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幕間 然る物語
斯くて、序章は幕を引き、一人の悪鬼が、世に生まれ落ちた。
対するは『世界』そのもの。壊すこと能わぬ絶対理。
この戦いに正義は、ない。
仁も義も道も彼の行いを肯定する概念は何一つとして、ない。
当然である。
そもそも善悪とは世界が、その理を握する王が定める物。
善が故に絶対ではなく、絶対が故に善なのである。
詰まる所、此処、神忘の地【フォアゴット】においては、彼の存在こそが、悪に他ならない。
だが、感情、こと『怒り』というものは、善悪理非で説明がつくものではない。
自らの胎の中で渦巻く悪性と、世界を壊す罪科を背負う覚悟があるのならば。
報復を、あの日の報いを望むのであれば。
――然るに、汝。
魔を喰い殺せよ。
法を喰い殺せよ。
王を喰い殺せよ。
世界を喰い殺せよ。
愚かしくも、力の限り、自らのエゴとイドの赴くままに蹂躙するがいい。
此れなるは復讐の物語。
異なる世界の理に全てを奪われた少年の、叛逆と破壊の物語。
或いは、彼がこの先切り拓くであろう血と屍の道を指して、こう名付けよう。
<《《勇者》》:《《復讐者》》>。