スタートライン-4
入学式を翌日に控えた日、単身大きな建物の前に立った。
入寮日であるその日は私以外にも多くの生徒が出入りしている。
親も来るといったが、翌日もまた来ることになることを考えて、大丈夫だと断った。
入り口で名前を伝え、部屋を教えてもらう。
既に送られていた荷物は部屋に入れられているらしい。
共同棟と呼ばれる場所に入り口があり、左右に男女の寮棟がある。
共同棟は1階に食堂、多目的ルームがあり、2階に大浴場と洗濯室が設けられている。
それぞれ5階建て、1フロアに24つの二人部屋。
寮としてもかなり大きいのだろうなと、3階にある自分の部屋に向かって階段を登った。
各階の踊り場にはお知らせやイベントなどの告知、自由に書き込めるホワイトボードが設置されていたり、幅が広く取られている廊下も、日当たりがよく明るい。
窓が開け放たれているからか、風の香りも春らしいやわらかさだ。
マネージャーで寮生の人って居ないだろうな、と思ったら何人か居るらしい。
同室の神谷先輩もそうだった。
「神谷明子、2年9組、バスケ部マネージャーしてます。1年間宜しくね」
そう、明るく招き入れてくれた神谷先輩は、元々はプレイヤーだったそうだ。
怪我をして、プレイができなくなって、マネージャーをしているという経緯からすると、私とは若干異なるけれど。
「宮城香枝です。1年間よろしくお願いします。」
「香枝ちゃんね。香枝ちゃんは何部なの?」
「サッカー部のマネージャー志望です。」
そう答えると、神谷先輩はきょとんとし、「じゃぁ部活動紹介の日は部活の用意していったほうがいいよ」と教えてくれる。
たぶん、サッカー部恒例の儀式みたいなもんなんだろうな。
そんなことを思っていたら、さらにアドバイスを貰う。
「それとね、入部依頼届け出すとき、体育教官室行くでしょ?ハッキリした声でクラスと名前、用事がある先生の名前と用事の内容を言わないと何度でもやらされるから気をつけてね」
「へ…?」
言われたことに驚いていると、「そこはもう、ほら、体育会系ですから」とおかしそうに教えてくれた。
「分からないことがあったらなんでも聞いてね。それと、そんなに硬くならなくていいよ」
ふわっと笑ってくれた神谷先輩によって、若干の緊張がほぐれた。
「ありがとうございます。改めて、宜しくお願いします」
「はいはい、こちらこそ宜しく。ほら、片付けないとご飯食べ損ねるよー」
「わぁ!もうこんな時間!」
くすくすと笑う神谷先輩にいろいろ教えてもらいながら部屋を整える。
2人部屋にしては広いと思う。
部屋の中央に2段ベッドがあり、左右をそれぞれの個室として使える状態。
部屋の右側、2段ベッドの上の段を神谷先輩が使っていたから、必然と部屋の左側、ベッドの下の段を使うことになる。
ベッドの一方は壁で仕切られていて、お互いのプライバシーは守られている。
凄いなぁと感心しながら、荷物を整理していると、神谷先輩が声をかけてきた。
「部屋にもシャワーとトイレが着いてるの。でもここの地下に大浴場と洗濯室があるから、ご飯食べがてら案内するね」
「はい、ありがとうございます」
「ちなみに香枝ちゃん、朝入る派?」
「夏はたぶん…。でも神谷先輩に合わせますよ?」
「ううん、そこはお互いに声を掛け合おう?どうしてもシャワーで済ませたいときとかあるじゃない?」
「あ、そうですね。じゃ、そうしましょう。」
そんな風に小さくルールを決めていった。