◆テレビニュースの書き起こし[2024年6月19日]
【YouTuberが動画配信中に自らの腹部刺す】
――いったいなにが彼を突き動かしたのか
以下は2024年6月19日に放映された夕方のテレビニュース番組を文字起こししたもの。
<スタジオ>
ニュースキャスター:
こんばんは。
ニュース●●●●の時間です。
若者を中心に人気を集めていた某大学生YouTuberが動画のライブ配信中に自らの腹部を刃物で刺し、死亡するという痛ましい事件が発生しました。
ナレーション(VTR):
事件が起きたのは昨夜未明。
亡くなったのは愛知県内の●●●●大学に通う大学生、下島拓也さん(22歳)です。
下島さんは登録者数およそ20万人のチャンネルを運営する人気YouTuberとして知られており、主にエンタメ系や都市伝説検証の動画を中心に配信していました。
事件当日のライブ配信は約数千人が視聴しており、配信直後は視聴者との穏やかなやり取りが続いていたものの、日付が変わって午前0時過ぎ。
下島さんは突如、カメラの前で刃物を取り出し自らの腹部を強く刺したのです。
視聴者からの通報を受け、すぐに警察と救急が駆けつけましたが、すでに下島さんの意識はなく心肺停止状態でした。
その後、搬送先の病院で下島さんの死亡が確認されました。
コメンテーター(社会学者):
衝撃的な事件ですね。
大勢の視聴者のいる前でなぜこのような蛮行に及んでしまったのか。
言葉もありません。
ニュースキャスター:
現場の状況から自殺の可能性が高いと見て捜査が進められていますが、現在も動機は不明とのことです。
また、配信された衝撃的な映像を収めた該当の動画はプラットフォーム運営側の判断により、すでに閲覧ができなくなっています。
コメンテーター(社会学者):
当然の対応でしょう。
しかし、その瞬間を目撃してしまった視聴者の精神的ショックを考えると心が痛みます。
特に若年層の視聴者が多かったと伺っていますので。
彼らの負ったトラウマは計り知れません。
ニュースキャスター:
この事件はインターネット上の書き込みでも大きな波紋を呼んでいます。
最近のYouTuberを取り巻く環境について、●●さんはどうお考えでしょうか?
やはり、動画の視聴回数を増やすために過激化が進んでいる側面もあるのでしょうか?
コメンテーター(社会学者):
その可能性は否定できません。
現在の動画配信プラットフォームは良くも悪くも再生回数が配信者の収益や評価に直結します。
そのため、多くの配信者がいかに注目を集めるかというプレッシャーにさらされています。
中には倫理的な一線を越えるような、あるいは身体的な危険を伴うような『なんでもあり』の企画に走るケースも多いです。
ニュースキャスター:
今回の事件もその延長線上、つまり『演出』の予定だった可能性は考えられないでしょうか?
コメンテーター(社会学者):
あくまで推測の域を出ませんが可能性としては考慮すべきでしょう。
例えば動画の引き、つまり視聴者を惹きつけるための衝撃的な演出として自らの腹部を刺すという企画を用意していた場合、ここにある種のミスが介在していた可能性も考えられます。
例えばマジックナイフ。
ナイフによっては手品用に刃先を引っ込められるものもありますから。
もし仮に、下島さんがそういった小道具を用意していたにもかかわらず、手違いで本物のナイフと取り間違えていたら。
ライブ配信中というぶっつけ本番で思わぬ事態を招いてしまっていたのかもしれません。
配信内容もオカルト系の都市伝説検証だったと伺っていますので。
ニュースキャスター:
しかし、そんなことが起こり得るでしょうか?
人命に関わる道具を取り違えるなんて。
コメンテーター(社会学者):
さあ、どうでしょうか。
繰り返しますが、これはあくまで私の考えうる可能性のひとつに過ぎません。
特に現代社会は過剰なストレスによって注意力散漫になりがちですので。
ましてや、ライブ配信という緊張感の中で判断力が鈍ってしまった可能性はあります。
ニュースキャスター:
確かに状況が状況ですからねぇ。
あくまで自殺の方向で捜査は進んでいくと思われますが、ここでひとつインターネット上で話題になっている視聴者の興味深い証言をお伝えします。
ナレーション(VTR):
動画配信中に悲惨な最期を迎えた下島さん。
当時、配信を視聴していた視聴者からは興味深い証言が次々と寄せられました。
視聴者は口を揃えて『下島さんが腹部を刺す直前、不自然な間があった』と言うのです。
『突然、下島さんの動きが止まり様子がおかしかった』『まるで何かに怯えたような、あるいは何かをみつけて視線を奪われたような顔をしていた』という声も上がっています。
さらに奇妙なノイズが配信中に流れていたという話も。
下島さんがナイフを取り出したのは、その『間』の直後だったとのことでした。
コメンテーター(社会学者):
……蛮行に至るまでの『間』ですか。
それに配信中に何かをみつけて視線を奪われていたと。
配信中の部屋には下島さん以外いなかったはずですが。
ニュースキャスター:
はい、そのためインターネット上ではオカルト的な憶測も飛び交いはじめています。
実は配信中に下島さんの部屋に忍び込んだ第三者がいたのではないか。
あるいは霊的な超常現象が起きて下島さんの蛮行を促したのではないか、といった根拠のない憶測です。
コメンテーター(社会学者):
噂は誇張されて広がりますからね。
ましてや、このような不可解な事件は人々の不安や好奇心を増幅させ、現実離れした物語を作り上げる傾向にあります。
過激な妄想が若者の心理に悪影響を及ぼさないよう社会全体で注視する必要があるかと。
私はそのようなオカルトの類いを信じていないので構いませんが。
ニュースキャスター:
そうですね。
何事にも冷静な判断が必要です。
ナレーション(VTR):
警察は現在、下島さんの遺体、部屋に残されたナイフ、そして配信に使われていたパソコンなどのデジタル機器を捜査中とのこと。
現時点、下島さんの部屋に第三者が侵入した形跡は確認されていないと発表しています。
動機についても友人や大学関係者、当時の視聴者への聞き取りを進めており、自殺の可能性が高いものの他殺の可能性も排除せず、慎重に捜査を進めていく方針です。
ニュースキャスター:
改めて腹部を刺した動機はなんだったのか。
配信者として人気が出始めた矢先の出来事であり、彼の不可解な行動、そして直前にあったとされる『間』。
この事件には不可解な点があまりにも多く、人々の関心を集めています。
コメンテーター(社会学者):
残されたご家族やご友人も動機が分からなければ気持ちの整理もつかないでしょう。
ひとりの若者の命がなぜこのような形で失われてしまったのか。
警察の徹底した捜査による真相解明を期待します。
ニュースキャスター:
引き続きこの事件に関する情報が入り次第、改めてお伝えさせて頂きます。
(カメラが切り替わり、次のニュースへ)




