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EP 5 Li-NA

 【第五章】 Li-NA


 いつものように「レコレディ・アルト」に連れられて、ソコでの「作業」を終えたときのコトだった…


「今日で…、この作業は、終わり…」

「ぇ?」


「50ヶ所、50ヶ所を担当したら…、ソコでの「作業」は…、終わり」


「終わる?…なっ、何がだ…?ココでのオレの役目って…、コトか?」

「そぅ…、そして、ワタシの役目も…」

「そうか…、ソレは…、何ていうか…、お疲れさま…って…感じかな…」

「ぅん…、…ありがとう…」

「あ、あァ、いやオレの方こそ、何か貴重な経験が色々と出来て…楽しかったよ、まァでも…、こんなフシギな体験を、もう出来なく成るのかって考えると、チョット寂しい気もするけどな」

「そぅ…」

「いや、まァとにかく面白い時間を過ごせたよ、あとは…、他のヤツが代わりを受け持つっていうコトに成るのか?」

「そぅ…、アナタは…、もう一人で戻れる」

「ぇ?」

「眼を閉じて…、次に眼を開けたとき…、アナタは元の世界に戻る…、ソレで…全てが終わる」

「一人で…?って、オマエは…、来ないのか?」


 静かにうなづくリナ


「……ワタシは役目を終えたから…、もう…帰らない……」


「…なっ、なんだよ…、ソレ…?」

「今日で…、終わり……」


「ちょっ、チョット待て!オマエ、帰らないってどういうコトだよ!」


「役目を終えたアンドロイドは、ミーナ・フィリカに帰還するコトに成っているから」

「か…っ、帰って…、ソレでっ、どう成っちまうんだっ?」

「幾つかのチップを取り出してから…、解体される……」

「な…っ、解体されるって!そっ、ソレ、どういうコトだよ!どうするんだよ、明日からっ、がっ、学校だってあるだろっ!」


「ワタシに関する「記憶」は…、全て抹消される……」

「ハァ!?」


「アナタの記憶にも…、残らない……」

「なっ、何を言ってるんだよ、オマエっ!!!チョット待ってくれ!記憶に残らないってどういうコトだよっ!! 」

「文字通り、そのままの、意味…」

「ぜっ!全部無かったってコトに成ってしまうっていうコトかよっ!!!!??」

「そぅ…」

「そっ、そんなのアリかよっ!!オレがっ、オマエと一緒にたくさん色々と出来たコト、色んなフシギな体験が出来たコトっ!ソレを全部忘れちまうっていうコトかよっ!!!!」

「……」

「なんだよ、ソレ……、そんなのアリかよ……っ、待ってくれっ、なっ、何とか成らないのかよっ!」


「ワタシは…、ただのアンドロイド、命令に従うようにプログラムされている……」


「そんな命令っ、あってたまるかよっ!」

「どうにも成らない…、役目を終えたら、後は解体されるだけ……、ソレが…ワタシの星の、決まり……、この仕事の、決まり……」


「待ってくれ、とにかく待ってくれよ!!」


「今まで…、ありがとう……、アナタがワタシに似ている理由が少しだけ…、わかった気がしている……」

「…、何がだよ!何がなんだよっ!!」

「アナタの情報を…、多く取り込み過ぎたせい……、ワタシの拡張認識部が…、少しずつ書き換えられていたのが…、きっとその原因…」

「ソレって……っ」


「……そう…、アナタという存在を…、ワタシは……」

「バカ言うなよ!そんなのはっ!そんなのはオレだってそうだよ!……っ、オカシイとは思ったいたサ!!オマエがアンドロイドだってわかっているのにっ!でもっ!オレはっ!オレにとってオマエはっ!!!!」


「…、少しの間だったけど……、楽しかった……」


「行くなっ!行くなよ!行かないでくれよっ!!」

「どうにも出来ない…、全ての記憶が抹消される」

「勝手なコト言うなよ!オマエのコトもっ!オマエと過ごした時間のコトも!全部消されちまうなんて!全てを無かったコトにされちまうなんてっ!!その後、オレはどうすればイイんだよっ!どうしろっていうんだよっ!!!!」

「……」

「全部、忘れさせられちまうなんて……、そんなの勝手過ぎるよっ!!」

「…ゴメンなさい……、レコレディ・アルトでの作業は…本来…人間に知られては…イケないコト……、だから「作業」が終わったら、その全ての記憶は消される…、アナタは、ココでのコトを他の人に話すタイプでは無かった、そして…、この空間にとって…とても「大事な人」、だからワタシはココに派遣され…、そしてアナタは選ばれた」

「くっ、ぅぅぅ…」


「でも…、ソレも…、今日で全て終わる……」

「待てよ…、待ってくれよ……っ!!」


「ワタシは…、ミーナ・フィリカで解体される……、ソレで…存在は消えて無くなる……」


「待てよ!オマエは何とも思わないのかよっ!!一緒に色んなコトをして!一緒の時間を過ごしてっ!!ソレが全部無く成っちまうってコトにっ!オマエは、何とも想わないのかよっ!!!!」

「ありがとう…、アンドロイドのワタシが…、そんな風に想って貰えるのは…、きっと……、ソレは「嬉しい」っていう感情なんだろうって…、そう想う……、でも…ワタシの役目は……、もう終わり…、だから…全てを忘れて……」

「そんなの出来るワケ無いダロっ!!!!」


「アナタは、新しい生活に戻る……」

「戻るってっ!オマエが居ない生活にかよっ!!」


「そぅ……、ワタシは、消えて無くなる…、でも、アナタとワタシが似ている理由…、ソレはワタシにとって、とても…大事なモノだったっていうコトが…、今、改めて、わかった気がする……」


「待てっ!!!!」


「今までありがとう…、さようなら……、ワタシの…、大切な人……」


「チョット待てよーーーーーっ!!!!!!!!」


 その途端のコトだった……

 空間が変化して行き、オレは…半ば強引に……、自分の世界に引き戻されていた


 ふと、気が付いたとき…、オレは、と、ある公園に立っていた…


 何故、オレはココに居るのか…想い出せなかった

 でも…何となく…とても「大切な時間」をソコで過ごしていたような気がしていた……


 ソレが何なのかというコトまでは…わからなかったのだが……


 暫くボーッと、その公園から見渡せる景色を眺めていた、夕暮れの明かりに照らされてオレンジ色に染まる街並みが遠くまで広がるその光景は何処か懐かしく暖かいモノだったが…、やはり…、幾ら考えても…何故、自分がソコに居るのかを想い出すコトは…


 出来なかった……


 家に帰り、眠りに就く、そして新しい日を迎えオレは学校に行った


 サークルに「新しい部員」が入って来るという話だった、どんなヤツが入ってくるのかと思ったが、ただ本を読んでいるだけで周りで行われている「おしゃべりの輪」には入って来ない、フシギなヤツだった


 良くはわからなかったが…、何故か…ソイツのコトを他人とは想えない…、そんな気がしていた……


 何となく気に成ったので…ある日、ふと…、オレはただ何となく…、ひと言だけ語り掛けていた…


「本が…、スキなのか?」


            END

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