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◆ネット怪談スレッド『ノイズ』 01


以下は2000年代初期に電子掲示板に投下された『ノイズ』と呼ばれるネット怪談を転載したもの。

スレ主の身に起きた怪奇現象が事細かに綴られている。


――――――――


1:名無しのノイズ:2003/07/12(土) 01:43:12

ID:Qx9a7eVh0


長文すまん。

半年くらい前に俺の身に起きたヤバい事件をおまえらと共有したいから書いてく。

身バレ防止で多少フェイク入れるが、まじで危険だから真似したい奴は自己責任で頼むぞ。

 

当時は実家に帰っていて二階の六畳間。

梅雨明け前でむっとする夜だった。

扇風機がカタカタ回ってて、窓の外は時々トラックの音が遠くを走るだけ。

毛布を被るほどでもなく、ダラダラと古いブラウン管テレビをつけっぱなしにして横になってたんだ。

テレビには砂嵐の画面と共に“ザーーーッ”っていうスノーノイズが流れてる状態。

なんでそんなの流してるかっていうと、残業続きで不眠症になった俺はスノーノイズを聴きながら寝るのが当時の習慣になってたから。

あの音を聞いてると落ち着くというか、仕事で蓄積されたストレスが緩和されるというか。

まぁ分かるやつには分かると思うが。

 

だけど、その日の夜はいつもと違って中々寝つけなかった。

久々の実家帰りだったからかもしれない。

で、何度も寝返りを繰り返してた時、ふと誰かがこの掲示板に書き込んでた都市伝説を思い出したんだ。

鏡に向かって「お前は誰だ!」って言い続けるやつ。

そうすると鏡の中の自分と現実の自分との境界があいまいになってゲシュタルト崩壊を引き起こすってやつね。

それで、中々寝つけないのもあって、なんとなくやってみたくなったんだが、今から起きて洗面台に行くのもめんどくさいし、どうしたもんかと思ってた矢先、たまたまテレビの砂嵐画面に薄っすら映る自分の顔に気づいたんだ。

もうこれでいいじゃんと。


21:名無しのノイズ:2003/07/12(土) 01:45:16

ID:Qx9a7eVh0


で、俺は軽い気持ちで何度もテレビ画面に向かって呟いた。

「お前は誰だ!」って独り言みたいに。


――お前は誰だ!

――お前は誰だ!

――お前は誰だ!


だけどまぁ当たり前のようになんの異常も起きなくて、途中でアホらしくなってそのまま寝落ちしちまったんだ。

それからちょっとして周囲の違和感で目が覚めた。

横目で時計を見たら真夜中の二時過ぎ。

 

さっきまで点いてたテレビの画面は消えてて、代わりに“サーーーッ”って変な異音が流れてる。

カセットテープから漏れ出るヒスノイズみたいな音、っていえば伝わるか?

あれ? 誰がテレビ消したんだ?って不審に思って首を動かそうとしても、なぜか動かない。

金縛りにあったみたいに体が沈み込んだまま仰向けで呼吸することしかできなかった。

そんな時、俺の近くでなにかが動く気配に気づいたんだ。


目を向けると枕のすぐ側でなにかが座っていた。

最初は誰かの悪ふざけかと思って怒鳴りつけようとしたんだが口が動かない。

枕横に座ってるそいつは見覚えのない女の子だった。

年齢でいうと5歳くらい。

おかっぱ頭で赤い和装みたいな服を着てたんだが、顔はしわしわで皮膚は歳をとり過ぎた老婆みたいに縮んでて、目は白い部分がなくて真っ黒。

近くで見ると瞳孔っていうより黒い塊がそこにある感じ。


28:名無しのノイズ:2003/07/12(土) 01:47:34

ID:Qx9a7eVh0


そいつは無言で俺の顔を眺めてた。

顔の表情はほとんど動かないのに、時々フクロウみたいに首を傾けて俺の顔を覗き込んでくる。

「うわ……」って心の中で叫んでも身体は動かない。

息遣いが俺の耳元まで届いてるようで本当に気持ち悪かった。

そうこうしていると周囲のヒスノイズに混じって変な声が聞こえてきたんだ。

“ドウシテ……”って。

テレビのスピーカーじゃなくて女の子の口元から直接漏れてるような感じ。

けど、明らかに子供の声じゃない。

なんていうか大人の女性が呻くような声。


その瞬間、急に視界がぼやけて布団の中に溺れていくように気を失った。

気づいたら朝になってて窓の外も明るくなってるし、テレビも消えてて変なヒスノイズも聞こえない。

布団の上で目をパチパチさせながら全部夢だったんだなって思った。

あの女の子の顔も記憶の端に残る程度で丁度いい笑い話になるとこの時は楽観視してたんだ。

だけど、この日を境に俺の日常はおかしくなっていった。


30:名無しのノイズ:2003/07/12(土) 01:49:41

ID:Qx9a7eVh0


最初におかしいと感じたのはイヤホンで音楽を聴いてたときだ。

当時は朝起きたらMDプレーヤーで音楽を流しながら河川敷を散歩するのが日課になってたんだが、あの夜を境に曲のイントロが流れると決まって“ジーーッ”とノイズが乗るようになった。

