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廃業 VS 便意


「おばちゃーん! どぶ掃除終わったよー!」

「あら! もう終わっちゃったの!? 評判通りね~」


 俺はこの国の王女を脱糞させた異世界転移者、改めどぶ洗いのトト!

 チート能力《ウォシュレット》でどぶ掃除をさっくりと終わらせた俺は、既に冒険者見習いを卒業していた。

 にも関わらず引き続きどぶ掃除を請け負っているのは、これがとても割のいい仕事だからだ。


 どぶ掃除というのは、いわゆる3K仕事だ。つまり、臭い、汚い、危険。

 危険、というのは一見どぶ掃除とは無関係に思えるが、この世界では破傷風の恐れがある。あれ、破風傷だっけ? まぁどっちでもいいや。

 まぁそんなわけで、本来であれば拘束時間が長く、人気が無く、作業時間に対して実入りの悪い、現代風に言えば時給が低い仕事であるどぶ掃除だが、俺の場合は話が異なる。


 《ウォシュレット》をジェット水流のように使って、楽々どぶ掃除が出来るのだ。

 明らかに異様な光景で俺がいた痕跡を残すわけにはいかないので、真面目にどぶ掃除をしている風を装う必要はあるのだが、その作業効率は常人の数倍!

 こうして俺は、どぶ掃除で着実に資金を蓄えて、


「トトさん、これ以上どぶ掃除の仕事を受けることは出来ません」

「なんで!?」


 と思っていたら、受付のお姉さんにどぶ掃除キャンセルを食らったのであった。


「あのですね、どぶ掃除というのは本来、見習い用の仕事なんです。最近は新規に冒険者になる人が減っていたので数が溜まっていましたが、トトさんがものすごい勢いで消化していくもので」

「もう残ってない? でもまだ何枚かあったよね?」

「見習い用の分が残らなくなる、と言っているんです」



 どぶ洗いのトト、廃業―――!



「他の仕事も探されてはいかがですか? そうだ、魔法の使い方が分からないとおっしゃってましたよね。適性検査と講義を受けてみてはどうでしょう」

「あ、そういえばあったねそんなの」


 どぶ掃除で楽に稼げるんでうっかり忘れてた。

 あとは国外脱出の準備も進めないとな。少なくとも、空を飛べる魔法が存在するかどうかだけは確認しておく必要がある。


 で、パパッと適性検査を受けて、魔法の講義も受けてきた。

 結論から言うと、俺の魔法適正は水魔法だけだった。たぶん《ウォシュレット》の副作用というか副産物的なやつだ。


 魔法の属性は結構数が多くて、水、火、風、岩、であーテンプレテンプレ、って思ってたら土、鋼、と続いてポケモンかぁ~? 光、闇、ほなポケモンちゃうかぁ……。草、格闘、やっぱポケモンか? 武器、鎧、やっぱポケモンちゃうかぁ……。他に精神とか霊とか念動とかなんか色々あって、それぞれに有効だったり効果が低かったり無効化されたりといった相性があるらしくて、俺はもう覚えるのをあきらめた。どうせ水魔法にしか適性なかったし。


 あ、ちなみに空を飛べるような魔法はないらしい。これで安心していざとなったら空からの国外脱出が出来るぜ。


「回復魔法ってないんだね」

「あ? そりゃあおとぎ話の世界だぜ」


 話し相手は以前に俺が《ウォシュレット》で失禁(未遂)させてしまった冒険者のおっちゃんだ。真面目にどぶ掃除をし続けた俺を見ていたらしく、知らないうちに見直されていたらしい。今日も昼間から飲酒中だった。


「光魔法っていかにも回復しそうなイメージなのに」

「どこがだよ。光魔法は杖とか体のどっかを光らせるだけだぜ。夜とか洞窟とかだと役立つんだが、回復要素なんてカケラも無ぇよ」

「あーなるほど」

「回復魔法って言われてイメージするのは、草魔法と格闘魔法だな」

「え? なんで?」

「薬って葉っぱから作ったりするだろ。草魔法は植物から成分とかを取り出す魔法なんだよ」

「えーっと、草魔法って、植物を操ったりするんじゃないの?」

「あ? そりゃ霊魔法や念動魔法でやることだろ。で、格闘魔法は怪我の治りが良くなるって噂だ」

「噂?」

「格闘魔法は常時発動し続けてるらしくてな。俺も格闘魔法に適性があるが、正直使ってる自覚は全く無ぇ」

「早いの? 怪我の治り」

「比べたことねえんだから知らね」

「えぇ~、自分の能力の事なんだから、そこは把握しておこうよ」

「坊主だって水魔法の適性を把握してなかったじゃねえか。どぶ掃除の時にも気付かねぇうちに発動してたんじゃねえか?」

「もう分かんないよそんなの。どぶ掃除はもうおしまいって言われちゃったし。


 ちなみに水魔法は自分の体や杖などから水を発射する魔法だ。《ウォシュレット》みたいに対象を指定して発動するような魔法ではないらしく、俺の水魔法でお漏らしさせたとは疑われていなかった。

 というより『対象を指定する』という魔法は非常に珍しいらしく、霊魔法や念動魔法くらいしかないという話だ。基本的にほとんどの魔法は、『体のどこかに発現する』『体のどこかから発射する』というものだと教えてもらった。


「それで、俺のこの水魔法、どうやって仕事に生かしたらいいと思う?」

「皿洗いでもやったらどうだ。ここの飯屋も忙しそうにしてんだろ」


 ためにならないアドバイスだなぁ……。


「う~んこれからどうやってお金を稼ごう」


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