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◆某オカルト月刊誌 年末特別ラジオ企画


オカルト月刊誌●●●●年末特別ラジオ企画

【霊媒師Mと深夜に語るオカルト総括】

放送日:2025年12月26日 深夜25:00〜

 

出演:

編集部取材班(以下、編集部)

霊媒師M(以下、M氏)

 

――――――――――

 

編集部:

「こんばんは。

 オカルト月刊誌●●●●編集部の□□です。

 深夜零時をまわり、世間はすっかり寝静まっていますが皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

 今夜は年末特別企画としまして、今年本誌で最も反響の大きかったあの方をゲストにお招きしています。

 8月号での衝撃的な対談記事、そして昨年の『現代に生きる霊媒師の苦悩とその真実』にもご登場いただきました、霊媒師のM先生です。

 先生、今夜はよろしくお願いします」

 

M氏:

「ええ、よろしくお願いします。

 でも先生はやめてって言ったでしょ?

 特に偉い人でもないんだから。

 それにしてもラジオなんてはじめてだし緊張するわね。

 私の声、ちゃんと届いてるかしら?

 変なノイズとか混じってたりしない?(笑)」

 

編集部:

「ははは、笑えない冗談はやめてください。

 こんな夜中に心霊現象は勘弁願いたいですから。

 それにしてもM先生。

 8月号の対談記事、本当にすごい反響だったんですよ?

 読者アンケートでも『もっとMさんの話を聞きたい』『シリーズ化してほしい』といった声が殺到しまして。

 こうして年末のラジオ特番にお呼びしたのも読者の熱いリクエストがあったからこそなんです」

 

M氏:

「そうなの?

 なんだか意外だわ。

 そんなに需要があるなんて思いもしなかった。

 私の話したことなんて、ほとんど霊媒師の愚痴みたいなものだったのに」

 

編集部:

「いやいや、現職の霊媒師との対談なんて滅多にありませんから需要があって当然ですよ。

 特に我々編集部の印象に強く残っているのはヒステリアノイズの対談記事です。

 霊の波長が体の中に入り込み、自我が崩れる間際に耳にするという不快な怪気音。

 最終的には精神に異常をきたし、解離性障害に近い症状を引き起こすという対談内容でした。

 現代のストレス社会ともリンクする非常に興味深い、かつ恐ろしい内容でしたね」

 

M氏:

「ええ、霊的ノイズは本当に厄介よ。

 医学的には耳鳴りや幻聴で片付けられちゃうから。

 ヒステリアノイズが聞こえるってことは人間の魂が悲鳴を上げてる状態なのに。

 そういえば最近、そのノイズに関わる案件で愛知県の女子大生から連絡があったわね」

 

編集部:

「愛知県の女子大生?

 ああ、そういえば!

 編集部に電話がありましたね。

 たしか2、3週間くらい前だったかな。

 柳瀬さんでしたっけ?

 非常に切羽詰まった様子でどうしてもM先生に相談したいことがあると言われたのを覚えています。

 我々も連絡先なんて普段は教えたりしないんですけど、彼女があまりにも真剣だったからM先生に許可をいただいた上で教えましたけど」

 

M氏:

「ええ、そう柳瀬さん!

 礼儀正しくて少し大人びた話し方をする子だったわ。

 わざわざ伊勢にある私の事務所まで来てもらったの」

 

編集部:

「結局、彼女はどんな相談をしてきたのですか?

 電話では友達を探してるとしか言われませんでしたが」

 

M氏:

「同じ大学に通う友人が行方不明になったらしくて。

 名前は……亜香里さんだったかしら。

 その子が失踪する前に奇妙な行動をとってたらしいの」


編集部:

「奇妙な行動……ですか?」


M氏:

「そう。

 前回の対談で2000年代初期の電子掲示板に投稿されたネット怪談『ノイズ』の話題があったじゃない?

 あれを真似してスマホに映した砂嵐の画面に声を掛けたって。

 そしたら、そこから変なノイズ――私たちの言うところのヒステリアノイズね。

 それが聞こえるようになって女の子の声がすると怯えだしたみたい。

 スマホに何十時間もノイズを録音してね。

 で、最期には行方が分からなくなって警察の捜査も難航してるみたいなのよ」


編集部:

「なるほど……ネット怪談『ノイズ』ですか。

 たしか某大学生YouTuberも『ノイズ』を検証中に亡くなったと話題になってましたね。

 最近、やたらこの『ノイズ』に関わる事件が多くないですか?

 それで柳瀬さんはその友達を探すためにM先生に?」

 

M氏:

「ええ。

 なにか思い当たる節はないかって。

 申し訳ないけど私にも分からなかった。

 だけど、彼女自身も独自に調査を進めてて『ノイズ』に出てきた奥三河の山奥に友達が向かってるかもしれないから探しに行きますって。

 その前に何かアドバイスや霊的な対処法がないかとも聞かれたわ」

 

編集部:

「奥三河の山奥ですか。

 あの辺りは確かに有名な心霊スポットが点在してますからね」

 

M氏:

「正直に言わせてもらうとあの辺り一帯の魑魅魍魎には私でも関わりたくなかったのよ。

 あそこの山は深すぎて単なる浮遊霊や地縛霊の存在に収まりきらない。

 奥三河の山奥には古くから祀られてる厄介な土着神も巣食ってるし、触れちゃいけない禁忌が多すぎるの。

 下手に霊視なんてしたら、こっちが覗き返されるわ」

 

編集部:

「M先生がそこまで言うなんて、よっぽど危ない場所なんでしょうね。

 では、柳瀬さんにはなんと?

