◆ネット怪談スレッド『ノイズ』 03
213:名無しのノイズ:2003/07/12(土) 02:35:21
ID:Qx9a7eVh0
続き投下する。
その日の夜は婆ちゃんちに泊めてもらうことになった。
さすがにあの時間から家に帰るのは遅かったからな。
神主のおっさんが俺の携帯電話番号を控えて、明日の朝にその霊媒師から俺に折り返す手筈になった。
で、翌朝。
約束通りそいつから電話が来た。
大人の女性の声で淡々としてたのを覚えてる。
感情のこもってない声で「こちらで引き受けます。依頼料は100万円です」と言われて頭が真っ白になった。
「こちらも慈善事業ではないので」って冷たくあしらわれたけど、当時の俺に貯金なんてなかったし、あとで婆ちゃんと母ちゃんが半分ずつ出してくれると言ってくれて、なんとか話がついた。
その女は俺に「深夜二時に●●●に向かえ」と指示してきた。
具体的な除霊手順は●●●に着いたら教えると。
●●●の地名は伏せるが気味の悪いトンネルのある峠だ。
地元では有名な心霊スポットでもある。
俺はもうこの段階で泣きそうになった。
だって深夜二時に心霊スポットに行かされるんだぞ?
しかも地元民でも近づかないようなトンネルに。
ただ、他に選択肢があるわけでもなかったから、俺は仕方なくそのトンネルに向かうことにしたんだ。
235:名無しのノイズ:2003/07/12(土) 02:38:44
ID:Qx9a7eVh0
その日の夜、母ちゃんの車でトンネルに向かった。
ヘッドライトの光が濡れた山道に細長く伸びる。
くねくねと続いていく一本道をずっと進んでいくと、次第に携帯の電波も弱くなって孤立感が増した。
周囲は真っ暗で獣の鳴き声が時々聞こえるくらい。
母ちゃんはトンネルの手前で車を停めると「ここでいいの?」って俺に聞いてきた。
俺は黙って頷くと目の前に続くトンネルをじっとみつめた。
それなりに距離があるからか出口はみえない。
天井に照明が付いてるから真っ暗ではないけど、なんていうか、入ったら二度と出られなさそうな嫌な雰囲気を漂わせてた。
俺が車から降りるとすぐに携帯が鳴った。
朝に話した霊媒師からだ。
俺が目的地に着いたのをどうやって知ったのか分からないが、電話にでると淡々とした口調で「私は別の用事で行けないから電話で指示する」と言われた。
「100万も請求しておいておまえは来ないのかよ!」ってイラついたけど文句を言ったところで仕方ないし、しぶしぶそいつの言うことを紙にメモった。
今でもその紙は俺の手元に残ってる。
268:名無しのノイズ:2003/07/12(土) 02:41:54
ID:Qx9a7eVh0
電話越しに指示された内容を要約するとこんな感じ。
このトンネルには土地に根付く山の神様が巣食ってて、そいつに俺に憑いてる子供の怨念を引き剥がしてもらうって流れだった。
霊にも格式があって、いくら強い怨霊だとしても山に潜む神様には遠く及ばないって。
それから、そいつはトンネルをくぐる条件を淡々と俺に伝えてきた。
まず、電子機器の類いは一切トンネルに持ち込むなと。
携帯もカメラも録音機器もダメ。
理由は俺に憑いてる怨霊が電子機器のノイズを媒体にして干渉してくるからだという。
それと、トンネルをくぐったら絶対に背後を振り向くな。
どんな物音がしても、どんな気配が追ってきても決して振り返らず前に突き進め。
もし歩くのに耐えきれなくなったら全力で走り抜けてもいい。
走り抜けたら●●神社へ向かえと言われた。
場所は伏せるが愛知県でもそれなりに大きい神社だ。
そこで次の指示を出すと。
最後に質問はあるかと聞かれて、俺が恐怖に足がすくんでなにも聞けずにいたら、「幸運を祈ります」とだけ残されて電話を切られた。
324:名無しのノイズ:2003/07/12(土) 02:45:13
ID:Qx9a7eVh0
俺は覚悟を決めた。
こうみえても高校のころは陸上競技の800Mで東海大会まで進んだ過去がある。
幸いトンネルの長さは800メートルにも満たない。
全力で走れば2分もかからず駆け抜けられるはずだ。
そう考えると少し恐怖が軽減された。
携帯を母ちゃんに渡し、俺は神主のおっさんから渡されていたお守りを強く握りしめた。
よくある袋状の小さなお守りで、なにかあったらこのお守りを力強く握れと指示されてた。
悪霊に取り憑かれても正気に戻れるからと。
俺はゆっくりトンネル内に足を踏み入れた。
最初は特に違和感を感じなかった。
トンネル内も照明のおかげか思ったより明るい。
地面のコンクリの小さい凹凸までしっかり見えるくらいだった。
俺の歩く足音が寂しくトンネル内に反響するなか、「本当にトンネルをくぐるだけで除霊なんてできるのか?」って半ば不審に思いはじめてると急に異変が起きたんだ。
いきなりトンネル内の照明がパッと消えた。
まるで停電にあったみたいに。
一瞬にして視界が真っ暗になって、自分がどっちを向いてるのか分からなくなり頭の中が真っ白になった。
胸がバクバクして手の震えが止まらない。
そんな中、不意に前方から聞き慣れない子供の声が聞こえてきたんだ。
“いちり、にり、さんり……”って。
381:名無しのノイズ:2003/07/12(土) 02:48:05
