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ヘルマンドラゴラ

戦士も僧侶も、戦士の介護の為に離れた赤魔術師もいない今、私達のパーティは私、黒魔術師、女傭兵の三人だ。


アーバスは私達へ賞金をかけたらしい。私達の首一つにつき10000Gの収入(異界貨幣日本円とのレートは1G=12円)になるようだ。


もっとも追い剥ぎの目線で見た場合、素直に奴に私達を引き渡すくらいなら戦士と赤魔術師の装備剥ぎ取って売っぱらった方がよっぽど稼げる為、こんな話に乗るのは馬鹿か、もしくは戦士と赤魔術師以外の貧乏人狙いの追い剥ぎだろう。


ちょうど今目の前にいる六人組の追い剥ぎパーティの様な


決着自体はすぐについた。相手の睡眠魔術を黒魔術師の【異常系統第二位階 沈黙魔術】が止め、私が【周断】使ってリーダー格の腕を鎧ごと引き裂く。それで生じた混乱を傭兵が暴れる事で拡大、その後魔術師が睡眠魔術ぶち込んで決着だ。


一人残して全員眠った。


まだ起きている一人は病気の母親がどうのこうの言っているがこいつの発言は嘘だ。

私には、理解できる。

心根まで腐りきったクズ同士通じるものがあるのだ。


この感覚をうまく言語化したいのだが私の頭では難しいし言語化したとて善良な皆様方には分かるまい。もっとも事実であったとしても殺さざるをえないが。ああクソッタレ。私は犯罪行為するなら殺人みたいな禁忌ではなく窃盗とか食い逃げとか違法賭博をやりてえんだよ。首をはねた。260。




眠りについた残り5名は女傭兵が殺した。



■■■


そして次の日、またもや迷宮の奥底から湧いてきた化物と私達は対峙することとなった。


 階級【ネームド】種族名【ヘルマンドラゴラ】

 能力は三つ


 1つ目は狂花草なる毒草を精製し投合する能力。狂花草は体に当たると経皮摂取され【狂戦士化】の弱体化(デバフ)がかかる。


【狂戦士化】ただ怒りのままに周囲の生物を虐殺するようになる状態異常(バステ)


 人間のかなり大きな武器である頭が使えないまま敵対存在に特攻を仕掛ける時点でもうキツイが、敵味方の区別なく、周りの生命に攻撃を仕掛けるようになるのもキツイ。徒党を組んで戦う冒険者にとっては致命的だ   


 これで戦闘能力が大幅上昇するなら使いようもあるが、実際は身体能力据え置きで技術が腐る為、狂戦士化すると戦闘能力が大幅にダウンする。特に私の様な身体能力の低さを技術で補っているタイプの人間には致命的なデバフとなる。


 ブチギレて強くなれるのは【憤怒の魔王】くらいなンだわ


 狂化効果はあくまでも経皮摂取なので、肌を覆い隠す全身鎧で身を覆えば防げるのだが、全身鎧は戦士職以外と相性が悪い上に、そもそも高価な全身鎧で身を守れる程裕福な人間は基本的に冒険者などやらないのだ。


 2つ目は【前防結界】前方からの攻撃を物魔問わず、物魔どちらにも所属しないブレス等の特殊攻撃含めて完全に無効化する結界だ。


 流石に【聖剣】や神代の魔法を使った攻撃は通るそうだが逆に言えばそのクラスの攻撃手段でも無ければ無効化するということだ。


周断(あまねだち)】も当然の如く弾かれたし女傭兵の斬撃も当然効かなかった。何より厄介なのは1つ目の能力とのシナジーだ。【狂戦士化】でこちらの行動を正面からの突撃のみに制限し、その直線的な攻撃を結界で防ぎ一方的に攻撃する。草に触れたら終わりだと考えて良いだろう。


 3つ目はシンプルにデカい事だ。幅5メートルの通路を横に埋め尽くす程ある。それ能力じゃねえだろと皆様型は思うだろうしそれが正論なのは疑いようが無いが、私は極まった脳筋は能力となると感じているのでこれを能力にカウントするのを許して頂きたい。


