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見習い魔女の受難  作者: あろん*
小さな魔女の誕生
11/12

採取!

仕事が忙しくて筆が進まない・・・。

読んでくださる方が少しでもいる限り更新は頑張ります。

 朝食のパンと塩味の野菜スープをちょっとだけ多めに食べて、お弁当代わりにパンをひとつ布にくるんで背負いカバンに詰め込む。

 そのほかに水の入った皮袋と植物を括る紐や麻袋、革の手袋なども入れる、せっかく湖の方まで行くので採れそうな食材などがあれば採取するつもりだ、いくら牧舎で働かなくて良いとはいえ自分のための素材集めだけしかしないというのは心苦しい。

 最後にキャスケット帽という頭を入れる部分がかなり大きめになっている帽子に、髪の毛を纏めて詰め込み被ってしまえば準備は完了だ。

 邪魔で切りたいと母に相談した際に教わったことなのだが、長く綺麗な髪の毛は高値で売れるらしくいざという時に使おうと少し邪魔でも大切に伸ばして手入れをしている。



「それじゃぁかあさん行って来るね!」


「いってらっしゃい、今晩色々決まりを教えてあげるから早く帰ってくるんだよ。」


「わかった、早めに戻るようにする」


 家を出る直前に玄関にかけてある弓矢に少し視線をやって、狩りをするわけでもないし荷物になるので置いて行こうと思ったのだがフィルが持っていった方が良いというので仕方なく持ち出す。



「うー、湖まで結構遠いのに荷物が多いよ。フィル半分持ちなさいよ。」


「そうだねー、使い魔としては是非持ってあげたいんだけどねー。残念ながらサイズの問題でそれはできないなー」


 フィルの大きさでは持てない事などわかっていても、肩の上でちょろちょろしているフィルに何となく恨み言を行ってしまう。


「全く役に立たないんだから、使い魔って言ってもたいした事無いのね。」


「それは全くの誤解だよティア、僕の可能性は無限大なんだよー?」


「はいはい、すごい使い魔だもんねフィルはわかってるわ。」


「わかってるようには見えないなー。いいよそんなに言うなら僕の力を教えてあげようか――――。」


「ティアじゃないか、こんなところで何独り言いってるんだ?」


 フィルが何かムキになって肩の上で踏ん反り返って何か言った時に、丁度背後からニークに声をかけられた。


「あ、ニーク。独り言?あそうか、見えないんだったっけ。そんな事よりこれ見て!」


「あ、おい馬鹿!こんな場所で取るんじゃねぇ!」


 そういって手首に巻いた革布の取って見せたのだがニークはちょっと怒ったようにそれをたしなめてきた。


「え?どうして?」


「お前なぁどうしてって・・・、もしかしてティアお前先輩とかから、何も聞いてないのか?」


「うん、昨日授かったばかりだし、私は調薬師なんだけど村にはいないから。」


 あーそうだったのかと顔に手をやって天を仰いだニーク、小さい村では珍しいギフトを得る人などほぼいないのでほぼ確実に村人の先達から常識を教わるのだが、ティアにはそれがいないのだ。

 本来なら母であるステラが教えるべき事なのだが、昨日は気絶してしまったりで慌しくて伝える事がすっぽり頭から抜けてしまったのであろう。

 今朝言っていた決まりを教えてくれるといっていたので今晩には教われるはずだ。


「教える先輩がいないってことは俺が教えちゃってもいいよな?こんなこと誰が教えたって同じだと思うし。」


 そう言ってニヤリと悪い顔をするニーク。


「かあさんに手間かけるのも悪いし、教えてくれるのはありがたいけれど、私は湖の方に採取に行かないといけないの。ニークはそんなに暇なの?」


「昨日あれから狩りにまた出てな、でかいイノシシを仕留めたんだ、獲物が取れすぎて解体が追いつかないって事で狩人組はしばらくは交代で休暇だな。」


「へーすごいじゃん、弓矢でイノシシを狩るなんて!『狙い撃ち』だっけ?」


「それもあるんだけどな。ティアが作った痺れ薬、あれを鏃に塗りこんだのを当てたら一発だった。そうだ、あの薬また作れないか?仲間内でも評判いいんだあれ。」


「役に立ったならよかった。けど材料があれば簡単なんだから自分たちで作ったらいいのに。作り方は教えたはずでしょ?」


「それが、なんかティアの作ったやつのほうが効果が出てる気がするんだよな、な?頼むよまた作ってくれって。」


「んーそれじゃぁ。あれより少し効果が高いの思いついたから、そっちの材料集め手伝ってくれたら作ってあげる。それと、完成品が成功したらそれもわけてあげる。それでどう?」


 イノシシは多少のダメージでは怯まずに突っ込んでくるので基本的には罠で仕留める獲物である。それを自分の作った薬を塗りこんだ矢で撃ち取ったと聞いて嬉しくなる。ついまだ作れるかもはっきりしない新しいレシピを試してみたくなった。


