ストリートビューに映る霊
私はGoogleのストリートビューが好きです。
高校生の頃、新型のウイルスのパンデミックで旅行だけでなく外出制限されている時に気分転換にと思って使い始めたのがきっかけです。
家族旅行も修学旅行も卒業旅行もできずにいた頃に、こんなところにいつか行きたいと思い使い始めました。
友達の愛ちゃんも私と同じようにハマっていて、今ではジオゲッサーでお互い遊ぶくらいになりました。
大学からは二人とも別々の進路になりましたが、社会人になった今でも週末になると通話アプリを使って会話しています。
ある時、愛ちゃんが通話中に不思議なことを言いました。
『今日の昼間にね、ストリートビューで散歩してたら不思議なことがあったんだよ』
「何があったの?」
『画面の中の人と目が合ったような気がして』
「それはありえないよー。だってプライバシーに配慮して人の顔が映っていても必ずモザイクかかっているじゃん」
「そうなんだけどさ、家の中からこっちを見てる女の子が私を目で追ってるような気がして……」
「家の中だったからモザイク処理のAIの判定から漏れたのかな? それにしても愛ちゃんのことを目で追っていたわけじゃないと思うよ。撮影してる車をその子が珍しい車だって思って目で追っていたら、移動したらその子の顔も追ってくるんじゃないのかな?」
実際にストリートビューを見てるとモザイクがかかっていても車を目で追っているんだろうなと思うことはよくある。
「そういうのじゃないんだよなぁ……なんかこっちを見られてるというか……」
「もしかして、なんか心霊スポット的なところへ行っちゃった? そういうところは何か変なことがあるかもしれないからストリートビューでも見にいくのは禁止しようって約束してたじゃないの」
楽しく使おうということで愛ちゃんと高校の頃から心霊スポットはストリートビューでも見に行かないようにしようと約束してたのです。
「違うよ。隣の市の住宅街を普通に散歩してたんだよ。そしたら違和感あって」
私は東京の大学へ進学してそのまま東京で就職しましたが、愛ちゃんは地元の大学へ進学して地元で就職して実家暮らしをしています。
「うーん、それならやっぱり気のせいじゃないかな。もうそこは見に行ったらダメだよ」
「分かったよー、気になるけどやめとくね」
その後はたわいのない会話をして、その日は通話を終えました。
それから二週間後の土曜日に愛ちゃんから連絡がありました。
普段は話す時にはほとんど使わないLINEからの連絡してた。何か緊急事態の予感がしてすぐに対応しました。
『もしもし、めぐちゃんの携帯でいいのかしら?』
めぐちゃんは私のことです。しかし、電話の相手は愛ちゃんではなく、愛ちゃんのお母さんからでした。
愛ちゃんからではなくお母さんからの電話ということで嫌な予感がしました。
「はい、恵です。ご無沙汰してます。愛ちゃんに何かあったのですか?」
『久し振り、そうなの、愛が大変なことになって……』
電話があった時は最悪のケースも想定したが、この様子ならそれは無さそうで安心しました。
『昼間、愛の部屋から急に大きな音がしてね。一階にいたのに二階の愛の部屋からきこえるくらいだったのよ。何事かと思って部屋に駆けつけたら、愛がパソコンのモニターに首から突っ込んでそのまま壁に頭を打ちつけたみたいなのよ。命に別状はなかったんだけど……』
「けど……?」
『頭を打ったからなのか目が覚めなくて。脳の検査もして貰ったのだけど異常はないみたんだけど』
「そうなんですね。早く目が覚めるといいのですが」
『もちろん、そうなんだけど……めぐちゃん、何か愛から聞いている?』
「いえ、特に何も……」
『先週の土曜日に古い新聞記事や郷土史を調べに図書館に行っていたみたいなの。近くの市のこと調べてたみたいでコピーとかメモとか部屋に残っていて。めぐちゃんならよく話していたみたいだから知ってることあるかと思って』
ストリートビューのことがきっかけなのかもしれないが、それは伝えないようにしました。被害が広がってしまう可能性がありましたし。
『それと、部屋に入った時にパソコンの音声から『これじゃダメなのかな』って音が聞こえたような気がしていて。誰かと話してたのかって思って、めぐちゃんじゃなかったのね。おばさん、パソコンとか詳しくなくて。愛が何を調べていたかモニターを変えたら分かるのかもしれないけど全然できなくて。ごめんなさいね、変な話しちゃって』
「いえ、連絡いただいてありがとうございます。私にできることはありませんが、愛が早く目が覚めるように祈っています」
『また何か分かったら連絡するわね』
そう言って話は終わりました。
正直、愛が目が覚めた時以外は連絡してこないで欲しいし、目が覚めたとしてもお祓いとか行ってから連絡してきて欲しいです。
パソコンもモニターが壊れていたなら、愛ちゃんはモニターから音を出力していたはずなので音が聞こえるはずはありません。
きっと変なモノに憑かれてしまっていたのでしょう。
物語の主人公なら本当ならここから何があったのかストリートビューを調べて、愛ちゃんと同じように新聞記事とか調べていくのでしょうが、あいにく私にその気はありません。
危ういことに巻き込まれたくないので、これからはストリートビューも見るのをやめることにしました。
愛ちゃんが目を覚ますことはもちろん望んでいますが、もし私とまた普通に接するなら、ちゃんとお祓いとかして憑き物を落としてからにして欲しいです。
それができないなら縁を切りたいと思います。
私の楽しみが一つつ失われたことは本当に悲しいです。
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