ヒスノイズ 01
聞いてください。
この書き込みを読んでるってことは、きっとオカルト系の趣味に精通している方なんだと思います。
私は愛知県の某●●●●大学に通う者です。
名前は柳瀬佳織といいます。
これはただの怖い話なんかじゃなくて……私にとってはとても大事なことなんです。
先月刊行された某オカルト系月刊誌の女子大生インタビュー記事。
あの記事に出ていた女子大生は私の一番の親友であり、本名は佐藤亜香里。
地方のニュースでも実名で取り上げられているのでご存知の方も多いと思いますが、亜香里は今も行方不明のままなんです。
警察の調査も難航しているようで一向に進展がありません。
私が亜香里と初めて出会ったのは大学に入ってしばらく経った頃でした。
私は人見知りでずっと大学の図書室で本を読んでばかりいたとき、後ろから「ねぇ、ホラー小説とか好き?」って声をかけてきたのが亜香里でした。
茶髪で派手めのメイクにネイルまでしてて、まさにイケイケなギャルって感じ。
地味で暗い私とは正反対の存在だったから最初はびっくりして返事も詰まったのを覚えています。
でも、あの子は全然気にしないで隣に腰かけると分厚いオカルト系の本を開いて「これヤバくない?」って笑いながら話しかけてきたんです。
それから自然と一緒にいることが増えて、気づけば大学で一番の親友になっていました。
亜香里は元々ちょっと変わった子で、怖いもの知らずというか好奇心の塊みたいなところがあって。
大学の講義をほっぽり出して心霊スポットに誘ってきたり、ネットで拾ったオカルト系の記事をスクショして夜中に「見て見て!」と送りつけてきたり。
正直、私は怖い話の類いが苦手だったので反応に困ることも多かったんですけど、あの子の明るさに救われていたのも事実です。
私は亜香里以外に大学で友人が居なかったので。
でも、数か月前から急に亜香里はおかしくなりました。
教室で普通に話していたはずなのに急にピタッと黙り込んだかと思えば、勢いよく後ろを振り返る。
「どうしたの?」って尋ねても、「なんでもない」と曖昧に笑って答えるだけ。
引きつった笑顔のまま、目だけがどこか怯えたように泳いでいたのを覚えています。
そのうち亜香里はスマホのボイスメモに何時間も録音を溜め込むようになりました。
休み時間に聞かせてくれるのですが、アナログ磁気テープを再生したような“サーーーッ”というヒス音が録音されてるだけ。
でも、亜香里は真剣な顔で再生を止めて「今、女の子の声が聞こえたでしょ?」って言うんです。
私には何も聞こえないのに。
ある夜なんて突然電話がかかってきて、泣きじゃくりながら「また聞こえた……女の子が呼んでる……」と騒ぐんです。
耳鳴りが止まらない。
耳鳴りの中に変な声も混じってるって。
その声があまりに必死で私まで背筋が凍りつきました。
でも、私は怖くてまともに取り合えなかった。
「疲れてるだけだよ」とか「寝不足で幻聴が聞こえたんだよ」と誤魔化して、無理に笑い飛ばしてしまったんです。
けど、今思えばあの時、もっと真剣に耳を傾けてあげるべきでした。
亜香里の様子は日に日に悪化していき、授業中も天井や講義室の隅ばかりみつめて、ノートには奇妙な文字や気味の悪いフレーズを延々と書き殴っていました。
誰かに見せるわけでもなく書いては消して、書いては消してを繰り返して。
たまに目が合うとニコッと微笑みかけてくる。
そんな亜香里の表情が怖くて、私は見て見ぬふりをすることしかできませんでした。
そして、あのオカルト雑誌のインタビュー記事。
あれは間違いなく亜香里です。
話し方も癖もそのまま。
あの子は最後まで「信じて」って必死に訴えかけていたんです。
それなのに私は親友の声を無視してしまった。
本当に最低です。
だから今、私は亜香里を探すため必死に動いています。
オカルト掲示板や雑誌記事を何時間も漁り、ノイズにまつわる体験談を片っ端から集めて。
動画広告の砂嵐、ラジオの雑音、古い磁気テープから漏れるヒス音、それらにまつわる体験談をすべて。
睡眠時間も削って授業だってまともに出ていません。
周りからは冷ややかな目で見られていますが、それでもやめられない。
警察もオカルト系の話なんて相手にしないだろうし、亜香里を探せるのは私ぐらいしかいないから。
私がやめたら、もうあの子は二度と戻ってこれなくなるかもしれない。
だからお願いです。
もしあなたが同じような体験をしたことがあるなら、何でもいい。
深夜、テレビの砂嵐から声が聞こえたとか、ラジオのノイズに誰かの囁き声が混じってたとか。
どんな些細なことでもいいので教えてください。
それが亜香里の行方を掴む手掛かりになるかもしれないので。
私はこの作品「ヒスノイズ」の筆者として、亜香里の失踪に関係してそうな記事があればタイトルの頭に◆をつけて投稿していきます。
もちろん、皆様から頂いた情報も含めてです。
どうかご協力をお願いいたします。




