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◆某昆虫ブロガーのムカデ飼育記事


【ブログタイトル】

昆虫マニア●●の奇蟲飼育ブログ


2023年を最後に更新が途絶えているブログ。

以下はその中から奥三河のムカデに関する記事を転記したもの。

虫が苦手な人は閲覧注意。

 

――2023年5月11日(木)――

 

タイトル:いざ戦場へ! 奥三河の山奥で大型ムカデをハント!


今日は昆虫愛好家のRくんと一緒に愛知県の奥三河にある山奥まで虫取りに行ってきました!

いや、厳密に言えば奇蟲ハントだな。

奥三河は愛知県の東部、深い山々に囲まれた秘境なんだけど、ここには知る人ぞ知るムカデの聖地がある。

他の山ではみられない大型のムカデが湿った落ち葉や朽木の裏に文字通りウジャウジャ。

もう、その光景はマニアにとっては至高の楽園!

今回の狙いは本州に生息するムカデの中でも最大級を誇るトビズムカデ。

赤褐色の胴体と黄色の脚が映えるムカデなんだけど、無事、状態の良い個体を数匹捕まえることができました。

ケージの中で蠢く彼らを見て興奮が止まらない。


荒らされると困るから具体的な場所までは教えられないけど本当にいい採取ポイントでした。

ちなみにムカデは昆虫じゃないよ。

体節ごとに1対ずつ脚がある節足動物で、いわゆる多足類に分類されるんだ。

でも、奇蟲マニアとしては外せない推しジャンルなんだよね。

奥三河からの帰り道、Rくんが唐突に「この辺のムカデって夜になると鳴くらしいよ?」なんて呟いてたけど、笑って流しといた。

ムカデが鳴くわけないじゃん。

声帯なんてないんだから。


――2023年5月12日(金)――

 

タイトル:母ムカデは愛が深い? 新しい家族の観察日記


奥三河の山奥で捕まえてきたムカデたちは今のところみんな元気!

新しい環境にもすぐに順応してくれたみたい。

餌として与えたレッドローチも選り好みせず、シャクシャクと音を立てて食べてくれてる。

腹の膨らみ具合からして、もしかしたら産卵が近いのかも。


ムカデって実は母性の強い生き物なんだ。

産卵した卵を背中に抱えてカビや乾燥から守ったり、ときには優しく舐めて卵を清潔に保つっていうんだから驚きだ。

母ムカデが卵を保護するから子ムカデが孵化する確率も高くなる。

卵はだいたい一ヶ月くらいで孵化するんだけど孵化したばかりの子ムカデは親離れするまで、さらに二ヶ月ほど母ムカデと一緒に過ごすんだ。

獰猛な見た目とは裏腹に子供想いなんだよね。

この生態を知るとムカデに対する見方が変わってくる人も多いんじゃないかな?

最近は人間でも育児放棄する親が多いって聞くし。

うちの子たちもいつかそんな愛情深い親になってくれると嬉しいな。

 

――2023年5月13日(土)――

 

タイトル:【衝撃】奥三河のムカデが鳴いた!

 

今日、衝撃の出来事が起こりました!

奥三河の山奥で捕まえたトビズムカデが飼育ケージの中で鳴き声をあげたんです!

“ジジジ”って断続的な変な鳴き声。

昆虫愛好家のRくんが言ってた「奥三河のムカデは夜になると鳴く」って噂は本当だったみたい。

ちなみにムカデに声帯はないから、もちろん鳴く構造は持ち合わせていない。

コオロギやスズムシみたいに発音器官があるわけでもない。

おそらく、あの音はムカデが威嚇したり興奮したときに硬い甲殻同士が擦れてジリジリ鳴ってるんだと思う。

となると、奥三河のトビズムカデは他の地域のムカデと比べて甲殻の形状が特殊なのかな?

それとも、あの地域の土壌の成分が甲殻の硬度に影響しているのかも。

興味深い生態だ。

この鳴き声のメカニズムを解明できればネットでも注目の的になるかもしれない。

だけど夜中に鳴かれると結構頭に響くんだよな……

 

――2023年5月14日(日)――

 

タイトル:【異常事態】ムカデたちが狂ったように動き回る

 

奥三河のムカデたちの様子がおかしい。

ムカデは夜行性だから日中は石や落ち葉の下に隠れてじっとしているはずなのに、今日は朝からずっと飼育ケージの中を這い回ってる。

なにかに駆り立てられるようにケージの壁に頭をぶつけたり、体当たりを繰り返したりする個体もいる。

まるでなにかに怯えてるみたいだ。

その際の甲殻の擦れる音が昨日の“ジジジ”よりもさらに大きく不規則に響く。


そのうち外傷を負って死んでしまわないか心配になる。

長年ムカデを飼育してるけど、こんなに激しい動きを繰り返す個体は見たことない。

なんらかのストレスが掛かっているのかも。

だけど湿度・温度・餌、どれを見直してもおかしなところはなかった。

奥三河の山から変なものを持ち帰ってしまったのかな?

