こちらお通し
夢を見た。私の姉さんの事、王よりも、神よりも尊いこの私様を遥かに凌ぐ世界でもっとも尊い人間。
誰よりも優しく、誰よりも私を愛してくれた、私が私よりも大切だと思える数少ない例外である人間。
そして誰よりも幸せになるべきだった姉さんは死に、どうしようもないクズの私は生き残った。
それで悟ったのだ。この世には信賞必罰の摂理等無いのだと。善悪が報われると限らないなら、悪党である方が良いに決まっている
どんな死に方をしようが、自業自得であると納得して死ねるのだから。
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前回の宴会で、せっかくこの私が柄にも無くメンタルケアしてやったのに、その次の探索では戦士と僧侶は、動きに精彩を欠きまくっていた、ので奴らは休ませる事にした。
最初は大丈夫大丈夫言っていた戦士は、家に帰った後5日連続で寝込み、体重も五キロ減ったようだ。戦士の姉である赤魔術師が大層心配していた。私も金づるのご機嫌取りの為にちょっと良さげな菓子を見繕って無駄に豪華な奴の豪邸に持ってってやったら今にも死にそうな目をして君に昨日の宴会で慰めて貰ったのに立ち直れなかった。ごめんね。とか今にも泣きそうな顔で言っていた。
なんでも追い剥ぎ戦で、破れかぶれになった追い剥ぎによって姉である、赤魔術師が刺されたので衝動の赴くまま剣を振るい両断してしまった事が記憶から消えないらしい。戦闘時の興奮状態かつ、身内が殺されかけた怒りがあったとは言え明確な殺意を持って剣を振るった事、簡単に殺意を抱ける人間であった事がショックだったそうだ。
人殺しをしてもなんとも思わない……というほどではないが人殺しに対してそこまで抵抗のないクズの私と違いこいつはまともな人間……うんこ食う時点でまともじゃねえな。ともかく性根、根本の人格だけはそれなりにまともなのだろう。飯が喉を通らないほど、まともに寝れない苦しんでいた、ひたすらに。
「この苦しみに慣れるのが怖いよ」と消え入りそうな声で戦士は語った。
「人間は何にでも慣れる生き物だ。始めて殺人した時はは吐くほど苦しんでも、その後殺しに慣れてしまい、日常業務の一環程度にしか思えなくなってしまった軍人や傭兵なんていくらでもいる」と語った。
うん、そうだ。人は慣れてしまう。私もそうだ、女傭兵もそうだろう。
「自分が死ぬその時まで罪悪感を忘れずに苦しむことが唯一の供養だから、死ぬまでこの胸の痛みに慣れる事無く苦しむよ……」
あーこいつ昨日私が言った事真に受けてんのか
挙句の果てに「僕は慣れたくない!殺しなんかに慣れたくない!でも、この後も正当防衛で、いっぱい人を殺して段々と殺しに慣れていく、自分の事だから分かる!それが嫌だ!」
とか言い出した
あんまメンタルを害されても面倒なんでなんとかなだめようと色々な手を考えたのだが私の悪い頭と低いコミュニケーション能力とクソみたいな性格では何も思いつかなかった。
姉さんみたいなまともな人間なら抱きついて優しい言葉をかけて心の傷を癒すのだろうが、それは私には無理だった。そもそも野郎の穢らわしい体に触れたくねえ。
しかし飯を食わなければ、確実に心は弱る。下手したら死がちらつく程に。それは今まで散々体感した。
なので3時間かけて出汁をとった死ぬ程出汁の効いた粥を作って、壊れたおもちゃの様に食えと連呼し食わなきゃいつまでもここ居座るぞと脅して食わせた。
初めは嫌々言っていたがなんとか一口食わすと少しずつだが確実に粥の量は減っていった。
そうこうしているうちに留置所にぶち込まれていた赤魔術師が帰ってきたので飯だけはしっかり食わせるよう言って部屋を出た。
後ろから「ありがとう」と声が聞こえた。
風呂はいらなくても歯磨かなくとも良いからとにかく飯だけはしっかり3食食え、悪い想像に取り憑かれるぞとだけ私も言った
んで部屋の外で待機していた使用人共にまたあいつが飯食わなかったりしていたら連絡を寄越すように頼み込んで家を出た。
僧侶の方はいつも通り孤児院でガキ共の面倒を見に行き、病人共を回復魔術に依存しない【技術】である【医療】とやらで治しに行っていた。
チズギュド顔なのにも関わらず、テキパキと世話と治療を行い。薄汚え孤児院のガキ共にも、棺桶に両肩まで浸かってそうなババア達にも尊敬の目線で見られていた。
人間は顔では無い。その言葉自体は顔が人間じゃない奴が考えた綺麗事だ。しかしアレな顔だが称賛に値する人格のこいつや、サドルで処女喪失した顔だけは地上に舞い降りた女神の様な馬鹿と、うんこ食って入院した顔だけは人類の至宝の様な馬鹿を見てると人間顔じゃないと言いたくなる。
もっとも殺しの後遺症の為か、観察している間ずっと目は死んでいたが。
私も、ガキ相手なら王様になれると思い、ガキ共の世話は手伝ったのだが開始20分でクソガキ共に完全に舐められマンカス呼ばわりされるようになった。
「今日もありがとうチェイン兄!」「じゃあなマンカス、もう二度と来んじゃねえぞ!」「チェイン兄もそんな貧乳仮面じゃなくてもっといい人と……」
孤児院燃やすぞクソガキ共が。
そうして私達は帰路についた。
今日手伝った事に礼を言う僧侶を遮り「お礼言うくらいなら迷宮探索でしっかり働け。それよりお前飯食ってないだろ」と私は言った。こいつは朝から晩まで働き詰めだった。その上、目の下の隈を見るにまともに寝られて無いだろう。しっかしこいついつも戦士のコピペみたいな行動するな。
そしてこいつにも飯を食わせるため異界の人間、転生者が作った飯屋に連れて行ったのだが、私が店を間違え入った所が【サディストメスガキ牛丼】とか言うふざけた店だったので。
僧侶「牛丼並を」
店員「チーズ牛丼入りましたあぁ!!」
バイト(メスガキ)「ギャハハハハ!」
店員「よぉチー牛!床へどうぞ!w」
バイト(メスガキ)「こちら、お通しですッパァン!」(生卵を僧侶の頭でかちわる)
店員、バイト(メスガキ)、店長「ギャハハハハハハハハハハハハハハハハwww」
とかなった。流石にかわいそうだと思った。




