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見習い魔女の受難  作者: あろん*
小さな魔女の誕生
1/12

受難の始まり

初投稿です、マイペースに書いていきたい思います。

 山の麓の小さな村の小さな広場で、私は今絶賛大ピンチであった。

 朝早くここから一番近い街、ウィンズタウンから派遣された兵隊によってたてられた看板には簡潔に要求だけ書かれていた。


「なによこれーーー、こんなの無理に決まってる!」


 叫ぶ少女と心底同情の目を向ける1組の男女。

 叫んだ少女はカティア、この看板の被害者になるであろう少女で見かけはすこぶる幼い。

 来年には成人だと言うのにその成長は12を数えた時からほぼ変わっておらず140センチ程度の身長と絶壁という主張をする残念な体型であり村の12歳のアンナと並んでいるとむしろカティアの方が幼く見える事すらある。

 あきらかに成長不良でちんちくりんではあるがその顔は非常に整っており闇よりも深く腰まで伸びた黒い髪と瞳は首より上だけを見れば十人中十人は振り返るのではないかと言うほどであるが、童女にそのような視線を向ける人間は少なく人口50人にも満たない小さな村ではどうやっても可愛い妹分や娘・孫ッ子扱いであった。


「ティア落ち着け、冷静になれお前のその格好ならば見逃してもらえるかもしれない。」


「ニークあなたはまたそんなこといって、ティアがこれを見てどんな気持ちになるのかわかるでしょう?」


「わかるけどよぉ、だからといってこれに逆らうのは難しいだろ?だから俺はさ――――」


失礼な事を言われ頭を抱えて座り込んでいた私はニークとロビーナの方を恨みがましい目で見上げた。

ロビーナはニークの婚約者でロビーナの16歳成人と同時に結婚することが決まっている、そのため看板の条件に該当しない。

年齢が近くいつも一緒にいる2人がこの時ばかりは凄く羨ましく見える。


[ステラリアに住む15歳から16歳で婚約している相手のいない者は、ブルタリオ男爵の息子の妻候補としてウィンズタウンまで3カ月以内に出向するように命じる。]


ステラリアとはカティアの住む村の名前でブルタリオは評判の悪い徴税官、ウィンズタウンにいる領主の腰巾着で権力者である。

その息子の定期的な嫁探しと言う名の玩具集めがこの看板の正体であり近くの村で何件も被害が出ている事が伝わってきている、小さな村の少ない人数の被害では大事にはならず、もちろん小さな村では逆らう事など当然できるはずがない。


信じられない内容だがついにステラリアにも白羽の矢が立った。


元々他の村より少し規模の小さいステラリアにはこの条件に該当する年齢の子供は私しかいない。

ロビーナにはニークが居るし、その他の成人していない子では12歳になるアンナちゃん5歳のサムが居るくらいだ。

村で成人している男性で既婚していないのはニークだけであり、近くの村に婚約の打診をする事は以前にそれをして貴族位にいるものを侮辱したとして、厳しい罰を受けた事があり看板が立ってからでは出来ない禁忌となって伝わっている。

こんなもの実際は男爵が圧力をかけただけで何の罪でもないのだろうが起きてしまった事は事実になってしまう。

つまり、私には現状逃げ道がない・・・。

いや、本当に全く無いわけではないが現状でそれをすると間違いなく野たれ死ぬ・・・。


「とにかく、ステラさんに相談した方がいいわ・・・。」



ロビーナが気遣わしげに私の頭を撫でてそう促してくれる。

いつもの子供扱いまっしぐらの行為がこの時には少しだけ救われた気がした。


「うん・・・・。」


そうして私は項垂れながら重い足取りで自宅に歩いて行くのだった。















「困ったことになったねぇ・・・。」


「かあさん、やっぱり私ウィンズタウンに行くしかないかな?」


心の底から嫌だけど、村の為には行くしかない。

そうわかっているから村長である母に仕方ない、そうするしか方法は無いと背中を押してもらって諦めるしかない。

その言葉を確認したくて投げかけた言葉にステラは即答せずただ黙って考え込み始めた。


「・・・・・・・。」


「・・・・・・・。」



暫くの沈黙の後、覚悟を決めたかのようにステラは重く口を開いた。


「ティア・・・。あなたには3つの選択肢があるわ。」


そう言うと母ステラは指を折り暗い顔のまま提案を出し始めた。


「1つ、このまま看板通りにウィンズタウンへ向かう。」


これは最終手段であり選択はありえない、玩具になるとわかっていて向かう人間はまずいない。


私は黙って聞き続け、ステラもこれは確認の為に言っただけなので先を続けた。


「2つ、このまま村から逃げ出す。」


これは私も考えた、結局村にいるから看板に従う必要があるわけで村にいない人間は従う必要なんてない、実際ほかの村では冒険者になるなど理由をつけて逃げた人間がいるらしい。

しかし、今の私ではこの方法をとると真っ先に野たれ死ぬ何せ私にはまだ職業であるギフトが無い。


「かあさんだってわかってるでしょう、そんなの無茶だって・・・。」


ギフトというこの世界の成人が持つ職業を得なければ旅人なんてとても立ち行かない、最低でも攻撃職とされる剣士くらいなければ生きて行くのだって難しい。

贅沢を言えば、荷物持ち(ポーター )や治療師などが望ましい、ポーターは不思議なかばんを持っていて、多くの荷物を持ち運びでき大変重用されるし、治療師も危ない橋を渡らずに街にシートでも敷いて売り出すだけで1年で家が建つほど儲かるらしい人気の職業である。

