21.そっち
カミスは翌朝、宿屋を出て再び王都を散策した。
出店で食い物を買って食べてを繰り返し、武器屋や道具屋を見て廻った。武器は特に必要なかったが、道具屋は初めて見る物ばかりで店主にいろいろ質問していたら、買わねえのかよオーラを出されて適当に幾つか使えそうなものを買った。
昼になったので食堂に入り、あれこれメニューを質問してやっと決めて食べた。出店もそうだがやはり香辛料は少ないのだろう。カレーが食べたい。
食べ終わり再び散策。なぜか強面の男達が街のゴミ拾いをしている。良い街だ。
「ナニ見てんだゴラァ」
そんなお兄さん達を感心して見ていたら絡まれた。
「お勤めご苦労様です」
「見せもんじゃねえぞゴラァ」
怖いので退散。
何人かのお兄さんに睨まれながらウロウロしていたら声を掛けられた。
「兄貴〜」
「人違いと思います」
「兄貴探したぜ」
「一人っ子なので弟はいません」
どっかで見た顔だ。
「兄貴にお願いがあるんだ」
「なんだお前か」
昨日遊んだお兄さん達の親分だ。
「妹を見てくれ。兄貴は回復魔法使えるだろう」
「無理なんだ。何故だかブスには効かない」
「ブスって決めつけんなよ」
「お前の遺伝子が少しでも入れば、ブスにしかなれない」
「意味分かんねよ。なあ、金なら一生掛かってでも、奴隷になっても構わねえ」
必死だな。
「ブスなら何もしないぞ」
「ありがてえ。こっちに来てくれ」
ブスの兄貴に付いていく。
だんだん家から小屋になり、そして雨除けの避難場所みたいなとこに来た。
周りには腹が減っているのか病気なのか分からないが座って動かない人だらけだ。
「入ってくれ」
直ぐに帰るつもりで中に入る。
「君のためにドラゴンを倒してここまで来たよ」
めっちゃかわいい。
この子は捨て子だな。絶対。
「兄貴助かるか?」
「お兄様、できる限りやってみます」
「さっきと全然違うじゃないかよ」
お兄様邪魔だよ。
「魔法を使うのに集中したいので、お兄様まここから出て下さい。俺の嫁は助けて見せます」
「嫁ってなんだよ。とりあえずお願いするからな」
「しっしっ」
手であっちに行けとジェスチャー。
「やっと二人きりになれたね」
「あの、どちら様ですか?」
「君を助けに来た魔導師さ。君の名は?」
「エリーです。魔導師様、うちにはお金なんて・・」
「俺のことは、旦那様もしくはカミスって呼んで。エリーお金なんて必要ないさ。君と僕の仲じゃないか」
「カミスさん、よく分かりませんがお願いします」
そっち。
ちょとだけ悲しい。
でも治ればきっと変わるはず。
まずは転移魔法で体の汚れを消す。
やばい。なんとか大臣を思い浮かべてしまった。
別にいいか。
「凄いです。ずっと体調が悪く拭くことしかできなかったのですが」
「エリーは綺麗な方が似合うよ」
「あ、ありがとう」
「さて後は病気の方だね」
無駄に辛そうな演技をする。これもエリーの心を掴むためだ。何の病気か知らんが一発でへっちゃらさ。
「どうだい?」
「嘘みたいに何ともないです」
「さあ、結婚式はいつがいい?」
「兄から聞いているのですか?来週の予定でしたが、私が病気になったからもう諦めてたの。でも予定通りできそうです。これもカミスさんのおかげです」
あるぇ⁉︎もう直ぐ人妻?
不倫は良くない。
「いや。大したことしてないよ。本当だよ。ちょっとお兄様と話してくるね」
殺す。あいつ殺す。
外で心配そうにしているバカがいた。
とりあえず殴る。
「痛えよ兄貴」
「ゴラァ‼︎貴様なに人のこと騙してんだ?」
「騙してなんかねえよ。ブスじゃなかっただろ?」
「ブスと人妻は専門外なんだよ」
「ブスしか言わなかったじゃないかよ」
「お前のDNAが結婚できるなんて思うかバカ野郎」
もう一発殴る。
「痛えよ」
もう帰ろう。
「祝儀だ。エリーにやってくれ」
アイテムボックスから名前知らない魔物数体とお金を少し渡す。
「兄貴、こんなにありがとう」
「お前にじゃないからな」
「ああ」
失恋の逆恨みで帰り道を回復魔法と転移魔法連発しながら帰った。なんとか大臣だけを思い浮かべて。
遠くで、軌跡だあ〜とか聞こえくる。
やっと宿屋に帰って来た。
不貞寝しよ。




