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推しがケーキ屋でバイトしてた話  作者: アイドルは所詮ただの人間
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顔面が強いアイドルの自覚

 ある日、デパ地下で買い物をしていたところ、ケーキ屋の前を通りかかった。ふと、キッチンの方に目をやると、そこには見覚えのある美しい顔面の女性が必死でメレンゲを泡立てていた。ステージ上で私に微笑みかけてくれた彼女の見たことのない表情だった。夢かと思った。

 帰宅してもなお、胸の高鳴りは収まりそうになかった。

 私の部屋の壁にはこちらを見て微笑む彼女の写真が貼られている。

 彼女は私が10年推していたアイドルだ。その美貌とざっくばらんとした性格な上にハスキーボイスなのもあり、女性ファンが多い。ついこの間、アイドルを卒業して何しているのかと思っていたけれど、まさかこんな近所で働いてるなんて夢にも思ってなかった。

 翌日、そのケーキ屋に再び行くことにした。彼女があそこで働いてるなんてにわかには信じられなかったから。

 ケーキ屋のキッチンを少し覗くとぼんやりとした表情で皿洗いをする彼女がいた。そんな彼女の表情すら美しくてつい見惚れてしまっていた。彼女がこちらに気づき、キッチンから小窓を開けて話しかけてきた。

「あ!さつきじゃん!久しぶり!卒業ライブ以来じゃん!」

彼女はあの頃と変わらない笑顔でこちらに声をかけてくる。

 彼女がアイドルだった頃からファンとの距離感が近いという話は有名で、プライベートでファンと会った時は彼女の方が積極的に話そうと、ファンを追いかけていたという。それは噂じゃなかったんだと感動した。

平日の昼間で相当暇だったのか表に出てきた。

「さつき!私のおすすめは、これと、これと、これ!!」

彼女が指さしたのはどれもイチゴがふんだんに使われたケーキだった。

ふと、彼女はいちごが好きなキャラだったなあと思い出しながらファンだった私にとっての彼女のアイドル像を壊さぬように対応してくれてるんだと卒業しても彼女は私の永遠のアイドルだなあとしんみりした気持ちも束の間、彼女は得意の笑顔の表情を作って言い放つ。

「え?さつき、全部買うよね?」

私の大好きな顔面の人にそれをされると断れるわけないじゃないか。

でも流石に、ホールケーキもあるから、これを持ち帰っても私一人じゃ食べきれない。

「ねえ、咲子ちゃん、1切れのサイズでもいい?」

彼女は残念そうな表情をしたあと、何かいいことを考えついたような悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「そうだ、さつき、一緒に食べよ。」

は、え?

彼女は私の答えを待たずにケーキを持ち帰り用の箱に閉まってしまった。

「5400円ね。」

私は言われるがままスマホを取り出す。

「◯ペイで。」

軽快な決済音とともにケーキを受け取る。

「今日は3時に上がりだから、噴水の前で待ってて。」

ふとスマホの画面を見ると後10分で15時になるところだった。



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