世の中にはギフトに逆らって生きて行く奇特な人間もいるそうではあるが少なくとも私の周りにはそれで生きて行っている人間はいなかった。

そしてカティアの成人は大体1年後であり出向期限は3カ月である。


黙って頷くステラ、そして最後の1つを聞いてカティアは目を見開くことになる。


「3つ、ルールを破って神託紙を使用する。」


「え・・・・?そんなこと、出来るの?」


神託紙とは子供が生まれると国と神殿から発行されるギフトを付与するための魔導具である。

各村には神託書という魔導具が配布されており、一生に一度だけそれに血を一滴たらせば発行される。

16歳になれば使用可能となり紙面に記された多数の適合職から一つを選択するとそれに沿った紋章が手首に記載され職業に見合ったサポートを受けられる。

ただし1度の使用で効果は失われる。

15歳のカティアには神託紙はまだ使えないはずである。


そう思って疑問を口にするとステラは大きくため息をつき瞳に強い決心を持ち語りだした。


「本当はティアが成人した時に話そうかとおもったんだけどねぇ・・・。」


あ、これあれだ。

私は孤児だったとか、私の本当の両親は別にいるのとか言うそういう流れの話だ。


「ティア、あなたが村の牧畜の柵の中で大泣きしているのを見つけたのは、13年前のとても暖かい日だったわ・・・。」



やっぱりーーーーーーー。

村の聞き分けの無い子供に使うあんたは森で拾ってきてうちの子じゃないんだよ!!という脅しをよく聞いた。

我が家では一切使われた事は無かったが、自分がまさかそれに該当するだなんて!そして今このタイミングで聞くなんてーーー!

こういうのはもっと自然に成人してお祝いの空気の中、両親が(と言っても父は私が幼いころに亡くなったと聞いていていないのだが)泣きながら貴女は正真正銘の我が子では無いけれど、私の愛しい子よ。

何ていうストーリーの中で話して欲しかったーーー!










そんな私の心の叫びは置いておいて、どうやら私は捨て子で正確な年齢はわからずリスクを負わずに使えるのが拾われてから16年目という来年らしい。

私が籠に詰め込まれて拾われた時点では赤ん坊だったので0歳扱いで16年、当時に私が1歳だったのだとしたらもう成人しているはずである。

つまりリスクを負えば神託紙は使える可能性があると言う事だそうだ。

ギフトをもらえるかもしれない、この状況から抜け出せるかもしれない!


「かあさん、私やってみたいどうせ選択出来る事なんて無いに等しいもん、やれる事はやってみたい。」



「でも、もしティアがまだ15歳なのだとしたら・・・。神託紙は1度きりしか使えない。ティアはギフトを得られなくなってしまうのよ?そうなった時どうなるか、そしてどんな罰があるか知っておくべきだとおもうの・・・。」


1度きりしか使えないのはわかっている、一生ギフトが無くてもそれに逆らって生活している人がいるんだ、村で暮らす分には問題はそんなに大きくはないだろう。

そう軽く考えていたカティアを見てステラは再び重いため息を吐いた。



「もし、まだティアが15歳でギフトを得られなかった場合。ティア、あなたは5年間ほど人ではなくなります。」


よくわからない事を言われ首をかしげるカティアにステラは言葉を続ける。


「つまりティアはこの付近の村の所有物になります。もっとわかりやすく言うと付近の村の奴隷になります。そうなればウィンズタウンには出向しなくても良くはなりますがそれ以上に辛い目にあうでしょう。」


遠い昔に無知な村の若者が少しでも早く力を得たくて、一斉に神託紙を使ってしまった時に出来たルールだそうだ。

大人はそれを知っているので厳しく神託紙を管理して子供に渡さないようにする。


その時は、遠い神殿から神官が遣わされ、人を前に神託紙を使った若者を処罰し、そんなことが二度と起きないよう規則を破ったものはには厳しい罰として、人として扱うことをやめさせ周囲の村のどこかがその時の持ち回りで物として扱う事と決めた。

当時は一生だったそうだが耐えきれず自殺してしまう者が多く、期間を5年間、法を犯した者を裁くこの地域の村の風習に合わせて決まっていったそうだ。



苦しい飢饉の時には口減らしで付近の村に金銭や物資で譲っても良いし、余裕があるのなら村を発展させる為に使い潰しても良い。

男性はその村でもっとも厳しい仕事に就くことが多く、女性の多くは村所有の人口増加、簡単に言うと農奴を増やすために扱われ期間中はずっと身重であることが多い。

奴隷として扱われるのが出身の村ではないのは、下手庇われたりしない為、違反を隠し通そうとしても神殿では違反者を管理できるらしく、領主への違反者が出たので確認するようにという手紙一通でばれてしまうそうだ。



5年というリスクを負う事と一生玩具になる事それらを天秤にかければ、まだ5年我慢した方がましだ。

少しでもリスクを減らすために3カ月ぎりぎりまで待ってから使おうと決めて、私は立ち上がり母の方へ駆け寄りそのことを告げた。



                                                                                                                                                                                                                 











4/14 少し内容を修正

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