第10話:マカロンナイトと三万人の視線
スイーツ工房の扉が、ゆっくり閉まる。
店の中にいたプレイヤーたちがざわついた。
「モンスター!?」
「なんで街に!?」
中央に立っているのは、カラフルな鎧の騎士。
丸い盾。
剣。
そして体は――
マカロンでできている。
マカロンナイト
私は思わず言った。
「かわいい」
ソウタがすぐにツッコむ。
「敵だ」
コメント欄は大騒ぎだった。
「街中イベント?」
「初めて見る」
マカロンナイトはゆっくり歩き出す。
カツン。
カツン。
その動きは、まるで本物の騎士みたいだった。
私は配信を続けながら言う。
「えっと……戦うの?」
ソウタは剣を抜いた。
「向こうが攻撃してきたらな」
その瞬間。
マカロンナイトが剣を構えた。
シュン!
一気に距離を詰める。
「速い!」
ソウタが受け止める。
ガン!
金属音が響く。
コメント
「戦闘始まった」
「剣士かっこいい」
私は慌てて下がる。
肩の上のモンスターたちも動いた。
ぷるぷるプリンが跳ねる。
ラズベリーゴーストが光る。
ショートケーキフェアリーが舞う。
マカロンナイトは強かった。
ソウタの攻撃を盾で受ける。
そしてカウンター。
ガン!
ソウタが一歩下がる。
「防御型だな」
コメント
「ボス級?」
「強そう」
私は叫ぶ。
「ソウタがんばれ!」
コメント欄
「応援w」
そのときだった。
ショートケーキフェアリーが、ふわっとマカロンナイトの前に飛んだ。
ナイトの動きが止まる。
「?」
フェアリーが光る。
そして――
マカロンナイトの剣が、ゆっくり下がった。
コメント欄
「止まった?」
「イベント?」
システムメッセージが表示される。
【特殊イベント発生】
私は目を見開いた。
「え?」
マカロンナイトが私を見る。
そしてゆっくり片膝をついた。
カツン。
騎士の礼。
コメント欄が爆発する。
「仲間!?」
「テイム!?」
システム表示。
【マカロンナイトがミユに忠誠を誓いました】
【仲間になりました】
私は固まった。
「えええ!?」
ソウタも驚いている。
「……騎士系モンスターだと」
コメント欄
「やばい」
「当たり引いた」
マカロンナイトは立ち上がる。
そして私の後ろに立った。
まるで護衛騎士みたいだった。
私は笑う。
「増えた!」
肩には
プリン。
ゴースト。
フェアリー。
後ろには
マカロンナイト。
コメント欄
「スイーツ軍団w」
「かわいい」
そのときだった。
スイーツ工房の扉が、もう一度開く。
カラン。
一人のプレイヤーが入ってくる。
黒いジャケット。
配信アイコン。
その男は笑った。
「やっぱりここか」
コメント欄が一瞬で埋まる。
「タロー!?」
「本人!」
私は振り向いた。
「え?」
ソウタが小さく言う。
「本物だ」
タローはカメラを見て笑う。
「皆さんこんばんは」
「フルダイブ太郎です」
そしてミユを見る。
「君が例の」
ボス横素材少女か」
コメント欄
「直接来たw」
私は少し慌てた。
「そ、そうです」
タローは笑った。
「配信面白いな」
「よかったら一緒にダンジョン行かない?」
コメント欄が大爆発する。
「コラボ!?」
「神回!」
私はソウタを見る。
ソウタは肩をすくめた。
「決めるのはお前だ」
私は笑った。
「行きます!」
配信コメントは止まらない。
視聴者数。
87,000人
ミユの小さな配信は――
今、
大人気配信へと変わろうとしていた。




