第6話:ショートケーキフェアリーと配信の輪
「これすごい!」
私はスプーンを持ったまま笑っていた。
さっき作った極上ベリーパフェは、見た目も味も最高だった。
グラスの中に重なるベリーとクリーム。
キラキラしたエフェクトまでついている。
コメント欄はまだ盛り上がっている。
「うまそう」
「深夜に見るもんじゃない」
「腹減った」
私は笑いながら言った。
「これほんと美味しいよ!」
肩の上では、ぷるぷるプリンがぷるぷる揺れている。
「ぷる!」
「食べたいの?」
私はスプーンを少し差し出す。
プリンは嬉しそうに跳ねた。
コメント
「モンスターに餌やりw」
「かわいい」
そのとき、コメント欄に見慣れない名前が流れた。
タロー
「そのベリーどこで拾った?」
コメント欄が一瞬ざわつく。
「タロー?」
「本人?」
「まじ?」
私は普通に答えた。
「えっと、ベリーフォレストの奥です」
「ボスがいたところ」
タローのコメント。
「やっぱりあの子か」
「ボス横でレア素材拾ってた」
コメント欄が爆発する。
「本人ww」
「見てたのか」
「有名人きた」
私は首をかしげた。
「ソウタ、この人誰?」
ソウタが小さく言う。
「有名配信者」
「えっ」
私は少し慌てた。
「そんな人見てるの!?」
コメント
「気づいてなかったw」
「天然だ」
タローのコメントがまた流れる。
「面白いことしてたからな」
「初心者でボス横素材回収は初めて見た」
私はちょっと恥ずかしくなる。
「だって光ってたんだもん」
コメント
「理由w」
「かわいい」
ソウタは呆れたように言う。
「普通は行かない」
「危ないから」
私は笑った。
「でも取れた!」
コメント欄
「ポジティブw」
そのときだった。
ラズベリーゴーストがふわっと浮かび上がる。
「?」
ゴーストは店の外へ向かって飛んでいく。
「どこ行くの?」
私は慌てて追いかけた。
「ミユ」
ソウタも後ろからついてくる。
配信もそのまま続いている。
⸻
外に出ると、夜の街は静かだった。
ランプの光が石畳を照らしている。
ラズベリーゴーストは、街の端の小さな広場で止まった。
そこには――
ふわふわと浮かぶ、小さな光。
「……?」
近づく。
するとそれは、モンスターだった。
手のひらサイズの妖精。
ふわふわのクリームみたいな髪。
赤いイチゴの帽子。
そして体は、まるで小さなケーキ。
ショートケーキフェアリー
コメント欄がざわつく。
「なにそれ」
「初めて見る」
私は思わず言った。
「かわいい……」
フェアリーはくるくる飛んでいる。
ぷるぷるプリンが揺れる。
「ぷる!」
フェアリーはプリンの周りを回った。
まるで遊んでいるみたいだ。
コメント
「友達?」
「敵じゃない?」
ソウタは少し警戒している。
「ミユ、触るなよ」
私はゆっくり手を伸ばした。
「大丈夫だよ」
フェアリーは逃げない。
むしろ近づいてきた。
そして――
ちょこん。
私の指の上に乗った。
「……!」
コメント欄
「なついた?」
「テイム?」
システムメッセージが表示される。
【ショートケーキフェアリーがミユに興味を持っています】
私は目を輝かせた。
「仲間になるの!?」
そのとき。
タローのコメント。
「それレアモンスターだぞ」
コメント
「え」
「まじ?」
私はびっくりした。
「ええ!?」
フェアリーはふわふわ飛び回る。
そして私の肩に止まった。
ぷるぷるプリンの横。
ラズベリーゴーストも近づく。
小さなスイーツモンスターが三匹。
コメント欄
「スイーツパーティーw」
「かわいい」
私は笑った。
「なんか増えた!」
ソウタは小さくため息をつく。
「モンスターに好かれすぎだろ」
配信のコメントは止まらない。
その中で、タローが書いた。
「この配信、ちょっと面白いな」
ミユはまだ知らない。
この小さな配信が――
これから多くのプレイヤーに見られるようになることを。