虫に寄生するボーベリア菌とかカビの胞子とか。

 

――2023年5月15日(月)――

 

タイトル:鳴き声が止まらない。耳鳴りになりそうだ

 

ムカデたちの鳴き声が一向にやまない。

特に深夜、ケージの置いてある部屋だけじゃなくて自分の寝ている寝室にまで、あの“ジジジ”という断続音が響いてくる。

まるで誰かが部屋の壁に爪を立てて擦ってるみたいだ。

このままだと耳鳴りで頭がおかしくなりそう。

翌朝にも響いてまったく仕事に集中できないし、こんな調子じゃいつか倒れてしまう。

でも、せっかく捕まえてきたムカデをその辺に逃すわけにもいかないし……どうしたもんか。

昆虫マニアのプライドが邪魔をする。

まさか、こんな騒音問題になるとは思わなかった。

今夜もあの音を耳にすると思うと憂鬱だ。

 

――2023年5月16日(火)――

 

タイトル:【悲報】職場に紛れ込んだムカデ

 

今日は職場で背筋の凍る出来事があった。

自分のリュックの中からムカデが一匹這い出てきて大騒ぎになったんだ。

そのムカデはすぐに捕獲したけど、同僚からは「なに飼ってんだ!?」って白い目で見られるし。

いつの間に飼育ケージから逃げ出したんだろうか。

自宅に帰ってから飼育ケージを確認しても数は全部揃ってたし。

捕まえたムカデ以外にも服や荷物に引っ付いてきた個体がいたのかな?

急いで家中の荷物をチェックしないと。

家の中にまだ潜んでいるとしたら洒落にならない。

寝てるときに噛まれでもしたら大変だ。

 

――2023年5月17日(水)――

 

タイトル:原因不明。奥三河のムカデが次々死んでいく

 

最悪だ。

奥三河で捕まえてきたムカデが一夜にして数匹死んだ。

原因はあの激しい運動、つまりケージへの体当たりからきてるんだと思う。

死骸を調べてみたけど特に目立った外傷もなく、外見からは判断がつかない。

餌もよく食べてたのに死因がさっぱり分からん。

こんなに短期間で何匹も亡くなるなんて異常すぎる。

それに、ここ数日ずっと続いている“ジジジ”って鳴き声。

最近は苦し紛れの断末魔のようにも思えてきた。

まるで何かから必死に逃げ出そうとしているみたいだ。

生き残ってる個体もいまだに激しく動き回ってるし、活動量が多すぎて過労死してるんだろうか。

見ているだけで胸がざわつく。

 

――2023年5月18日(木)――

 

タイトル:ムカデ全滅。そして他の虫たちも……

 

信じられない。

奥三河で捕まえてきたムカデが全滅した。

本来ムカデは環境さえ整えば丈夫で長生きする生き物のはずなのに。

こんなことはありえない。

さらに恐ろしいことに今度はムカデ以外の虫、つまり飼育していたカブトムシやゴキブリ、タランチュラまでぽつぽつ死にはじめている。

ひっくり返ってピクリとも動かない。

やっぱり変な菌を家に持ち込んじゃったのか?

ムカデが死んだケージは他の虫とは完全に隔離して消毒もしたのにな。

まるで何かが我が家の虫たちを皆殺しにしようとしているみたいだ。

 

――2023年5月19日(金)――

 

タイトル:【休止】立ち直れない。

 

朝起きたら飼ってた虫がすべて死骸になってた。

もう何が起こったのか理解する気持ちにもなれない。

しばらく、この喪失感から立ち直れそうにない。

何十年と続けてきた昆虫飼育がこんな形で終わりを迎えるなんて。

あの奥三河のムカデのせいか変な耳鳴りもずっと続いてるし。

ムカデは全て死んだのにまだ耳の奥底でなにかが這い回ってる音がする。

断続的な“ジジジ”って嫌な音が。

しばらく昆虫飼育とは距離を置こうと思う。

ケージを片付けて早くこの異様な空間から離れないと。


――――――――


この日を境にブログの更新は止まっている。

コメント欄には心配する読者の書き込みがいくつも残されていた。


「大丈夫ですか? いつか復活すること願ってます」

「奥三河のムカデってどこの山で捕まえたんですか?」

「最後の“ジジジ”って、結局何の音?」


2023年5月19日を最後にブログ主のSNSもすべて非公開になっている。

共同で奥三河に行った昆虫愛好家のRくんのアカウントも同時期に削除されてしまった。


 

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