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アイリスの雨の日

初投稿です。雨田霞です!雨と田んぼとカスミソウが好きなのでこの名前にしました。投稿は気まぐれですが、テストがあるときなどは投稿できません。書くのも読んでもらうのも楽しい小説を目指して書いています。誤字やアドバイスなどお待ちしております。

小さい頃ふと母に言った。

机には新品の教科書。国一番の先生を家に呼んで、人生初の歴史の勉強は教科書に載る人はどんな人か、だった。

ペラペラとめくり、肖像画を見る。何をしたか、どこで生まれたか。

ページをめくる手が止まらない。               

私は特に歴代の王女様をまとめたページがお気に入りだった。鮮やかな絵。きりっとしつつも優しそうな瞳。美しいドレス。そこには「書いてあった」。誰かに必要とされて、いや、時に邪魔に思われつつも前を向いて世界を変えた人たち。私には眩しすぎる人たち。けれどいつかこの教科書に載るくらい素敵な人になれたら私だって輝けるだろうか。別に王女じゃなくていいから。。。こんな気持ちを母に伝えたらどうなるんだろう?厳しい母は「現実を見ろ」と鼻で笑うかな。。。。。。。それは嫌だなあ。

すっかり夢中になり、気づいたら先生は帰っていた。

隣には母。炎の魔法でお湯を沸かし、私にドリンクを作ってくれた。

「教科書に私の名前が載ってたらかっこいいなー。。。。載ってみたい!」

母は微笑む。

「あはは。。。。。。。はあ。ほら、お茶冷めちゃうわよ。」


雨だ。雨が降っている。

雫が窓に当たって私の元から去っていくのを見る。

私は雨が少しだけ好き。だって雨になるとお仕事も無くなるし、好きなことをのんびりできるから。

考えたくないことも、思い出したくないことも、勉強や読書で忘れる。

今日もそんな日にするつもりだった。


彼が私のうちに来るまでは。

ああ、最悪。立場は相手が上なので基本的に様付けして、尊重しなければいけないが、今日は少しくらい怒ってもいいだろうか。

「アイリス?何?俺は別に怒られるようなことしてないよー。この紅茶美味しいねー。」

婚約者として、友達としてノアとはひと月に一度は会う。今日は用事があるらしく、突然来たが、手土産をきっちり持ってきた。フルーツの紅茶。遠くの国のフルーツも入っているらしく、鮮やかで飲むと爽快。飲んだ人を虜にしていく紅茶。大人気で手に入るのが難しく、メイドはすぐにるんるんでお茶を淹れた。

一口飲む。鮮やかなフルーツの味と少し苦味のある紅茶。はあ。美味しい。

「雨の日は少し暗くなりますので憂鬱になってしまいますね。ジメジメしてて。」

にっこり、自然に微笑んで見せる。なんで怒ってることがバレたんだあ!って思ったけど、顔には出さない。

出したくない。

令嬢たるもの、、、というおばあちゃんの言葉をこっそり思い出し、背筋をピンと立てる。

「そう?アイリスは雨が好きじゃんか。音も匂いも好きって昔言ってたでしょう?」

うーん。ちょっとイライラする。顔には出さないようにする。

「今日の服も素敵だね。機嫌がいい日ははいっつも必ず水色の服だよねー。」

「はあ。そうですか。ありがとうございます。」

幼馴染のような関係でもあるし、主従関係でもある彼はにっこり微笑む。

私が照れているのを見て上機嫌だ。顔が熱くなっているのが自分でもわかる。実に簡単な私。アイリスよ、このままでいいのか?いや、ダメだ。もう絶対恥ずかしくても顔には出さない。

そう、何度目かわからない思考に至る。


ノアに、私を知ったかのような口ぶりはやめてほしい。小さい頃から許婚としていい方の関係を築いていたはずなのに、いつの間にやら色々把握されているのが私は少し嫌だ。

私は彼のこと、全然わかんないのに。彼は私の好きなものから、最近ハマったもの、こっそり日記を書いていることすら知っている、どれもうまく隠したつもりなのに。

ノアは相手の心情などを読み取る天才だ。本人曰く、魔法ではないらしく、相手の会話、顔で隠していたことをあてるらしい。心臓に悪いからやめてほしい。今日だって私が以前から飲みたかった紅茶を持ってきた。

「ノア様。それで、用事ってなんでしょう?」

今日も早く用用事を済ませる。

「あー、少し雨で濡れてしまったけれど、これ。父さんが渡せって。」

それは王からの手紙だった。ああ、そうだ。もうそんな時期か、と私は思う。できるだけ無感情に、

王のシーリングスタンプを見る。よかった。開けた形跡はない。

「ありがとうございます。では私は用事があるので失礼します。」

「えー。もっと話そうよ。」

「、、、、。」

むすっとノアは頬を膨らませる。その子供の仕草はいつまで経っても変わらない。だから安心できる。何もかも変わってしまったけれど。私たち自身は変わっていないんだろうな。

紅茶の最後の一口を飲み干す。ほんのりフルーツの味がする。やっぱり美味しい。

「では。」

礼をしてささっと会談室から出る。疲れた。ノアにできる限り自分のことを知られないよう、気を張っているのはもうどうしようも疲れる。今日はもうゴロゴロしていたかったのに。

そう思いつつもこの時間は意外とリラックスしている。疲れるけど。

ランニングのようなものだ。少し、少し楽しいけれど疲れるみたいな。

続いて欲しいって思ってしまう。

我儘かな。




ありがとうございました。

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