ほんの数秒。

最初は録音ミスを疑ったが、曲を変えても別のアルバムに変えても毎回同じ場所で鳴る。

しかも耳を澄ますとただのノイズじゃないんだ。

かすかに女の呻き声みたいな異音も混じってる。

イヤホンを外しても耳の奥に残響みたいにこびりついて、いつまでも頭から離れない。

おかげでスノーノイズを流しても眠れなくなり、俺の不眠症はさらに悪化した。


あとは風呂場での出来事だが、ある夜、湯船に浸かって目を閉じてたら突然「バンッ!」って背後のガラス戸を叩かれたんだ。

心臓が跳ねて一気に湯がこぼれた。

それと同時に鳴り始めるあの不快なヒス音。

ビビりながら振り返ると、曇ったガラス戸の向こうに変な影が透けて見えるんだよ。

小さな子供の影が両手をガラスに這わせてモゾモゾ這いつくばってるように。

俺はその場で硬直したまま湯船の中で息を潜めた。

というより、そいつが中に入って来ないことを祈りながらじっと耐えるしかなかった。

助けを呼ぶ声すら出せなかったからな。

ひたすら頭に浮かんだ南無阿弥陀仏を念仏みたいに唱え続けてた。


そしたら、そいつはガラス戸から遠ざかるようにふっと消えたんだ。

特に俺に危害を加えることもなく。

恐る恐る湯船から出て確認すると、曇ったガラス戸の表面にくっきりと子供の手形が残ってた。

それもただ結露がとれてできた手形じゃないんだ。

赤黒いシミみたいな手形がガラス戸の表面にべったりこびりついてる。

タオルで拭いても拭いても中々とれなくて、全身の震えが止まらなかった。

 

36:名無しのノイズ:2003/07/12(土) 01:51:25

ID:Qx9a7eVh0


それと、深夜に喉が渇いて台所でコップに水を汲んで飲んでたとき。

最初は普通の水だったんだ。

だけど、二口目を流し込むのと同時に何かが喉の奥に引っかかった。

繊維みたいなものが舌に絡まってうまく飲み込めない。

むせて、流しに吐き出したら赤い糸が口からずるずると出てくる。

それもどこで混入したんだってくらい何本も。

思わずコップを投げつけて流しから飛び退いたが、喉の奥にまだ糸が残ってる感覚が残ってて、俺はしばらく何も飲み込むことができなくなった。


それからというもの、俺は四六時中“誰かに見られてる”感覚が離れなくなった。

机に向かってても部屋の隅、押し入れの上、天井の角、ふとした瞬間になにかの視線を感じる。

振り返っても誰もいない。

けど、決まって赤い袖が視界の端を横切るんだ。

ほんの一瞬なのに全身が総毛立つ。

母ちゃんとふたりで昼飯を食べてる時も常に見られている視線が離れない。

テレビのバラエティ番組から笑い声が流れてて、普段の午後の光景のはずなのに箸を持つ手がふるえる。


42:名無しのノイズ:2003/07/12(土) 01:53:14

ID:Qx9a7eVh0


そしたら、ふと母ちゃんの肩越しにあの女の子の顔がゆっくり現れたんだ。

まるで長いこと水に浸かっていた水死体のように皮膚の縮んだ形相。

真っ黒な瞳が食卓の俺を覗き込むようじっと睨んでくる。

一瞬で現実感がなくなり、俺は椅子から転がり落ちて床に背中を打ち付けた。

母ちゃんは笑いながら「なにやってんの?」って俺の顔をみてたよ。

最初は冗談だと思ったんだと思う。

 

けど、俺の顔を見た途端、笑顔がこわばって真剣な顔になった。

「どしたん? なにがあったの?」って。

俺は大人になってはじめて泣きながら全部打ち明けた。

夜にテレビに向かって「お前は誰だ!」と繰り返した辺りから女の子の怨霊に取り憑かれてること。

風呂でも外を歩いてても常に誰かの視線を感じること。

水を飲むと赤い糸が喉に詰まること。

箇条書きみたいに全部畳み掛けた。


母ちゃんは最初は冗談だと思って軽く笑ってたけど、俺の震える手と青ざめた顔、目の据わり方を見てすぐに態度が変わった。

少し黙って考えこんだあと、低い声で「婆ちゃんに相談してみる」って言ったんだ。

なんでも、婆ちゃんは地元でも名の知れた霊媒師と顔見知りだって聞いたことがあるらしい。

俺は藁にも縋る思いで頷いた。


 


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