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センターライン  作者: 佐久間みほ
始まり(1年春)
6/20

スタートライン-5

入学式は、500人強の新入生とその保護者が余裕ではいるだだっ広い体育館で行われた。

正門から入ってすぐの第1体育館は主に全校行事に使われるが、バスケ部が放課後の主らしい。

話が短いことで有名な学校長と理事長の挨拶が終わり、あっさりと式は終了した。

これからクラスに移動して、先生とご対面だ。


「香枝、お母さん式終わったらそのまま帰るからね」

「うん、仕事休んでもらってごめんね」

「何言ってんの。3年間頑張りなさい。」

「はい」

「なんにもなくても連絡くらいするのよ?」

「わかった」


朝、正門の前で待ち合わせした母は、そのまま仕事に行くためかスーツ姿で、それでも3年間ほとんど家に帰れないだろう娘のために仕事を半休して、足を運んでくれた。

我が家はほぼシングルマザー。

というのも、父が海外で長期単身赴任をしているためだ。

4つ上の兄も大学に入り、私も寮生活をすることになったため、在宅ワーク中心だった母は仕事を本格的に再開した。


この学校を受けることに対して、父は何も言わなかった。

というよりも、母に事後承諾という形で合格通知が手元に来て寮への手続きも終わってから伝えられたのだから、何も言えなかったということに近い。

ただ、昨日の夜にメールが来て、「頑張りなさい」と一言だけエールを貰った。



第1体育館から校舎までは外廊下を歩く。

そよぐ風に乗って学校敷地枠に植えられた桜の花びらが舞う。

薄いピンクの花びらが踊る様は、見ていて微笑ましい。

あぁ、春だなと実感できるから。

5階建ての校舎は棟の端と端に階段が設置されていて、一応大移動の分散はできている。

1,2年は正面向かって右側の棟。

左側は3年とそのほかの教室。

たとえばリスニングルームとかパソコンルームとか視聴覚室とか、音楽室に美術室etc。

奥真ん中に教員棟があって、手前の真ん中は2階と4階部分が廊下として左右の棟をつなぐ場所になってる。

真四角の校舎の真ん中には中庭があり、多きなクスノキが植えられている。


私が所属する1年10組は、4階。

正直毎回の移動を考えるとげんなりするが、渡り廊下がある階だから他の階のクラスに比べればまだいいかもしれない。

クラスに入ると、既に移動を終えたクラスメイトがざわざわと話をしていた。

黒板に貼られた座席表を確認し、移動する。

窓際の後ろから3個目。

席に座ってクラスを見回すと、既に坊主頭が数名いた。

その中の一人は完全に夢の中。

入学式当日に既に寝れるって凄いな…と感心していると、先生が入ってきた。


先生の簡単な自己紹介から始まり、名簿順に自己紹介をしていく。

坊主頭で夢の中だった男子生徒は春山亮はるやまあきらというらしく、なんとサッカー部だった。

既に練習に参加している特待生扱い。

その他の坊主頭は野球部とバスケ部とバレー部で、その人たちも皆特待生扱いとして既に練習に参加していた。


「次ー宮城」

「はい。宮城香枝です。1年間よろしくお願いします。」

「何だそれだけか?」


部活は決まってない。でもなんとなく宣言しておいた方がいいかもしれない。

そんなことを瞬間的に考えて、つい言葉にでてしまった。


「部活は、サッカー部のマネージャーを志望しています。国立、行きたいです。」


春山君と、目が合った。

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