ID:Qx9a7eVh0
最初は幻聴かと思った。
けど声は確かにトンネルの奥から聞こえてくる。
それも妙な旋律をもった複数人の子供の声で。
俺は足がすくんで後ずさった。
そしたら今度は耳の奥で“サーーーッ”と、あの不快なヒスノイズが広がったんだ。
背筋に悪寒が走って全身が総毛立つ。
やばいと思った瞬間、なにかが俺の右足首をガシッと掴んできた。
細い指がぎゅっと足首に食い込んできて、間違いなくあいつだと分かった。
思わず叫びそうになったが、“絶対に振り向くな”の指示を思い出して俺は手の中のお守りを強く握った。
で、とにかく全力で走った。
喉が裂けそうになるくらい大声を上げながら。
周囲のヒスノイズや変な声を掻き消すくらいの声量で。
背後から“カサカサ……”となにかが追ってくる足音が聞こえたけど、無我夢中で目を瞑って走った。
足がもつれそうになりながらも必死に前へ。
455:名無しのノイズ:2003/07/12(土) 02:50:41
ID:Qx9a7eVh0
どのくらい走ったかわからない。
呼吸が苦しくて何度もスピードを緩めようと思った。
肺が焼けるように痛くて膝はガクガク痙攣してた。
そしたら、いきなりトンネル内の照明がパッと点いたんだ。
何が起きたのか分からなかったが出口が目の前に見えた。
俺は最後の力を振り絞って一気に飛び出た。
外に出ると空気が刺すように冷たくて、背後の気配はいつの間にか消えてた。
俺はふらふらと立ち止まって、肩で息をしながら呼吸を落ち着かせた。
それから、ふと右足首に目を向けるとそこにくっきりと不気味な手形が残ってたんだ。
皮膚に食い込むような赤黒い痣が。
五本の指の跡がまるで爪跡みたいに。
しかも、俺が手の中に握ってたお守りはいつの間にか真っ二つに裂けてた。
裂けた箇所から飛び出てる綿を見て足の震えが止まらなかったよ。
まるで俺の内臓が飛び出てるように見えたからな。
そしたら、背後のトンネルから微かな声が聞こえてきたんだ。
金縛りにあった夜に耳にしたあの女の子の声が。
”……ドウシテ“って。
585:名無しのノイズ:2003/07/12(土) 03:13:24
ID:Qx9a7eVh0
こっから締めに入る。
それから電話で指示されてた神社に向かうと、白い装束姿の巫女さんが俺の前に現れたんだ。
どうやって依頼主が俺だと判断したのか分からない。
ただ、無表情のまま「これからの流れを説明します」とだけ簡潔に言われた。
電話で俺に指示をくれたあの女の名前は出なくて、結局俺は最後まで電話の霊媒師と会うことはなかった。
で、巫女さんは俺に小さな木箱を差し出してきた。
筆箱くらいのサイズなんだけど、表面が気持ち悪いお札でびっしり覆われてる。
いかにも呪われてますって感じの不気味な箱。
これを家に持ち帰って、神棚に安置しろと巫女さんは俺に指示を出した。
神棚は特に格式あるものでなくていい。
この箱が家にある限り、怨霊は俺に近づけないと。
巫女さんは最後に振込先の書かれた紙を俺に手渡して、依頼料をいついつまでに指定の口座に振り込めと告げた。
それが終わって初めて正式な手続きが完了になると。
俺と母ちゃんは何度もお辞儀して「ありがとうございます」と伝えたよ。
636:名無しのノイズ:2003/07/12(土) 03:16:10
ID:Qx9a7eVh0
途中、ホームセンターで安い神棚を買って家に設置した。
貰った箱を置いてみたけど変な重みがあって、振ってみると“カタカタ……”と硬い棒状のなにかが転がる音がした。
中身が何なのかは俺にも分からない。
箱を開ける勇気なんてなかったからな。
でも、その日から視線を感じることはなくなったんだ。
あの頭に響くヒスノイズも聞こえなくなった。
寝つきも少しずつ良くなって、あの日以前のいつもの日常に戻っていく感覚があった。
今となっては普通に働いてる。
これで俺の身に起きた心霊現象は全てだ。
ただ、ひとつだけ忠告したい。
軽い気持ちで真似するなと。
ちょっとした好奇心でテレビの砂嵐やヒスノイズに向かって話しかけるヤツがいるかもしれないが、マジでやめとけ。
半端な好奇心は取り返しのつかないことを招く。
取り憑かれたら普通の生活が壊れるし、それを除霊するのにどれだけの金と労力と精神力が必要だったか。
おまえらには想像もつかないだろうけど。
俺だってもう二度とあの怨霊の顔なんて見たくない。
今でもふとした瞬間にあの女の子の顔が脳裏をよぎることがあるからな。
除霊なんて一般人が経験するもんじゃないと断言できる。
以上だ。
長文スマン。
質問があればちょっとなら対応する。
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ここからいくつかの質問をやりとりしたところでスレッドはdat落ちしている。
当時はこの怪奇現象を再現しようと実況スレを立ち上げる者が後を絶たなかったが、ヒスノイズが聞こえることはなく、スレ主の創作だと結論づけられていた。
ただ、2025年11月に刊行された某オカルト月刊誌の女子大生インタビュー記事がこのネット怪談に酷似しており、最近になって「実は本当にあった話なのでは?」とオカルト掲示板の住民内で囁かれはじめている。




