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センターライン  作者: 佐久間みほ
会話(1年夏)
19/20

夏の木立-6

「まぁちょっとしんみりしちゃったけど、だからこそ春山君には無理をしてほしくないんだ。自分を大事にしてあげてほしい。怪我と向き合ってほしいって思うの」


よっこいしょ、と声をかけて立ち上がると、春山君の顔も自然と上を向く。


「宮マネ…あのさ、お願いがあるんだけど…」

「ん?」

「お兄さんに会わせてもらえないか…?」

「へ?うちの兄と?」

「聞きたいことがある」


春山君の目線は真剣そのもので、目を離すことができなかった。

その真剣さに、卑怯にも交換条件を提示する。


「じゃぁ、約束してくれる?」

「ん…?」

「もう、オーバートレーニングしないって。怪我と向き合うって。」

「…ん」


こくりと頷く頭をみて、思わず手を伸ばし、ワシワシと乱暴に撫でてしまった。


「よし、いつって約束は出来ないけど、兄に連絡取ってみるね」

「ん」

「じゃ、今日はトレーニング終わり。よくストレッチして、アフターケア忘れないでね?少しでも腫れるとか痛むとかあったら速攻で言うこと!いい?」

「わかった」


春山君の返事が、得意の「ダイジョウブ」ではなかったことに安心し、グラウンドに戻ることにした。




「宮城、どうだった?」


島田コーチはなんとなく分かってたんだろう。

若干面白そうな顔をしている。

この人のこういうところが面白いというかなんというか。


「ご想像のとおり、でしたよ」

「やっぱりか。で、お前が喝入れてきたんだろ?」

「どこまでお見通しなんですかー」


脱力しつつも、手は動かす。

部員達はグラウンドの整備をし、私たちマネージャーもそれぞれの日誌を記載していた。


「で、どんなかんじなんだ?」

「まぁ、大分重めのお灸を据えておいたので、たぶんダイジョウブだとおもいますよ」

「なるほどな、春山流"ダイジョウブ"にならなきゃいいが」


島田コーチはガハハと大笑いをしている。

確かに、春山君の"ダイジョウブ"は部内でも信用ならないと評判(?)だ。


「あ、そうだコーチ」

「んぁ?なんだ?」

「部外者、というか経験者というか、うち兄なんですけど、春山君が会いたがってて、呼んでも問題ないでしょうか?」

「なんでまた」

「お灸の元なんで」

「…なるほどな。監督には俺から言っとくから、いつになるか決まったら連絡しろ。どうせ部活棟だろ?」

「まぁそうなると思います。分かり次第、お知らせしますね」

「あぁそうしてくれ」


コーチのOKもでた。

あとは兄を説得するだけだけど、なんとなく、あの兄のことだ。

面白がって来そうな気がする。


脳裏に浮かんだ兄の笑い顔にくすりとし、日誌に意識を戻した。


まだ夏休みは始まったばかり。

高校1年の夏、そこで何を経験できるのか。

小さなワクワクがとまらなかった。


若干短めですが、キリがいいのでここまでー。

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