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四人まで

 まず初めに対処し始めたのはガスドラゴン、何度も焼き殺されてわかったのだがこいつのブレスは威力にムラがある。




 それに気がついた後観察しつつ二三回死んでみると外傷がついている個体程ブレスの火力が低い事に気付いた。




 体力が減っているのがブレス威力低下につながるのではないかと推測してパーティに伝えてみたところ、戦士アリアがスリングショットで、金髪馬鹿ジークが剣でブレスを吐こうとしているやつを集中的に殴る戦法になった。




 結果ブレスの脅威が一瞬で死ぬレベルから時間をかけてレアステーキにされ運が悪ければ死ぬぐらいの脅威に変わった。




 そしてクリーピングコインは個々は恐ろしく打たれ弱いことにも気づいた。




 魔術師の氷結魔術が特攻レベルに有効であることにも。




 広範囲に冷気を飛ばすこの魔法は範囲だけは優れているが威力は火花以下という使い所の難しい魔法であった。


 そもそも氷結系統がクソだ。

 温度操作系の能力は下げるより上げる方が楽なのだ。


 火炎系統の魔術が容易く2000度を越す火炎を打ち出す系統であっても、氷結系統は−300度の冷気を作り出すのにも苦労する。というか温度以前に氷と炎では殺傷力に雲泥の差がある。感染症の様に犠牲者にまとわりつき、火勢を増し、飛び火し広がっていく炎と、効果範囲のみにしょぼいダメージを与えるだけの氷では。


 単純にダメージ与える目的なら基本火炎系統一択なのだ。というか火炎系統はあまりに強力な為基本的に上位の冒険者、上位の魔物は何らかの手段で炎に耐性を持っている。それは市場に売られている属性耐性装備が、基本的に火属性耐性のものしか無いのが物語っている。


 なので炎耐性つけた連中への対策として他属性の魔術が使用される訳だがその中でも氷結系統は最下層に入る。ただでさえ殺傷力がしょぼいのに効果が出るまで結構なタイムラグがあるのがクソだ。


 ちょっとでも相手の無力化が遅れれば睡眠魔術みたいなヤバい行動をされる迷宮では基本先手必勝短期決戦になる。


 一刻も早く相手を無力化しないといけないのに悠長に時間がかかる攻撃なんて撃ってられっかって話だ




 はっきり言ってしまえばゴミ。




 しかしクリーピングコインに対してはゾッとするほど有効。


 冷気への耐性も、耐久力も壊滅的なクソコインには


 黒魔術師の放った【氷結系統 冷気魔術】は寒気がするほど効率的にクソコインの命を奪い取った。




 一番厄介だったのはゾンビ、こいつは長らく有効な戦法が見つからず麻痺させられない方法がないか、火炎やらなんやらの有効な黒魔術はないか等探していたが1000回目あたりのループで僧侶が謎の光柱を発現して消し飛ばしていた。




 その後500以上のループを重ねて解析してみたところその能力は亡者に憐れみをかけて天に帰ることを祈り、動かぬ死体へと戻す特殊技能だった。




 アンデッドを還すことからターンアンデッドと名付けたこれをループ毎に僧侶に教えゾンビへの対策も盤石になった。




 対策をゴリゴリに立てた事によって迷宮内での私達の動きは格段に良くなった。




 帰還が夢でなくなるほどに。




 それと同時にパーティメンバーの本性も大体分かってきた。




 金髪戦士馬鹿ジークは独善的で傲慢なまあまあカスな人間ではあるものの本当に善良な人間になろうと必死な人間であった。




 パーティ全滅直前だろうが内蔵が飛び出し両目が潰れようが自分以外に生き残りがいる限り必死で足掻く。というか絶対に裏切らない。




 私も何度も死にものぐるいになったこいつに庇われ命を助けられた。




 まあ結局私が死んでるんだから役立たずだが、恥を知れ。


 断末魔は

「裏切るものか!絶対に裏切るものか!」

「僕は…最後の最後で英雄になれたかな?」

「本当はね、君の事が好きだったんだよ、小夜子ちゃん」

 とかだ。最後のおぞましい発言は記憶から消した。


 しっかしこういう、物語のクライマックスで流れそうな遺言や本音を手軽に聞き出せるのは【死に戻り】の良いところだ。


 素面じゃ到底言えないクッセエ発言を引き出した後、そいつがすーぱーおしょんしょんタイムやらすーぱーうんうんタイムしてるのをみて、こいつあんな臭え事言っといて今は物理的に臭え事してるんだなって思って嘲笑うのは楽しすぎる。


