31.余計なことを
次の日、昨日買った店に行ってみると既に多くの人が待っていた。
「兄貴、連れてきたぞ。どうすればいい?」
「死にそうな者から連れてこい。治った者は何か得意なものがないか聞いてから帰せ。読み書きのできる者は手伝わせろ」
「分かったよ」
それから午前中に百人くらいは治して、今日の営業は終わり。
昼になりその場で飯を食べながらリストを眺める。
「お疲れさん。良くやった。明日も頼む」
数日後、店に着くと入口に馬車が止まっていた。
「兄貴大変だ」
「任せろ。直ぐに退けるからいつもと同じに頼む」
カミスは馬車に近付き執事の格好をした爺さんに言った。
「邪魔だ。退けろ」
「貴様が医者か?これから一緒にベルテルン公爵の屋敷に来てもらう」
「行かねえよ。診てもらいたかったら連れてこい」
「貴様言うこと聞かないと、どうなるか分かるか?」
「知らん」
そこにセリーナが割って入ってきた。
「待ちなさい。カミス様は国王より許可を得ています。いくら公爵家であっても連れていくことは許しません」
「セリーナ姫どうしてここに?」
「カミス様は私の夫になる人です」
余計なことを。
「分かりました。今日のところは帰ります」
その日は始まりが遅かったので、昼を過ぎても病人を診た。
リストを見ながら飯を食べると、また朝と同じ馬車が店の前に止まった。
馬車から執偉そうなおっさんが降りて来た。
セリーナが公爵と教えてきた。
「セリーナ姫、どうか娘を助けて下さい」
「カミス様何とか診て貰えないでしょうか?」
うーん。決め事は守りたい。
「明日まで待てないか?」
「もう一刻の猶予も無いのです」
「特別だ。馬車の中でいい」
馬車の中に入ると一人の女性が寝かされていた。
かなり痩せている。
直ぐに回復魔法を使うが良くならない。
病気では無いと呪いか何かか。
それらしい魔力を感じた。しかし似た魔力を近くからも感じる。
とりあえず女性の魔力を転移魔法で除去し、回復魔法をかける。これで女性は大丈夫だが、また呪いをかけられても面倒だ。公爵だけを馬車の中に呼ぶ。
「治ったぞ」
「ありがとうございます。どんなお礼をしたらいいか」
「銅貨一枚だ。それ以上はいらん」
「そんな。それでは公爵家として面目が立ちません」
「それにこれは病気ではない。呪いだ」
「呪いだと」
「そうだ。そいつがいる限り、またなる恐れが高いだろう」
「そんな馬鹿な。一体誰が」
「そいつなら分かるぞ。お前の執事だ」
「まさか長年仕えてきたのに。どうして」
「後はそっちの問題だ。任せて大丈夫か?別に誰にも言わないさ」
「何から何まですまない」
カミスは馬車を降りるとそのまま店に入った。
「カミス様、ありがとうございます」
「大したことしてないさ」
リストも大分出来てきた。




