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9.ゆるさねぇ
「くそっ。何してんだ俺は」
村まで遠く感じる。
焦っているせいか、いつもより時間がかかる。
「みんな無事でいてくれ」
こんなことなら森に来るんじゃなかった。
たらればを頭の中でぐるぐる考えながら必死に移動した。
とても長く感じた移動がようやく終わり視界にドラゴンが映った。
「ありえねぇ」
カミスは立ち止まってしまった。
目に映る光景が信じられなかった。
森の木よりも大きな二匹のドラゴンが口から炎を吐き、村だった場所は一面焼け野原だった。
村人が生きて残っているようには見えない。
人の気配も近くには感じられない。
「親父、お袋」
やっと出た微かな声。
僅かな望みが有るかもしれない。
このまま見ているだけなんて出来ない。
行ったら死ぬかもしれない。
ただただ無駄かもしれない。
だか、やってやる。とことんやってやる。
親父、お袋、ハゲた爺さん、口うるさい婆さん、みんな・・・・後で笑えよ・・・馬鹿だなぁ〜って。
最強の剣を抜き鞘を投げ捨てる。
ドラゴンよりも自分が許せなかった。
「ゆるさねぇ」
親父やお袋なら笑って許してくれるだろう。
だか・・・・
「一緒後悔してもゆるさねぇ」