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やらかした神と契約したアルバイト使徒

作者: 真中砦

とりあえず書きたかったので書くだけ書きました。

 ある日。

 僕は世界を統べる神とやらによって、神の世界に喚ばれた。


「私は神。世界を管理し安定をもたらす者である」

「いきなり何ですか?急に喚ばれても困りますが」


 学校の帰り道にいきなりである。そりゃあ、こっちにも都合というものがある。


「いや、私、神なんだけど。ちょっとは敬ってよ」

「人を問答無用で拉致るような神の何を敬えと?」

「そ、それは申し訳なく思っとるよ。でも、こっちも切羽つまっててね」


 急に威厳とやらが吹き飛んで、しどろもどろになる神とやら。

 すげぇ人間臭い。めっちゃ光ってるけど、人型のソレが右往左往しているのがよく分かる。


「神事異動とかでさ、元々この世界を管理していた神から引き継ぎしたんだけどね。教え方が下手なヤツでさ。マニュアルすら残さないでさっさと異動しちゃったんだよね」

「それで?僕を喚んだ理由は?」

「神の力にね、『英雄召喚』ってのがあって、この窮地を救うのに最もふさわしい者を喚ぶって説明にあったから、とりあえず私が窮地だし使ってみたら君が喚ばれたってワケ」


 うわぁ、コイツ。仕事する上で下調べをしないタイプだ。

 行動力はあるけど大概やらかす。

 いわゆる『無能の働き者』に分類されるやつ。

 組織で最も先に切り落とすべきタイプのヤツがトップとか、この世界終わってんな。


「おいおい。それはちょっと酷いんじゃないか?」

「勝手に僕の思考を読まないでください」

「あ、読めなくなった!神の力に対抗するとか君なんなの!?」

「どうでもいいです。さっさと僕を元の世界に戻してくれませんか?」

「我の強い子だね。元の世界に戻せなくはないけど、私の仕事をちょっとだけ手伝ってくれないかな?」


 ピカピカの人型が手を合わせて拝むような、いわゆる『お願い』的な仕草をする。

 お前神だろ。合掌してんじゃねーよ。


「やるかやらないかは別にして、一体何を手伝って欲しいんだ?」

「あれ?タメ口?急に?」

「見た目はともかく、中身が残念なお前に敬語とか使いたくない」

「残念とか言うな!」


 両手をブンブン振り回して怒る姿は子供みたいだ。

 いや、コイツ子供なのか?


「お前。神になってそんなに時間経ってないのか?」

「お前って・・・人間の時間概念に比べたらアレだけど、2000年とちょっと。人間に換算すれば15~6年位かな」

「年下かよ」

「換算前なら十分年上だよ!」


 神の世界がどんな仕組みかは知らんが、ど新人もいいとこのコイツに世界を丸投げするとか。


「正気か?」

「あ、ちょっと読めた!ど新神で悪かったな!」

「言い直すな。で、質問の答えを聞いていない」

「ハイハイ。態度まででかくなってきてるよ」


 こいつは年下で、我儘な無能のガキと認定した以上当然だ。


「君にお願いしたいのは神器の回収」

「は?」

「いきなり世界を統治しろと言われてもさ、どうやって治めたらいいか分からなかったから、とりあえず担当エリアを部下に分配して任せたワケ。でも、部下と言っても神でなく神の子。要するにただの人だから、そこそこの力しかなくてさ、仕方ないから神器を与えてやったら一応は上手くいってたんだよね」