 もっとも味方が死んだら私も死んでそいつらが生きていた時に時間を巻き戻さないと行けないのが難点だが。


 こいつが死んだ尻拭いをするための自殺で、血溜まりの上を転げ回る羽目のなったのは今でも許していない。


 後は女傭兵アリアだ。



 こいつは基本自分が最優先の自己中心的な性格だが、何故か黒魔術師と、あと契約を自分の命以上に大切にするためものすごく使い勝手が良かった。




 ドライなものの最低限の情はあるようで恩を売れば文字通り死んでも返してくる。




 それを利用して危険地帯への偵察に何度も送り込んだりできたので便利だった。


 断末魔は

「クソが」

「ボケ」

「お嬢…」


 誰だよお嬢って

 そう思って自殺しようと短剣を喉に向けたら手元が狂って凄まじい絶叫をあげながら転げ回る羽目になった。


 余計な事言って私様を無駄に苦しめやがって、クソが。



 赤魔術師リグレットはこの階層で意地汚い、なんか体臭が酸っぱい、メンタルが弱すぎるとか知りたくない要素がポンポン飛び出してきたので記憶から消している。




 頭から下をブレスで黒焦げにされた時、私の乳がなくなっちまったとか言い出し始めたときはもうマジでこいつだけ置いて行こうかと本気で考えた。これは嫉妬じゃない、純粋なる殺意だ。




 こんなんでも知能自体は高いのか1を言っただけで10を察して私の思い通りに動くのが質が悪い。あと侍と同じく自らの内蔵が飛び出しても他者が生き残っている限り立ち上がる。


 遺言はキ◯ガイの分際で思ったよりまともだった。


「弟の介護よろしくね」

「ああ、いい人生だった」

「最後に貧乳に膝枕されて死ぬのも悪くない」


 こいつを蘇生するための自殺は何故か怒りで手元が狂って地獄だった。マジふざけんな、◯すぞ。


 黒魔術師は今まで嫌味だったのは貴族のボクチンがこんな下賤の民なんかと喋れるか、嫌味言って突き放したろみたいな思考が理由だったらしい。




 それでも私が有能なリーダー(に見えるぐらいループを繰り返してそう見えるように演技をした)だと分かると下民にも劣る俺は一体何だとか暗いモードに入ってるのは受けた。




 そこに優しい言葉をかけて即懐柔、奴隷兼財布2号ゲットだ


 断末魔は

「クソが、ぶっ殺してやる」

「パパ……ごめん……」

「俺は……私は……」


 こいつの蘇生では比較的楽に死ねた。


 チズギュド僧侶はもともとなんでこんなところに来てるのかわからないといったがそれに加え危機的状況にて異常なまでの自己犠牲精神があると分かった。




 断末魔が「生きて下さい」「幸せになって下さい」なのはまだ良いのだが、私を庇って致命傷を負った回で今際の際で「小夜子ちゃんは昔の知り合いに似てるからほっとけ無かった。愛してるよ、さよなら」とかほざいてるのは意味わからなかった。そもそも私の知り合い全員死んでンだわ。


 そもそも私を愛してるなら死ぬな、死に戻りでの蘇生の為結局私が死ななきゃいけねえんだよ、クソボケが。


 そして私は自分の喉を短剣で掻っ切った。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。どうせ死に戻ると分かっていても死の恐怖は拭えない、死にたくないと叫んでしまう。


 瀕死のチズギュド僧侶が驚き目を丸くしているが、元を辿ればテメェが死んだせいだボケが。








 しかし三層の階段近くまで行った回で私と残してパーティが私と金髪馬鹿ジーク以外全員グロッキーになった。全員魔力切れ。疲労は限界。体の傷は金髪馬鹿のノーコスト治癒魔術を連打する事で癒えたが健常なのがそこしか無い。


 んでもって目の前には転移用の魔術ゲート。


 これに入れば一発で地上までいける、問題は一度使うと丸一日再使用不可、かつ使えるのが四人までだと言うことだが。

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