 ギャハハハ、また化け物相手にクソみたいな死に戻りを繰り返さなきゃいけねえのかよ。もういっそ私を殺せよ迷宮様。私の事が嫌いなんだろ

 私もテメェなんて大嫌いだバーカ

 ■■■■

 マンドラゴラが巨体を活かして大地を踏みつける。

 迷宮の床を歪ませる程の強烈な踏み込みにより、私はトランポリンの要領で宙を舞った。

 そのまま宙の私を轢き殺そうとマンドラゴラはそれそのものが攻撃となるほどの空気圧と轟音をまとって突撃、その突撃を私は空中で回転し受け流す。この回避が出来る様になるまで15回死んだ。

 そして天井に弾丸を放ち跳弾させ【前防結界】の攻撃をかいくぐりダメージを与えていく。


【前防結界】は文字通り前方しか防げない。真上からの攻撃にも、真下からの攻撃にも無力だ。そして所詮植物だからだろうか。こいつの耐久力自体はそれほど高くない。もっともサイズがデカすぎて銃弾では十分なダメージが入っているとは言い難いが。


 それから銃で時速160km、射程100メートルを超す投合された【狂花草】を撃ち落とす。最初は短剣で防いでいたが投合物へ少しでも触れると、それこそ切り刻んだ葉の切れ端に触れても、狂戦士となってしまう。銃撃で狂花草を迎撃出来るようになるまで63回死に。

 前防結界を壊そうと無駄な努力をして80回死に。

 前防結界は真上、真下からの攻撃は防げない事を暴く為に215回死に……とにかくめちゃくちゃ死んだ。


 さっきは女傭兵とはさみ打ちにしようとしたりしたのだが迷宮の通路を覆い尽くす様な巨体を持ったこいつをはさみ打ちにする事は出来ず死んだ。


 のでまともな方法で倒すのは諦める


 私の指示により女傭兵が黒魔術師を放り投げた。黒魔術師は放り上げられ極悪糞大根の頭上へと登った。そして放つは【睡眠魔術】。しかし抵抗され失敗

 私もスライディングしながらマンドラゴラの真下に滑り込んだ。そのまま【周断(あまねだち)】を繰り出そうとするがこちらも失敗。結果私はそのままプチッと潰され魔術師と傭兵は狂化し嬲られ死んだ。


 そして時が巻き戻る。魔術師が【睡眠魔術】を叩き込む直前に、私が【周断(あまねだち)】をぶち込む直前に。


「ほら魔術師、心の強さでもう一丁!ド級のリトライ、ド◯トライだ!」


 乱数がずれたおかげで今度の【睡眠魔術】は通り、【周断(あまねだち)】は成功した。重症を負いながら眠りについた糞植物を傭兵が切り刻み戦闘は終了した。


 そして宝箱もドロップした。

 ■■■■■

 盗賊として宝箱の解錠をするならやり方は様々。開けると紐が切れて爆発する仕掛けなら紐を新たな紐で繋いで固定する。


 爆発機構自体を破壊する。


 紐を切るための刃自体を取り除く。


 それらの技術を駆使して宝箱の罠を破壊することに盗賊は誇りを持っているのだ。


 もちろん私も。


 それを黒魔術師が教えて欲しいと言ってきた。


 なんでも二人で罠の識別をすれば正確性が上がるからだとか。


 黒魔術使いとしてもあのイカれおっぱいに劣る上白魔術の有無と鑑定能力でも劣る以上もう一つ特殊技能を身に着けておきたいとのこと。


 下民よりも使えない今の立場を辞めたいとのこと。


 俺としても解錠の確実性は上げておきたいのでただで使える奴隷が増えるのは大歓迎だ。


 魔術師は地頭が良いのか飲み込みが異様に早い。


 利用する駒が増えたら良いかなくらいの気持ちで始めたがつい教えるのに熱中してしまった。


「俺は恵まれた子供達(ジーンリッチャーズ)だ。お前ら下民とはここの出来が違うのよ」


 そう言って黒魔術師は自分の頭を叩いた。


 恵まれた子供達(ジーンリッチャーズ)とはなにか。それを語るにはまずこいつの故郷について説明する必要があるだろう。


 こいつの故郷は()()両差別国家と陰口を叩かれるユニフォリア。

 この国、迷宮都市エリュシオンに次ぐ軍事力を持つ軍事国家だ。


 5代程前までは特にこれといった特徴の無い小国だったがある時ここの王が、異界から訪れた転生者(フォーリナー)により遺伝子学というのを学んだ。


 そして何をトチ狂ったのか、“人間の繁殖は能力下位9割の男はいなくとも成り立つ”

