屋にもどって机に向かって一人になれば、押し殺していた負の感情が少しだけ滲み出してくる。

 もし何もでなかったら私は奴隷になる。役に立たない職ばかりならきっと旅もままならず朽ち果てる。怖い、怖い、結果が出ていしまうのが怖い、でもやらないといけない、やらなければいけない。


 奮い立って神託紙の紐を解くと見慣れない紋様とまったく判読できない文字がそこには書いてある、端から紙に繋がった紐の先には母が言っていたように画鋲のような物が付いていた。


「この針に血を付けるんだよね・・・。要するに何処かに刺せって事なのかな。いやだなぁー絶対に痛い奴じゃんこれ。」


 親切に針までくっつけてくれるのはありがたいのだけれど何故血なのか、唾でもいいじゃない。そんな悪態をつきながら私は針を人差し指に刺す。

 当たり前の事だが針を刺せば痛い、特に指先は神経が集まっている箇所なので痛い。ただ針に血を付けるだけで良いのであれば耳に刺すのが実は一番痛くなかったりする。


「痛い・・・、これで何も変化がなければほんともう私は泣くよ?わ、やった光り出した!私成人はしてたのね、これで奴隷ルートは消えた!」


 自分ですら疑うような成長の遅さで本当に成人しているか、そこが一番不安だったカティアは心底ホッとしていた、職はハズレばかりでも何とか何とか生きていける最低狩人でもとって野宿生活をすればいいのだ一番の難所は越えた、表面がほのかに輝いていた神託紙の表光が止むとそこにあった判読不能な紋様と文字は、自分が普段読んでいる文字へと変化してはいなかった。









「なにこれ・・・絶対に読めそうにない文字なんだけど・・・。なんの間違いなのよこれぇ・・・。」


 変化はしている変化はしているのだが、これはこのあたりで使われている文字では無い、思わず机に突っ伏してしまった、涙が出て来る。

 神様は私にどれだけ意地悪がしたいんだろう、なにも悪い事なんてしていないのにこの仕打ちはあんまりすぎる。

 誰かに相談しようにも人と会うと効果が切れるらしい、泣いてなんていられない読めない文字だろうと決めるのは自分しかいない。

 グイッと涙をぬぐって紙を見つめる。


 短い文字の後に1行から2行程の文が続くそれが計9個。

 つまり9個の職が選択肢としてはあるのだろう、まぁ私には読めないのだが。


 読めない文字とにらめっこしていると短い上段の分にいくつかの共通点がある事がわかった。職が書いてあるであろう一番最後の文字が同じ文字になっているのだ。

 語尾が同じ職が6個もある・・私は骨と革の細工師の適性は多分あるんだとおもう。そう考えると、この6つの中の2つは革工師と骨工師と過程できる。

 剣士や戦士には別の字が使われるから、残りの4つにはなんとか師と入る職が並ぶのだろう。生産系の職は徒弟からのスタートでコネがなくては厳しい扱いとなる。

 つまりこの同じ文字で並ぶ6つは無しだ。そうすると残りは3つ。

 うーん、同じような法則で何かないものかと目で追っていくと最後の職とその前の職の頭文字が同じではないか、これはもう最後のこれしかない!


 私は追いつめられて開いたそれが、追い打ちをかけるように出して来た読めない言葉にちょっとした共通点を見つけて良い気になっていた。

 どうせ読めないのだから、共通点があってしかもそれが珍しい形で出ている、選んでしまう私の気持ちをわかって欲しい。


 悩んでいたって読めない物は読めない、そうやって自分に言い聞かせて、私は勢いよく血のうっすら着いた針をそこに突き刺すのだった。




誤字脱字が多い・・・。

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