 嗚呼。そこまで聞いて僕は察した。


「そしたらさ、神器を持った神の子が慢心しちゃってさ、地上でやりたい放題始めちゃった」


 だろうね。


「いや、全員が全員ってわけじゃないよ。中には私を崇めてくれる、ちゃんとした神の子もいるけど、総じてそういう子は劣勢に追い込まれちゃっているんだよね」


 そりゃそうだ。神器とやらの力がどれほどかは知らないが、その力を我が物顔でふるうヤツとそうでないヤツじゃ勢力に差が生まれるのは必然だ。


「そういうことか。その神器を僕に回収させたいんだな」

「そうそう。英雄召喚の際に込めた願いがそれ」

「あのさ、お前が与えたんだから力づくで奪うなり、回収すればいいじゃないか」

「私は神の世界を管理する立場ではあるけど、その部下が担当する地上までは権限が及ばないんだよね。困った困った」


 ピカピカに光っているから表情は分からないが、すげぇムカツク顔してんだろうな。


「つまりあれか?お前の部下の神の子とやらは神の世界じゃなくて地上に降りている。だからお前は手が出せない。ここまでは合っているか?」

「そうだね」

「その神器を奪えば、好き勝手やってる神の子とやらは大人しくなるのか?」

「神器さえ奪ってしまえばただの人さ。私が裁くまでもなく、好き放題やっていた報いを受けることになるだろうね」

「なるほどな。十分にヘイトは溜まっているってか」

「何度も言うけど、全員がそうじゃないからね。ちゃんとしている子が対抗できているのは、周囲の人間がその子を中心に団結しているからって所もあるんだから」


 本来はそれが正しい姿なのだという。


「やがてそれは信仰心となって、神の世界に届くことで私たちの力を増す要因となるのだけど」

「好き放題やられて信仰心どころじゃないか」


 ピカピカの人型に哀愁ともいうか、一瞬だけ陰りが見えた。


「神の世界もいくつかのエリアに分かれていてね。その中で私が継ぐことになったここは端の端っこ。碌に文明も育っていない世界の寄せ集めを管理している部署なのさ」


 なんだ。お偉いさんも分かってたのか。要するに窓際人事ってやつだな。

 成功すれば御の字。失敗しても痛くもかゆくもない。


「その通りさ。前職のあのクソったれ!やらかした失敗を全部私のせいにしてとんずらしやがった!」


 こいつ堕天しそうだな。


「私だって頑張ったんだ。でも、その努力が空回りしているのだって理解している。だから藁にも縋る思いで英雄召喚を試したんだ」


 僕は藁か。でもって試したって・・・それが無駄な努力って言うんだよ。


「要するにお前の尻ぬぐいじゃないか。御免こうむる」

「そこをなんとか!」

「僕だって忙しいんだ。それに、このまま行方不明となれば両親も悲しむ。何としても元の世界に返してもらうぞ」


 僕の足にしがみつく様はとても神とは思えない。

 だが、どれだけ情に訴えられたところで僕の意思は覆らない。


「一応君の世界も私の管轄下にあるんだ。私の機嫌を取るくらいはしておいても損はないよ!」


 ちょっとばかり聞き捨てならない言葉が聞こえた。


「待て。お前が管理しているのは『碌に文明も育っていない世界の寄せ集め』とか言っていなかったか?」

「そうだよ。未だに戦争や犯罪に溢れ、滅亡の危機にあるというのにソレを変えようともしない。私の部下である神の子を何人も手にかけた世界。それが君の住む世界だよ」

「・・・・」

「私の部下も、そこにだけは行きたくないってね。誰も手を挙げなかったよ」


 うわぁ。心当たりがありすぎる。

 有名なのは磔に火炙り。他にも歴史に埋もれた事例があるのだろう。


「僕がこの件を何とかすれば僕の世界を救ってくれるのか?」

「救いはしないよ。言ったでしょ。私の権限は地上までには及ばないって」

「じゃぁやる意味がないじゃないか」

「でも救いはしないけど、良くなるようにはできるよ。間接的にだけどね」


