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腹を括る。

「えーっと王室などのプライベート空間には立ち入らない、朝7時から消灯まで勤務する。っと結構短いな・・・。勤務時は常に王宮内で支給された服を使用っと・・・」


ロリンシスは昨夜アルベルトから配られた働く上での注意書きの紙とにらめっこをしながら身支度を整えていた。


あのクソガキ・・・もといロノイール王子との再会を経た後ロリンシスはアルベルトの推薦もあって正式にここの庭師として雇ってもらった。しかも庭師という身分の割に待遇がいい。部屋なんて高級感が漂いまくっているし、一人で使うにはもったいない程だ。王宮と言う所は改めてすごい所だ。


ロリンシスが部屋で顔を洗っていると自分の部屋をノックする音が聞こえた。返事をしながらドアを開けるとそこにはアルベルトが立っていた。


「おはようございます。ちゃんと時間通りに起きていて素晴らしいですね」


笑顔で微笑むこの老人こそがすべての使用人をまとめあげているアルベルト執事長だ。出会った時はそんな身分の高い人だとは思わなかったけれど、人と言うのは見かけで判断してはいけないなあと改めて思った。


「早速で申し訳ありませんが、今日からしっかりと働いてもらいます。まあ庭師と言ってもただ庭を手入するだけではありませんので覚悟しておいて下さい」


「は、はい?」どういう意味だ今のは。何となく嫌な感じが漂ってきているぞ・・・・


「ロリンシス、貴方の場合異例の採用だったので、詳しい説明をし忘れていたのですが・・・」


「なんでしょうか・・・」ここまできたら腹を括るしかない。どんな汚れ仕事だって引き受けるぞ!!と決意新たにアルベルトの言葉を待つロリンシスの耳に予想外の事実が届いた。


「ロリンシス、貴方の仕事は庭師兼ハウススチュワードです」


「は、ハウススチュワードですか?」


「そうです」


「ハウススチュワードって要するに執事みたいなやつですよね?」


「そうです」


「俺、経験ないんですけど・・・」


「ああ、大丈夫です。そんなおおそれた仕事は頼みません。貴方の仕事はいたってシンプルです。・・・ところで貴方が何故こんなにいい部屋に住まわせてもらえたと思います?」


「さ、さあ・・・」ロリンシスはアルベルトの質問の趣旨が分からず今にも頭を抱えたい気分になった。


「それはですね、貴方の役割が関係してるんですよ」


「そうなんですか・・・?」


イマイチぱっとしないロリンシスの態度にしびれを切らしたのかアルベルトが手を一回鳴らしてから、輝いた瞳をロリンシスへと向けた。


「貴方の隣のお部屋にはロノイール王子がいらっしゃいます。つまり貴方はロノイール坊ちゃんの話相手になって頂きたいのです。そのためにわざわざロノイール坊ちゃんの隣部屋を確保したのです」


・・・・・・・・・・・・・・ん?今目の前で苦労したんですよとか言いながらドヤ顔を見せている老人は何と言ったのだろうか・・・


「聞き間違いでしょうか・・・嘘ですよね?」


「嘘なんてとんでもない!!!現に昨日の面接で何故坊ちゃんに参加してもらったのかといえば坊ちゃんの話相手にふさわしい相手を自ら選んでいただくためだったのですから!!!」


いやいや、昨日自分居ませんでしたって・・・。ロリンシスは自分自身がゲンナリしていくのを感じた。


「坊ちゃんがロリンシスに口をきいたと聞いた瞬間私はビビッと来てしまったのですからしょうがないでしょう」


きょとんとした顔で当然のように言ってのける執事長に本日何度目かの殺意が芽生えはじめる。大体、自分はあの王子とどうもそりが合わないのだ。たとえ話相手になったとしても会話が弾むとは思えない。


ロリンシスが目でも分かるくらいに不快感をあらわにしたときにアルベルトの目がきらりと光る。


「よろしいのですか?私は別に辞めて頂いても構いませんが」


その言葉を聞いた瞬間ロリンシスは何も反論できなくなった。それを言われてはおしまいだ・・・。従うしかない。自分はここを辞める訳にはいかないのだ。ロリンシスは一度大きく息を吐くと覚悟を決めてもう一度アルベルトに向き直った。


「分かりました。やらせて頂きます」


ロリンシスの言葉に満足そうにアルベルトが頷いた瞬間、突然隣の部屋からガッシャーンという大きな音が聞こえた。

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