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神殿都市の見習い騎士  作者: 桜飴
私がこの物語のヒロインです
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 初めまして。フィーリと申します。

 今生の年齢はまだ六歳。この大陸で最も歴史の古い都市にて、騎士の見習いをしております。


 突然ですが、聞いてください。私、異世界転生しちゃったみたいです。


  前世の最後の事はいまいち覚えていないのですが、記憶の最後が二十代最後の誕生日ですので、おそらくその程度と思われます。

 趣味は読書。とはいえお堅い純文学は苦手で。児童書やライトノベルを好んで読み込むタイプです。

 最後は異世界転生系にハマり、書籍はもちろんネットでも探しては読み漁っていました。

 年甲斐もないと言われる事もありましたが、正直読書なんて年齢に関係なく好きな本読めばいいと思います。よぼよぼのおじいちゃんが少年漫画?おばあちゃんがティーンズ小説?結構な事じゃないですか。絶対孫に理解あるいいおじいちゃんおばあちゃんだと思います! うちの祖父母の事だし、勧めたの私ですけどね!

 流行りを追って何が悪いのか。誰にも迷惑かけてません!


 …話が反れました。

 とはいえもちろんいい大人ですので、まさかそんな事が実際あるわけがないと思いながら読んでいたわけです。書いてる側だって、そんな事があったらおもしろいとは思っていても、実際起こると思ってる人はいないとは言えないまでも少ないのでは?

 ですが、実際自分の身に起こってしまっては、信じざるを得ません。

 異世界転生は!本当にあった!!


 失礼。またちょっと取り乱したようです。




 転生に気づいた直後は、夢じゃないのか、夢であってくれと思っていました。

 だって異世界転生といったら、例えゲーム内の悪役だろうと転生先ではお嬢様暮らしができるのが常だし、たとえ平民でも前世の知識を駆使したり、転生もしくは転送の際に付与されるチート能力を授かるのがセオリー。

 翻って私と言えば、転生に気づいたのは五歳の頃。どんなショックを受けて思い出したのかと言えば、何と走馬灯。


 山間の貧しい町の孤児だった私。同じような境遇の子供達と一緒に暮らしていたのですが、その年はタチの悪い感染病が町を襲います。仲間もあっという間に減り、私自身も発症してもう死ぬんだなとぼんやりと思っていたのです。

 今生の私は親の顔も知りませんし、食べ物も石かと思うような固いパンと水があれば上等。そんな暮らしの最後、思い浮かぶのは時々神殿が炊き出ししてくれる暖かいシチュー、富裕層の邸宅を覗き込んだ際に見かけた柔らかそうなパン。

 食べ物ばかりかとお思いかもしれませんが、飢えた五歳児です。そんなもんです。


 あれを食べて見たかった。それから…と考えた時に唐突に思い浮かんだのが、前世でおそらく印象に残ったのだろうケーキ! 赤い苺を飾り、生クリームでデコレーションしたホールケーキが突如として思い浮かび、五歳の私は驚きます。

 その時まで見たことも聞いた事もない白と赤のそれが、ケーキなのだと、しかもご丁寧に2と9の形のローソクを立てたバースデーケーキだと理解したからです。


 そこからどっと押し寄せる前世の情報。前世の両親・兄弟。仕事や友人達。そして読み漁った本の数々!

 餓死寸前の子供の未熟な脳で処理するには情報が多すぎ、パニックを起こした私はあらん限りの声で叫びました。叫んだと言っても弱った体ではそう大した音量にもならず、ただ出来損ないの笛のように高く細い音でしかありませんでしたが、たまたま病の調査に来ていた神殿の一行がそれに気付いてくれて、私は助かったのです。




 故郷の街は九割が死に絶えるという凄惨な結果でしたので、神殿からの調査団により、私と他に生き残った人達はこの町へと運ばれ、私たち孤児は神殿の孤児院へ預けられました。


 足長おじさんしかり、赤毛のアンしかり。孤児院というところは全く子どもにとって優しくない環境というのが通説ですが、この都市はこの世界に広く信仰されている宗教の総本山。前世だとバチカン市国みたいな位置づけと考えて貰えるとわかりやすいかもしれません。

 そんな神殿の威光を示す一環として経営されている孤児院ですので、飾り気や豪華さは全くありませんが、小綺麗で清潔。世話をしてくださる職員さんや神官様は皆さまとても親切です。


 ここでなら何の不安もなく暮らせる。きっと本当はそうなんでしょう。でも、私はこの世界の事を全く知りません。せめて読んだ小説の中だったら、知識もありますしやり易かったと思います。

 けれど孤児として生まれた挙句、何もわからない世界に放り込まれ。恥ずかしながら本は読めど、自分の能力になりえるかと言われると怪しいのもあり、余計心細かったのです。


 いっそ転生に気づかなければ、私は五歳児(フィーリ)として保護された生活に安堵し、平穏に生きていけたでしょう。

 けれど二十九歳だった『私』は見通せない将来に恐怖し、ちっとも安心してくれないのです。


 夜になり、ベッドに入る度に何もわからないまま、また一日が過ぎてしまったと不安に襲われる毎日。

 そんな日々が過ぎていくうちに、ふと思い当たったのです。


 この凄惨な状況から救い上げられた皆の同情を集める境遇。これは、物語のヒロインによくある設定なのではと――!


 こう思ったのには当然理由があります。

 転生前は地味でモテないいわゆる喪女でしたが、今生の私は結構可愛い! 絶世の美女とは言えないかもしれませんが、オレンジに輝く瞳に深緑の髪。鼻や口も大きすぎず、目は大きなパッチリ二重。顔の造作は決して悪くありません。

 最低限はしていましたが、化粧なんて他所の世界の言葉よね☆という生活だった前世ではUVケアなんてしてませんでしたし、転生直前頃には浮き出すそばかすにげんなりしたものです。この世界ではまだ五歳、きちんとケアすればもち肌をキープできるはず!


 基本的に粗食な世界ですが、子供にはきちんと食べさせるべしという神殿の方針もあり、栄養バランスはばっちり。太りすぎも痩せすぎも心配いりません。


 そして何より、これが決定的なモノ。


 私は、この世界のヒーローに出会ってしまったのです。

ずっと書いたまま置いておいた物が半年経過したので思い切って。

後一話分載せます。題名が良いのが思い浮かばななかったので、今後変えるかも。

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