魔術のメカニズム
【アルファ・オメガ】
本人自体は戦士としても魔術師としても無力なレベル1の一般人だが魔力を持たぬ物体を二つに増やす【物体複製】という能力を持つ。
異界兵器たる【パワードアーマー】【光学迷彩】【荷電粒子砲】【ナノマシン】という規格外の兵器を複製出来るだけで脅威だが、複製した装備を解体して中身を研究し改良もするそうだ。
もっともこんな回りくどい事をしなくてももっといい戦闘方があるが。
【核爆弾】だ。【原初の火】に匹敵するこれを増やせるだけ増やし異界龍【爆撃機】に乗りばらまくだけで世界は終わる。
【超越者】級の人間や魔物達は核爆発に対する回答を用意しているものの奴らがいなければ冗談抜きで世界を滅ぼす事も可能だ。
そして資源、食糧問題を一人で解決出来る、恐ろしく人類の為になる能力を持ちながらもその力を振るわないのは極度の人間嫌いだからとも言われている。
【天外地角】こちらは宗教家だ。【善人教】なる特大宗教を率いる教祖。
自身の二つ名を冠した、【天外地角】という特殊能力により、攻撃の射程を上限なく伸ばせる。
戦闘においてもっとも重要な要素は射程だと私は思う
剣より槍の方がが強いし、槍より弓の方が強い。自明の理だ。じゃあなんで高位冒険者はみんな揃って剣を使うのかと言えば強力な高位マジックアイテム【魔剣】が存在するからだが。異様な耐久や霊体化、超再生能力など、規格外の防御能力を持つ高位のモンスターを仕留めるには大体魔剣、数は少ないが魔槍や魔斧が必要となる。
「もっとも傭兵や追い剥ぎだと槍を使う事も多いがな」
ずっとだんまりだった女傭兵がここに来て喋り始めた
マジックアイテムや魔術紋で補強しても人間の耐久力はたかが知れている。それ故、高位の冒険者相手であっても通常武器は当たりさえすれば一応ダメージを与える事は出来る。魔術が込められていない安価な武器と武器で比べれば槍の方が強い。
迷宮戦闘は先手必勝一撃必殺が絶対の摂理だが対人戦闘はそれ以上に先手必勝を徹底する必要がある。
ここから話題が脱線したのを皮切りにそれぞれの技能について語る流れができた。
冒険者上がりの敵は一度でも対人戦を経験させると手が付けられなくなるから何がなんでも初戦で仕留めろだのと傭兵ならではの知識を傭兵が話した後左の黒魔術師が語り始めた。
魔術について。
魔術は全二十系統、各系統ごとに7位階に分かれている。のが基本だがこれはあくまでも戦闘に特化した魔術に限った話であり魔術士がいつも探索で使っているような清潔な水を出したり長い間残る焚き火を出したりするのは含まれていない。
個人武力なら最強と言われている【賢者】もこの戦闘外の魔法に長け、性転換やら麻薬精製やら洗脳やらの変な戦闘外魔術も作れたらしい。
また一部の魔術士は戦闘魔術7位階すら超えた魔術やら基本系統に含まれない魔術も使えるそうだ。
口から火を吹いたり水流の刃を呼び出すのが通常の系統外魔術だが八位階以上の系統外魔術は魔法と呼ばれる。
過去の魔術が遥かに進歩してた世界においては星すら一撃のもとに貫き破壊する十五位階魔法すら存在していたらしい。
系統外魔法はとにかくカッコイイ上に力ある魔術師の特権であるため真似してオリジナル系統外魔術(笑)を作るアホが定期的に湧く。
それらは系統内魔術に勝てるところがほぼ無いゴミであり、系統内魔術は強いからこそ系統化されているということを理解してない超級のアホが使い手のため湧いたところですぐ死んで消えるそうだが。
そして魔術のメカニズムとはなんなのであろうか。
世界にばらまかれた神秘のかけら、魔力。これを使って発動するものであるのは分かる。でも魔術を一切発動できない私と魔術職達、正直何が違うのか分からない。やってることは手を掲げ呪文を唱えているだけだと思う。精密な陣を描く様子も、魔力を練ったりする等の儀式をする事も無い。ふと気になり、魔術師へと聞いてみた。
「一言で言うなら推しにスパチャ捧げるのと一緒だ」
こいつこんな発言すんのかよ。
「一言で言えばだぞ」
そして魔術師は詳しく説明し始めた。
「一美形たるもの、勤勉たるもの、他者へ興味を持つものを尊ぶ精霊の【推し】となる事で精霊に物理法則を無視した超常現象を起こさせる。」
精霊は勤勉なものを好む。
精霊は学力に長けたものを好む。
精霊は自身に寄り添おうとするものを好む。
あと単純に美形を好む。
必死で魔術式を勉強すればその三つを満たせる為、実際には実用に満たない知識を勉強するのだ。
魔術師のクラスも実はそれ自体に意味は無い、だが、精霊は貧相なクラスに付いてまで自身に寄り添おうとする、その気概を感じて、力を貸すそうだ。
もっともいくら気に入っても条件を満たしたラインまで達していなければ、たとえ推しが瀕死の状態であろうと、新魔術を得られれば命が助かる状況であろうと、規定以上の力は与えない。
精霊の思考回路と倫理観は人間からかけ離れている。
明らかに取得難度の割に性能が狂ってる【快癒魔術】【睡眠魔術】【核撃魔術】【転移魔術】【嘆願魔術】の5つからなる【禁術】があるのもそのためだ
「要は上位者のご機嫌伺って、かっこいいポーズ取りながら、意味の無い掛け声を発して、お偉い精霊様をパシらせるって訳だ」
「前ネームド倒すのに付き合ってくれた礼だ、お前が魔術使いたいって言うなら教えてやるよ。あそこまでやってもらって、対価にちょっと魔術について教えてはい終わりってのは性に合わないしな。」
「いや、いい、多分、私は覚えられない」
魔術師がキョトンとした表情を浮かべた。
必要なのは努力、学力、他者への興味、面の良さか。
あのクソ馬鹿ボケカスゲロうんこ姉弟が魔術に長けるのも当然だ。癪なことに全部満たしてやがる
それに対して私様には努力、学力、他者への興味どれも決定的に欠けている。
一応顔だけは他三つに比べりゃマシだが、他のに比べればまだなんぼかマシと言うだけだ。
はーつっかえねえ。
精霊様、冷酷、酷薄、薄情な人間を好む用になってくんねえかな。
魔術が使えるようになった自分を想像する。
右手で最強の攻撃魔術である【核撃魔術】をぶち込み、左手でこれまた【快癒魔術】で癒やしをばら撒くやべぇ、かっこいい。かっこいいんだが、なんかしっくりこねえな。だがまあ好むにしろ好まざるにしろ、クソッタレな事に私はきっと最後まで、小手先の技術で貧相な身体能力を誤魔化して、しみったれた短剣を握っているのだろう。いつか灰となるその日まで。