 行くなと止めたんですか?」

 

M氏:

「もちろん止めたわよ。

 あなたではもう手に負えない領域に来てるから、この辺りで手を引きなさいって。

 でも、彼女の決意は固かった。

 私が助けなきゃいけないんですの一点張りで私の忠告を聞き入れて貰えないの。

 仕方ないから、あとで愛知県の霊媒師の家系に連絡を入れておいたわ」

 

編集部:

「愛知県の霊媒師の家系?

 ああ!!

 昨年の対談で仰ってた愛知県で代々続く、あの……」

 

M氏:

「シッ! 声に出しちゃだめ。

 そう、昨年の対談であなたたちにこっそり教えてあげた霊媒師の一族。

 彼らの本拠地もあの辺りに近いから。

 本来なら私なんかが軽々しく連絡をとれる相手じゃないんだけど緊急事態だと思って。

 そちらのテリトリーに厄介なものに触れようとしている一般人が入り込むかもしれないって。

 できれば助けてあげて欲しいと柳瀬さんの電話番号と一緒に留守電に吹き込んでおいたわ」

 

編集部:

「それは心強いですね!

 その霊媒師が動いてくれるなら柳瀬さんも行方不明の亜香里さんも助かるんじゃないですか?

 彼らが手を差し伸べてくれるのか分かりませんが」

 

M氏:

「そうね。

 動いてくれればいいんだけど。

 ただ、私にはどうしても拭いきれない違和感がひとつだけあるのよ」

 

編集部:

「違和感?

 なんですかその違和感って?」

 

M氏:

「ねえ、編集さん。

 行方不明になった友達のために命の危険を冒してまで得体の知れない心霊スポットに突撃するなんて。

 ちょっと彼女、おかしいと思わない?」

 

編集部:

「……おかしいですか?

 うーん、まあ確かに無茶だとは思いますけど。

 それだけ大事な友人だったんじゃないです?

 女同士の熱い友情とでもいうか」

 

M氏:

「友情ねぇ……

 だって話を聞く限りだと昔からの幼馴染でもないのよ?

 大学に入ってから知り合った友人らしいわ。

 たかだか数年の付き合いでそこまでできる?

 ネットの怪談を真に受けて廃トンネルを探し回って私みたいな怪しい霊媒師にまで連絡をとって。

 私には違和感しか感じない。

 その執着心は正常な人間の行動範疇を超えてる気がするのよ」

 

編集部:

「言われてみれば確かに。

 赤の他人のためにそこまで人生を賭けられるかって考えると少々異常かもしれませんね」

 

M氏:

「でしょ?

 私の交友関係が狭いゆえにそう感じるだけならいいんだけど。

 でも事務所で彼女の話を聞いてたとき、ずっと背中の節々がゾワゾワしたの。

 言葉は理路整然としているのにどこか中身がないというか。

 なんとなくだけど、あの時にはもう彼女は何かに魅入られていて、自分が誰なのかも分かってなかったんじゃないかしら?」

 

編集部:

「自分が誰なのか分かってない?

 柳瀬さんがですか?」

 

M氏:

「そう。

 ヒステリアノイズの話に戻るけど、あれは霊の波長が体の中に入り込んで自我が崩れる間際に耳にするの。

 もしかしたら柳瀬さん自身も自我の境界線が曖昧になっているのかもしれない。

 彼女が探している亜香里さんなんて最初から存在しないのかもしれないし、あるいは行方不明になったのは別の誰かで電話をかけてきたのも彼女になりすました怪異だったのかも。

 彼女、しきりに『亜香里、亜香里』って名前を連呼してたんだけど、まるで自分自身に言い聞かせてるみたいだったの。

 私は亜香里を探している柳瀬だって設定を頑なに守ろうとしてるみたいに」

 

編集部:

「M先生、それはちょっと怖すぎますよ。

 さすがに考えすぎじゃないですか?」

 

M氏:

「ふふ、ごめんなさいね。

 これはあくまでも私の直感。

 ただの勘違いならいいんだけど。

 ただ、もし彼女が奥三河の山奥に辿り着いて、あの霊媒師の一族との接触があったら。

 その時こそ本当の答え合わせが待ってるでしょうね。

 さて、そろそろ時間かしら?

 なんだかスタジオの空気が急に冷たくなってきたみたいだし」

 

編集部:

「…………は、はい。

 背筋が凍るとはまさにこのことですね。

 M先生、今夜は貴重なお時間を頂きありがとうございました。

 リスナーの皆さんも、このあと不快なヒスノイズを耳にしても問いかけたりせず両耳を塞いでくださいね。

 それでは良いお年を」



 

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