「あれより効果が高いってすごいな。湖の材料集めくらいなら手伝うからそれ作ってみてくれよ。」


「なんとなく思いついただけで、効果がどの位高いかとか本当に全然わからないよ!?」


「そうだねー。あの薬なら熊程度でよければ一滴でも垂らせば数秒も待たずに卒倒するくらいの威力はあるよー。」


 またフィルが爆弾を落とす。それが私にしか聞こえない声で本当によかったと思った。

 一滴で?数秒も待たずに?もうそれは狩りに使っていいような薬ではない。危険物指定の劇薬だ。

 当然、私にはそこまでの効果の物は作れないであろうがそれに近い効果の物が出来てしまった場合は、ニークには秘密にしてもらって今までの物を渡した方が良いであろう。


「それじゃ湖に向かいながらいろいろ教えてやるから向かうか。必要な材料も道すがらあったら採取していこうぜ、それとその弓矢そのまま俺に渡せティア用のサイズだけど、まぁ俺が使った方が威力出るだろ。」


 ニークに弓矢を渡して少し荷物が軽くなり、常識的な決まりを教わりながら湖に向かう。

 なんでも手首に刻まれた模様は見る人間が見れば状況が丸わかりになってしまうものらしく無警戒に他人に見せてはいけないらしい。そのほかにも例えば調薬師ならばそこの決まりに従わなければならず、それを守れない人間は情報の共有などの恩恵に与れないらしい。

 ニークの説明にいちいちフィルが魔女には関係ないねー。と間延びした私にしか聞こえない突っ込みを入れているが、人間の世界に生きている以上覚えておかないといけない事なのでさくっと無視してきちんと聞いておく。

 そんな話をしたり新しい材料にゴワの種が欲しいとか、カエルは勘弁してくれとか、酒を蒸留する用に使っている蒸留器が欲しいなどと話しているうちに湖にたどり着いた。


「それで、ツバタソウをどの位採ればいいんだ?」


「花とかつぼみの部分だけでいいからこの袋いっぱいに欲しい!」


 そういって小さめの麻袋をニークに渡すとニークがうげぇという顔をしたのを私は見逃さなかった、たしかに袋をいっぱいにするには結構な時間がかかるだろう。


「嫌なら私が花を採るから。ニークにはマダラカエルを獲ってきてもらおうかなー!」


「俺、花摘み大好きナンダ!この位ナントモナイ。」


 カエルが大嫌いなニークはカタコトになってそういうと、袋を抱えてそそくさと走って逃げていく。


「まったく、狩人の癖にカエルが嫌いなんて。別にあれくらいなんとも無いじゃない。」


「僕の記憶が正確ならそういうのは女の子の方が嫌がるんだけどなー。」


「毒があるから少し扱いに気をつけないといけないくらいで、私は全然平気ね。おかしいのかしら?」


「どうだろうねー。まー魔女になる上では有利だっていうのは確かだよー。」


「そっか。なら今は良かったって思うことにするわ。さ、マダラカエルを20匹は捕まえるわよー!」


 革手袋を装着して赤いマダラをもった毒々しい生き物を探す。

 20センチほどのマダラガエルは、湖の辺に結構数がいておとなしいので捕まえるのにはそう苦労するものではないのですぐに捕まったのだが、1匹確保して毒袋を入れる容器が無い事に気付いた。普段は専用の皮袋を持ってくるのだけれど急に捕まえる事になったので手持ちに無いのだ。


 とりあえず麻袋に詰め込むのだが、数を集めたら結構な重さになりそうだ。カエルの嫌いなニークは絶対に持ってくれないだろうし、その重さの物を村に持って帰るのごめんである。



「ニークー!何か容器になるようなものないー!?」


 自分だけでわからない事は皆で考える。それが一番だとカエル袋を片手にニークのところにかけていく。

 結局ニークは役に立たず、フィルが見つけた近くに群生している大きくて丈夫なシナの木の葉っぱで包んでから麻袋で持って帰る事案で落ち着いた。


 葉っぱを数枚広げて手際よくカエルの腹に腰から抜いたナイフを突き立て毒袋を抜き出していく。

 数も数えずに適当に捕まえては処理したので、20匹をかなり超えた頃に袋に花を摘んできたニークが戻ってくる。

 死骸は湖にほおりこんでいるので、処理した毒袋だけを手早く葉っぱで包んで紐で縛りつけたら麻袋にしまいこむ。


「ティアー。このくらいでいいかー?」


「おかえり、十分だと思う、ありがとう。パン食べる?」


「それじゃ全然たんねぇ。けど貰う。このあたりどっかに果物か何か食えるものあったっけか?」


 革手袋をはずして背負い袋に入っているパンを半分にしてニークに手渡す。


「どうだったっけな、キノコとかなら生えてそうだけど果物は無かった気がする。」


「そんなら仕方ねぇか、あと素材はゴワの実か確か帰り道に生えてるよな。腹も減ったし、そろそろ帰ろうぜ。」


「今パン食べたじゃない・・・。まぁいいわ、何か食べ物も採りながら帰りましょ。」


 そう言って帰り支度を整え始めたところで肩の上に乗って大人しくしていたフィルがいきなり目の前に飛び降りてきた。


「フィル?どうしたの?」


「ティア、彼に弓矢の用意をさせて。あそこに魔物がいる。」


 いつもの間の抜けた声ではなく警戒を強めたその視線の先の森の中には、血の匂いに釣られて現れたのか緑の子鬼の姿があった。

更新も碌にしていないのに新たに5名のブクマ様。

ありがとう、ありがとう。


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