妖刀村雨
アーバス。かの「オールデッド」の配下では最強だった男。その男が不快な薄ら笑いを浮かべる。そして両手が消えた様に見える程の速度で何かをした。
何をされたか分からない。
しかし私は死んだ。時が巻き戻る。
時が巻き戻った直後前のループの記憶に伴い全力で伏せる。頭の上から轟音が響く。見るとアーバスがさっきまで踏み付けていた槍が、女傭兵から奪った槍が私の頭上にいつの間にか突き刺さっていた。
「流石にこんな小手調べは効かねえか、弱者といえどもな」
アーバスが持つは【妖刀村雨】。優れた斬れ味、頑強さ、霊体特攻という高位魔剣のテンプレ効果に加え、液体の吸収放出と言うシンプルながら恐ろしく応用性に長けた効果を持つ。
さっきスライムをばら撒いたのもこの効果によるものだろう。半液体、半粘体のスライムを吸収し収納出来るほどこの効果の液体の定義は緩い
「こいつはヤバ過ぎる!全力で対処しろ!!」
私の本能が、アーバスが入ってきてからガンガンになっていたそれがさらに大きく警鐘を鳴らし叫ぶ。
そして赤魔術師が【睡眠魔術】を唱えた
赤魔術師の持つ【聖杖ユグドラシルド】効果は魔力増強と言った基本効果を高水準に保持、更に【二種詠唱】【回復超過】【異常痛撃】を持っている
二種詠唱は超強特殊能力【二重詠唱】のジェネリック版だ。2種の魔術の詠唱を同時に可能にする効果を持ち超強力、ただし回復系統の魔術とそれ以外の系統魔術しか多重詠唱できないという縛りがある為オリジナルには劣る。
回復超過は味方が回復術によって全快の状態になった場合、もしくは無傷の仲間に回復術を使った場合、超過した回復を纏わせてバリアに変える効果だ。どちらかと言えば事前に準備が出来る状況、要は先制攻撃を仕掛けられる状況で役に立つ効果だ。今回の様に後手に回っていると役に立ちづらい。
異常痛撃は状態異常が無効化、レジストされた場合、代わりにダメージを与える効果だ。
そして異常痛撃のダメージはレジストされた状態異常の脅威度に比例する。
その効果により最高位の脅威度を持つ睡眠魔術はレジスト出来なければ死にレジストすれば第四位階魔術相応のダメージが入る極悪呪文と化していた。
それをアーバスは笑いながら受けた。
極悪魔術がかき消された。
見るとアーバスの周りにキラキラとした障壁が張られている。【魔術結界】、一定確率で自身に飛んできた魔術そのものをかき消す、悪魔系統モンスターの十八番とも呼べる結界術。本来人間が纏う事の出来ない結界によって、【睡眠魔術】は抵抗判定にすらならず消失した。
それを見てもなお取り乱すこと無く赤魔術師は【睡眠魔術】を唱えた。位階だけなら最下層であるのが【睡眠魔術】
当然魔力消費が消費が軽いのも詠唱が短いのも強みとなる。
それを見てアーバスは叫んだ。「ああめんどくせえ!【酸の雨】!」
アーバスが刀を掲げる。刀から赤魔術師の頭上に吹き出した酸は文字通り雨の様に降り注ぎ赤魔術師を肉塊へ変えた。物凄く嫌な匂いが充満した
「貴様……貴様ぁあ!」
戦士が走り、前回の冒険中に大幅に強化された剣術を振るう。アーバスも蹴りで迎撃するが鎧がそれを受け止める。
「さすがの耐久性だ、コッズシリーズ。そっちの疑似聖剣ハースニールも直撃すれば俺の耐久性を貫いて殺せるだろうな」
「でも中身が雑魚じゃ話になんねえよ!」
決して鈍くない戦士の斬撃を素手で受け流しつつアーバスは戦士の村雨を鎧の隙間に差し込み言った「血液全部吸い取れ、村雨」
そして戦士も死んだ。
返す刀で不意打ちをしようとした傭兵を両断し、さらに詠唱中の魔術師に村雨を投合。心臓を突き破り、即死させた。
使えねえな!クソッタレ!コンティニュー!私は自身の頭に銃を突きつけた。発砲
【酸の雨】発動直前に巻き戻る。「ぼさっとすんじゃねえ馬鹿!」赤魔術師を抱え全力で抱え酸の雨の効果範囲まで抱えて走る。しかしそれくらいで何とかなるような相手では無かった。アーバスが、蹂躙した。「傷つけられるのも、痛めつけられるのも、奪われるのも、犯されるのも、殺されるのも全部、全部、全部、弱い奴が悪ぃのよ」




