夏の木立-4
中間テストも終え、どっさり夏休みの課題も渡され、夏休みになった。
今日からAチームとBチームの選抜数人は国体本戦を戦うため、遠征に向かう。
一年の中では唯一、佐川が選出されていた。
坊主頭をガシガシかきながら、「行ってくるわー」と教室に顔を出しにきた事を思い出す。
今年の夏は冷夏だと言われていたけど、最早何を持ってして冷夏なのかと恨みたくなるくらいの日差しだ。
ジリジリと焼尽されそうなそれに日焼け止めは追いつかず、早々に諦めている。
土埃が舞うグラウンドに、こまめにとられる休憩時間を見計らって水をまく。
あっという間に乾いてしまうそれを見て、選手たちの体内水分はもっと早くなくなるのかと思うとぞっとした。
炎天下の中、水分補給をせずに長時間激しい運動をしたら、熱中症だけでなく脱水症状も酷くなり、下手すれば生死に関わる状態になる。
いつも以上にマネージャーたちは選手たちの状態に気を配りながら仕事をこなしていた。
「宮城、おまえちょっとあいつ見て来い」
「はい」
島田コーチに指示されたのは、別の場所でリハビリ兼トレーニングをしている春山くんのことだった。
確かに、彼のことだ。
いくら空調が整っている室内といえども、水分補給忘れてそうだ。
それに、ここ暫く"監督"できてなかったし、気になっても居たのだ。
ドリンクを1本拝借し、部室棟へ向かった。
部室棟にあるトレーニングルームは、様々な機械が設置されている。
さながらジムのような空間だ。
他の部活の人たちも数人使っていて、目当ての春山くんはストレッチエリアで体を伸ばしていた。
「春山君」
「おぉ。宮マネ」
開脚前屈をしていた春山君の真上から声をかけると、今気づいたとばかりに顔を勢いよく上げてくる。
若干顔色が悪い。
「水分、取ってないでしょ」
「…水分?」
「やっぱり。いくら室内で空調整備されてても、熱中症にはなるんだからね?ほら、ドリンク!ちゃんと飲むこと!今半分は飲んで!ほら!」
手に持っていたスポーツドリンクを押し付け、飲むのを観察する。
ふと、彼の足元にある若干ぼろぼろになった紙に目が向いた。
「で?今日はどこまでやったの?」
「………」
彼の無言はオーバートレーニングの証拠と言っていい。
私は一つため息をつき、同じ目線になるように彼の前にしゃがみこんだ。
「春山君の気持ち、わからないでもないんだ。でもね、だからこそ焦らないでほしいの。」
そういうと、春山君は不思議そうにこちらを見てきた。
私は周りを見て、聞こえないレベルの位置に人が居ることを確認し、続けた。
「焦る気持ちが勝っちゃって、サッカー諦めた人知ってるから。その悔しさとか、そばで見てきたから。私は幼すぎて止められなかったけど、今の私なら止めることができる。春山君にはサッカー諦めてほしくない。絶対後悔してほしくないの。」
ちょっと少なめですが、キリがいいので。




