12.だよね
カミスが南に旅立って大分経った。
昼間は瞬間的に移動する魔法を連続して使い移動し、夜は結界を張り早めに寝ていた。
小さい頃から狩りはしていたので移動しながら獣や魔物を狩り食料にし、余れば収納して後で食べた。
そのな移動が暫く続いたある日、進行方向の近くに人が沢山集まっている場所があることに気が付いた。
「ちょと寄っていくか」
カミスは移動する方向を少し変えてそこに向かう。
ドラゴンに焼かれた村を出から初めて人だ。
そもそもカミスがいた村以外の人に会うのはごくたまに来る商人だけだった。
「これが街ってやつか」
カミスがいた村とは比べものにならない位の大きさがあり、沢山の人がいた。
ここからは歩いて向かう。
魔法が使えるのが知られてはいけないと、うるさい婆さんが言ったいたからだ。
漸く街の入口に着いた。
「おい。身分証を出せ」
入口立っていた鎧いを着たおっさんに止められた。
「身分証なんてもってないよ」
もちろんそんなもんカミスが持っている筈もなかった。
「では銀貨5枚が必要だ」
「お金ないよ」
「では無理だ。帰んな」
「なんで街に入るのにお金が必要なんだよ」
「そういう決まりだ」
どうするかカミスは考えるがどうしようもなかった。
一旦帰るフリして夜に忍び込むのは簡単だが入ったところでどうせお金がない。
「やあ、僕が入れてあげようか?」
諦めてまた南に向かおうとしたところ20歳くらいの冒険者らしき青年がカミスに声をかけてきた。後ろには他に3人の男がいた。
「できるのか?」
「ああ。何か売れるものはないのか?魔物の素材とか魔石とか」
「魔石ならあるぞ」
素材も持っていたがここで出すのはマズイだろう。
魔石なら誤魔化して出せると考えた。
右手を懐に入れ適当に3個出した。
「これ売れるか?」
今までは魔石を取っても全て親父に渡してそれがいくらになるかも知らなかった。
「ちょと待てって」
そう言って青年は仲間と何か話している。
暫くしてこちらに来ると言った。
「本当はこれを買い取ってやるつもりだったが、今手持ちがなくてな。代わりに売って来てやるから少し待っててくれないか」
「お前いい奴だな。ここで待ってるよ」
「ああ、では行って来るよ」
青年達は何かをさっきのおっさんに見せて街の中に入ったいった。
「遅っそいな」
辺りは既に夜になっていた。
結局、今日は諦めて入口から少し離れた場所で食事をして寝た。
翌朝から入口に立って魔石を渡した青年を待っていた。どれだけ待っても来なかった。何日か過ぎた頃。
「おう坊主」
前に街に入れてくれなかったおっさんが話しかけてきた。
「なんだよ。ケチなおっさんか」
「ケチってお前な。まあいいや。そこでずっと何してる?」
「待ってんだ。代わりに魔石を売ってきてもらってる」
「お前まさか知らない奴に魔石預けたのか?」
「預けたぞ」
「馬鹿だなお前。そいつら戻って来ないぞ」
「だよね」
うすうすそんな気はした。
「し、知ってたよ」
「嘘つけ。まあ次からは気を付けろよ」
二度と街には入らないと決意した。
「なあおっさん。この辺でドラゴン見なかった?」
「俺は見てないが大分前に空高く飛んでいるのを見たって奴が何人かいたな。本当かどうか分からんがな」
「黒い奴か?」
「確かブラックドラゴンがどうとか言っていたからそうだろう。お前も見たのか?」
「見たというか追っかけてんだ」
「お前冗談だよな?」
「いや。追っかけて敵を打つんだ」
「まあなんだ。無理かと思うが頑張れよ」
「おっさんもな」
「なんで俺が頑張るんだよ」
「じゃあ行くわ。おっさん頑張れよ」
カスミは瞬間移動で南に向かった。
目の前で少年がいきなり消えたのに呆然としているおっさんがいつまでも残っていた。