 “そして女はどんなに優秀な遺伝子を持っていても10人程度にしかその優秀さを引き継げない”

 “優秀な男はいくらでもその優秀な遺伝子を後世に残せる”

 “つまり人間の存在価値は上位の男≫女≫下位の男”とか言う思想を持ち始め、それを自国の価値観とした政策を推し進めてしまった。


 その結果女は奴隷扱いされ、子供を産めなくなったら即刻殺される等完全に繁殖の道具としか見られなくなった。

 だが人権は半分だが義務も半分になるなど、地獄のような生活の中でも僅かに配慮があったりとほんの僅かな救いはあるようだ。


 しかし男の下位9割はそれはそれは悲惨な事になっている。

 流石に胸糞が悪過ぎてあまり詳しくは言いたくないのだが人間に食べられはしないと言う事を除けば一切の比喩抜きで家畜だ。


 そして男の上位一割のみ恵まれた子供達(ジーンリッチャーズ)と言う地位を得られる。


 この地位に付けば金も名声も名誉も思うがまま、非リッチャーズの男を獲物とした人間狩りすら極々軽微な罰金を払えば許される程の権力と、コッズシリーズ、ハースニールを複数用意出来る財力、そしてこれに関しては個人差はあるが、平均レベル10と言う、凄まじい武力を持った集団の一員となれるのだ


 そして男は、ジーンリッチャーズに、野郎の能力上位一割に入るため必死で努力する。入れなければ文字通りの飼い殺しにされるため必死で努力する。そして必死で努力した連中の上澄みだけで子を作らせ、そいつらの優秀な遺伝子でまた優秀な次世代を作り出す。それがあの国だ。


 そしてこいつはリッチャーズの一員である以上、あの国ではさぞ高貴な生活を送っていたのだろう。


「ただ最近ちょっと考え方も変わった。」


 黒魔術師が言う。


「顔の良さだけでリッチャーズ入り出来る上に家格もこの国で最上位だがうんこを平気で食う異常性愛者」


 戦士の悪口か。付き合うぞ。私あいつ嫌い


「逆に顔も血筋もひっでえもんだが他人へ誠心誠意尽くせる奴」


 僧侶の事か


「そして正気と狂気の境目を高速で反復横跳びしている癖に俺の上位互換とも言える駄肉馬鹿。」


 あの無駄乳付き人型うんこか


 あいつは1回目の迷宮探索の後も「私は鳥さん!ぱーたぱーた!ぱーたぱーた!」とか言って何の前触れも無く高さ7メートルの崖からダイブして全身を骨折するという

 ◆この女の目的は?---としか言いようの無い行動をした馬鹿だ。

 特に足の骨折が酷かったらしく私が担いで病院へと運んでいる時も

「私のコケティッシュでトレビアンなかもしかのようなあんよさん!!治ってね!!」とか泣きながらほざいてた。


 この1週間で30回はあの馬鹿の尻拭いしたしあいつはバラバラに解体されて欲しい。


「あいつに魔術師として完全に負けていると分かった時には本当に胃の中の物を全部吐き戻す羽目になった」


 そう言えばこいつが使えるのは第二位階までの魔術、かつ、基本産廃の【氷結系統】と赤魔術師も使える【異常系統】にしか適正が無いのか。実質【睡眠魔術】【沈黙魔術】撃ち機だな


「そして傭兵アリア、あの国にいた時は、パパの従者やってた時はよくわかんねえ奴だと思っていたけど黙ってここまでついてきてくれたんだ」


 あああの女傭兵か。



「後お前。血筋は最下層だしプライベートで話したくないタイプの人間だとは思っているがお前より優秀な指揮官はあの国の、リッチャーズの中でも見なかった」


 こいつ馬鹿でやんの。優秀な指揮してなかった回ではみんな死んでるのに気づかず上手く言った回だけ観測してるからこういう発言が出んだよな。


 最後に「それで少しだけあの国の政策が正しいのか疑問に思い始めたんだ。あとこれでもお前らといるのは悪くねえと思ってんだぜ。まあいざとなったらお前ら切るけどよ」

 そう言って魔術師は笑った

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