 それが神の子の力って事か。


「君の世界ににも世界を変えるような傑物がいたでしょ?まるで物語の登場人物のような者が」

「そういう者もいたし、文字通り物語にはいっぱいいるな」

「君がソレになってもいいし、別の誰かでもいい。世界を良くするための助力をするくらいはできるよ」

「僕にソレを背負わせるのか?」


 流石に重いだろ。


「別に君一人って訳じゃないよ。言ったでしょ、まともな子もいるって。出来ればその子達と協力して神器の回収を進めて欲しいんだ」

「まだ受けるとは言っていないぞ」

「いいや、受けるね。さっきから思考が駄々洩れだ。私に対する抵抗が薄れたね」


 殴りたい。


「それはやめてくれ。私だって殴られたら痛いんだ」

「そうなのか?」

「神だし、そう簡単には消滅しないけどさ神器で襲い掛かられた事も一度や二度じゃないよ。休憩中とか勘弁してほしいよ。まったく・・・」


 本当に人間臭いなコイツ。

 とりあえず。えいっ!


 ゴッ!


「痛っ!なんで!?」

「ほら、右の頬を殴ったぞ。左も出せ」

「それは君の世界の子が広めたヤツでしょ!私の教えじゃないよ!」


 とりあえず。神器を回収する依頼は受けることにした。

 別に僕の世界を何とかしたい訳ではないが、俗な話だが報酬が良かったっていうのもある。

 ただし、長時間の拘束は困るし、急に拉致られても困る。

 両親は僕の親とは思えない程に穏やかで優しいので心配をかけたくはない。

 下の妹と弟も可愛いし、離れ離れとか死んでもごめんだ。


「じゃぁ、喚ぶ時は伺いを立てる事と、拘束時間も長くならない事。報酬は月毎に清算。君の都合が悪い時は拒否も可能・・・と」

「そうだ」

「不平等契約って知ってる?」

「労働基準法って知ってるか?」

「神の世界にはないよ!」

「ブラックじゃねぇか!」

「黒は別部署の管轄だよ」

「知らんがな!」


 ぶつくさ文句を言っていたが、神とやらも何とか納得してめでたく?契約は成立した。


「じゃぁ元の世界に帰すけど、ちゃんと契約は守ってよね。三日後にまた喚ぶからね」

「週末ヒロインならぬ週末使徒ってか」

「私の事信仰していないのに使徒ってさ。ウケる」


 さっき殴れなかった左頬を思いっきりぶん殴ってやった。


「ポンポンポンポン神を殴るんじゃないよ!」

「次に喚ばれるまでに、お前から貰う能力を決めておくから。じゃぁな」

「君さ、不敬どころの話じゃないぞ」


 呆れるように肩をすくめるようなポーズをするピカピカにまたムカついたが、我慢した。


「そういや聞いてなかったけどお前に名前ってあるのか?無いならピカピカって呼ぶけど」

「私はどこぞの電気ネズミか。うーむ、名か。確かに呼び名が無いと困るか。名付けは神聖な儀式なんだが、そうだな」


『○○○』と呼べ。


「ん?これが名前か?」

「仮のだがな。真の名を明かすことは上司の許しがいる。今日は定時で帰られた」

「ご苦労様」

「一応目上には『お疲れ様』だバカモノ」

「年下だろ?」

「立場の話だ。って、私は年上だ!」


 地団駄を踏む姿が子供にしか見えない〇〇〇が手をかざすと、僕は元居た場所に帰ってきた。

 周りの景色が喚ばれた時とほとんど変わっていないのを見ると、どうやらあちらの世界とは時間の流れがかなり違うらしい。


「どの位大変なのかは知らないけど、僕が選ばれたって事は、きっと出来るからって事なんだろう。週末にアルバイトするようなもんだし、こっちよりは短時間で稼げそうだ。進学先をワンランク上げてもいいかもなぁ」


 あれが夢や幻でないことは証明されている。

 僕の目の前にはハッキリと映っているからだ。


『英雄:神成 司』のステータスが。


一応短編として。

気が向いたら続きを書くかもしれません。

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